01 出発
元々、双子の妹の私は兄に良く似ていた。成長するにつれ、外見が特に似通ったものになってしまったのはいうまでもない。私はプラチナブロンドの長髪、兄は短髪。声は私のほうが少し高いくらいで、兄は男性にしては声はあまり低くない。それ故、ローブを羽織っていると間違われることもしばしば。兄は村で一番剣の腕があり、魔法にも優れており、言わずもがな自然な流れで勇者に選ばれた。村で一番だと思っていたが、本当は国で一番ともいえる逸材だったらしい。白く透き通ったすべすべな肌も高く通った鼻筋も薄く引き結んだ唇も、飾らない態度も、物腰が柔らかいところも、女性にはウケたらしい。勇者様は実は異国の王子で~(あとは想像に任せます)などという物語の本が飛ぶように売れたと近頃聞いた。だから私は甘く見ていたのかもしれない。プラチナブロンドの髪、兄と同じくらいの長身、よく似た顔も、真似する仕草や態度も、男にとってはどう見えるか……とね。
「勇者様、この度は魔王討伐に名乗りを挙げて頂き誠に感謝してもし尽くせません!」
ビシィッ!と効果音が鳴る様な敬礼を決めて、騎士さんは言う。
いいのか、騎士。村人にそんな軽々しく敬礼して……まあ、私勇者だけど。
「準備ができ次第、勇者様を城へとお連れ致します」
深々と頭を下げて礼をされても、普段そんなことを身の回りでする人物などいないので対応に……困る。
「お気遣い、有難うございます。しかし、もうすでに準備は整っております。出発してもらっても?」
兄の助言を思い出し、困ったときは笑っておけばいい。無理にでも微笑めばいい。きっとそれでなんとかなるというなんとも無茶なセリフを鵜呑みにして私はありったけの表情筋を駆使して微笑む。
「はっ、はい!!」
騎士さんは快く出発を受け入れてくれた。