⑤ーバトル開始
そしてその宣言は生徒たちの動揺を生んだ。そりゃそうだろ、いきなり闘えとか言われたら、誰でも動揺するだろう。でもなんで闘わなくちゃいけないんだ?
そう俺が思った時、1人の女子が立ち上がった。
「…すみません、校長。質問よろしいですか?」
「何かね」
「さっき校長が仰った言葉はどういう事でしょうか?」
「どういう事、とは」
「…『君たちには闘ってもらう』、という言葉。それはどういう意味でしょうか?」
彼女はそう言った。しかし校長は全く表情を変えずに、言った。
「そのままの意味だよ。私は君たちにバスターとしての素質がある、と言った。しかし私は実際に君たちの能力を見てはいないのだ。だから君たちには私に己が能力を見せて欲しいのだよ」
そして校長は続けざまに言った。
「これはこの学園に入るための試験だと思ってくれていい。この闘いに勝利した生徒にはこの学園への入学を認めよう」
そう校長は言った。闘って勝ったら入学を認めるなんて、どう考えてもおかしいだろ。俺がそう思っていると、
「では二年、三年生の生徒は上に移動してください。」
教頭がマイクで生徒にそう言うと、二、三年生は体育館の二階に移動していった。この体育館はどうやら二階建てらしく、そこには保護者などが座る観覧席などがある。
「では、始めてくれ」
そう言うと校長は教壇から降り、体育館を出て行った。校長の話では、誰かと闘って勝ったら入学していいということだ。しかしそうは言っても、誰も好きこのんで闘いたくはないだろう。
「…なんか変なことになってきたな」
「そうだね、でもこのたたかいに勝たないと学園にかよえないんだよね?」
「…そうなんだよな」
「…じゃあたたかわないと」
アイサはそう強く言った。しかし彼女のゆるゆるな喋り方のせいで全然強く聞こえてこない。
「どうする?」「闘うしかねえだろ」「でも闘いなんて……」「じゃあどうするんだよ‼︎」
まだ動揺している奴もいるみたいだが、闘うしかないと思い始めている者も出てきているようだ。
「…マサくんは、たたかわないの?」
「そうだなあ、俺は…」
とその時だった。突然屋上の屋根が開き始めたのだ。
「…なんだ?」
見ると、何かが上空で飛んでいた。鳥かと思ったが、どうも違うようだ。それは、半分ほど開いた屋根の上空から急降下して中に入ってきた。地鳴りと共に押し寄せてきた砂ぼこりで視界が奪われる。
「…なんだ⁉︎」「一体何が…」「怖いよ…」
他の奴らは突然の事で動揺を隠せないようだ。
徐々に砂ぼこりが晴れてきたその時、誰かが悲鳴を上げた。
「キャアアァァ‼︎‼︎」
その悲鳴がする方を見ると、そこには羽の生えた黒い生物がいた。大きさは俺たちとそんなに変わらない。まるでナイフのような牙が並んだ耳まで裂けた口。頭には角が生えていて、その目はまるで鮮血のような紅色をしていた。
「ド、ドラゴンだ‼︎‼︎」
誰かがそう叫んだ。
ドラゴンとは、この世界中に存在する生物である。しかもそいつらは人間に害をもたらす生物でもあるので、それをセイバーたちは倒している。なぜならセイバーたちはそのドラゴンを倒せる能力を持っているからだ。
「…そういうことか」
校長は闘いの相手が生徒であるとは言っていなかった。ということは、相手は生徒ではないということでもある。しかしそうだったとしても、ドラゴンである必要があるのだろうか。
「…マサくん、どうしよう…」
「やるしか、ねえだろうな」
そう俺は答え、手に力を集中する。
「来い!ムラマサ‼︎」
そう言うと、俺の手から黒い何かが現れ、それが銃剣の形になった。全体が黒くその先端に着いている刃にはまるで血管のように白い模様が描かれていた。
「…それがマサくんの『竜剣』…」
アイサはそう言った。
竜剣とはバスターたちが自分の能力を剣として具現化したもののことだ。しかし普通は銃の形になんかならない。俺は他の奴とは別格なのだ。
俺が竜剣を出すと他の奴らも自分たちの竜剣を出していった。もちろん、アイサも。
そして俺は自分の竜剣を目の前のドラゴンたちに向けた。