version3 姉による講義。
「で、不安になって私に教えを請うてきた。と。」
「そうなんだ。まずくないか?」
帰宅してきた姉に早速浮上した『俺、日本の高校生としてやって行けないんじゃないか事件』のそこにいたるまでの一部始終を話し、アドバイス(という名の命令)を待った。
「・・・私も侮られたものね。」
「え?」
姉から出てきたのは想像しなかった言葉だった。
「天、常用漢字って知ってるわよね。」
「ああ。平成22年に改訂された常用漢字表に載っている日常漢字使用の目安にする2136字の総称だろう?」
「うん。そうよ。」
「それが?」
「その常用漢字についてはあなた完璧よ。私が向こうにいる間にしっかり覚えさせたもの。自覚ないでしょうけど。」
「そう・・・か?」
「だから大体の熟語は読めるはずよ。気をつけるのは『特殊な読みの漢字。』『訓読み』まあその辺ね。」
「・・・」
俺が『なんだそりゃ』と思ったのが伝わったのか、姉は例題を出してきた。
「そうね、例えば『若い』なんて読む?」
「年がワカイだろ?」
「そう。じゃあこれは?『若しくは』」
「ワカしくは?」
「違う。これで『モしくは』と読むの。」
「それってあの接続の役割をする『モシクハ』なのか?」
「そうよ。もともと『若』には『わかい』という意味と『もしくは』という意味があったとされているの。それが近年使われなくなったのね。いつの間にか『わかい』という意味だけで使われるようになっちゃったのよ。」
「なるほど。意味は無くなったが、訓読みとして残っているってことか。」
「そうよ。でもね、こういうのは日本人でも知らない人は多いのよ。まあ、あなたに『知らなくていい』なんて言うつもりはないわ。『焦らなくていい』と言いたかったの。教科書をみてビビった気持ち、分からなくもないけど勉強して行けば天なら直ぐに習得出来るわ。」
「そうか・・国語の先生が担任になったんだ。相談してみる。」
「ああ、三谷 春子ね。やっぱり国語は国語の先生に教わった方がいいわ。」
「なんで・・」
知ってるんだ?と聞こうとしてやめた。いろいろと手続きをしたのは姉なのだ。面識があってもおかしくない。
「当然でしょ?私を誰だと思ってるの?あなたの学校の先生なんてほくろの数までリサーチ済みよ。」
予想の斜め上を行った!!っていうか疑問丸見えだった!?なに?ほくろのかず?冗談なのか?冗談だよね、姉よ。・・・いや姉ならやりかねない・・・俺に教師のほくろの数を知ってどうしろと!?
「はい。ご飯できたわよー。」
スルーね。俺の今の悶々とした状態は無視なんですね!?・・・しかしずっと悶々としているわけにもいかないし俺も慣れていると言えば慣れている。復活して食卓につき、食事を終え、デザートを食べ始めたタイミングを狙って本来主題と成るはずだったことについてきりだした。
「ひな。」
「何?」
一つ言っておくと姉を『ひな』と呼ぶのは姉の指示だ。
「もうひとつ、部活のことなんだけど。」
「ああ、見学してきた?」
「まあね。バスケ部とテニス部を見てきたんだけど・・・」
「面白かったでしょ!バスケ部。」
「え?」
「あんなに面白い部はなかなか無いわよー。」
「見たの?」
「当然。で、どっちか悩んでるってわけね。天は?どっちやりたいの?」
「・・うーん。やりたいというかテニス界からはしばらく遠ざかりたいと思ってるんだけど・・」
「さすが我が弟。まっ、私のおかげかしら?大事な判断は間違えないわねー。」
・・・どうやら俺はまた姉の思い通りの選択をしたらしい。
こんにちは!神田です。
部活に入ろう。が当初の予定より長引いております。
申し訳ないです・・次話完結予定です!はい・・・また予定です・・
それからお気に入り登録をして下さった皆様。ありがとうございます!
今後ともよろしくお願いします。