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00 始まりの時

 勇者とは、物凄く私的なイメージを申し上げますと、魔王を討伐することを目的とした国民の中の選ばれし者の中のリーダー。剣や魔法にそこそこ秀でていて、尚且つパーティをまとめることのできる人材。中心的人物のことであると、思っている。魔王を討伐する際に姫様やらパーティの仲間だとかと色恋沙汰に発展するらしいが……正直な話をいうと、


「どうでもいいよねぇ……」 


 心底憂鬱な気分だ。どうでもいい。恋愛? そんなものに興味はない。昔から顔の似ている兄に散々からかわれて、挙句の果てには男にしか見えないよ!と初恋の相手にも言われたのだから。諦めはついているし、いい加減現実をみなさいと言われている気がする。だから、この役目が終わったら、私は一人でも生きていけるように(両親には悪いけれど)、手に職をつけようと思っている。具体的なことは未計画だけどね。


「勇者様はおられるか!」

「はい」


 扉を豪快にノックする音、入ってくるのはこの国の騎士。

 短く切り上げた髪を耳に掛けながら、最上級の笑顔で答える。もう逃げられない。今日から私は勇者(男)なのだから。

 

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