version2 初寄り道と苦悩。
午後、部活見学をしただけの俺たちは、帰宅するにはもったいないと言い出した誠の提案でファーストフード店で昼食をとってから帰る事にした。
「心なしか嬉しそうに見えるんだけど?」
俺はもうすっかり誠を信用していて誠の前では少し表情を出す事にしていた。
「そうだな。実は友達と学校帰りに寄り道するなんて初めてなんだ。」
「マジ?」
「ああ。」
ハンバーガーのセットを頼んで窓側の二人席を確保した。
「今時寄り道した事無い高校生って・・・」
「悪かったな。」
フランスでもイギリスでも食べたければ放課後にデリバリーを呼んだんだよ。自ら店に出向くような友人達はいなかったんだ。(俺は出向いたよ。そりゃ。)
「・・・友達いなかったとか?」
「いたよ。失礼な。」
なんだか誤解を受けたぞ・・・
「悪い、悪い。へー、でも初寄り道の相手が俺とかウケるわ。」
「なんでだ。」
誠とは話も弾みしばらく話した後、俺は気になっていた事を訪ねた。
「誠、今日はテニス部、バスケ部の見学に付き合わせてしまう形になったが、誠がやりたいことは無いのか?」
「うーん。俺は何でもいいんだよね、正直。で、転入生のお前と同じ部に入れば一人途中入部で気まずい事も無いかな?とお前を利用してみようと思ったわけ。」
「なるほど。確かに。」
「で?テニスとバスケで絞ってあるみたいだけどどうするの?向こうでは何をやってたの?」
「テニスをやってたんだが、行くとこまで行ったからな・・・もうテニスに執着はないんだが・・・」
「なんだよ・・・行くとこまで行ったって・・・」
「もともとただの趣味だったのに一線を超えてしまってね、プロとかには成るつもり無いからテニスから身を引こうかとは思ってるんだ・・・」
これは事実だ。あの大会で優勝してからうっかりプロに成らされるところだったのでちょっと遠ざかりたいのだ。
「・・・お前怖いな・・・」
「そう?」
「じゃあバスケか?」
「・・あ・・・ああ・・・そうだな、『あたり』にも興味が有るしな・・・家で相談する。」
あのバスケ部について意見をもらわない事には少し不安だ。
「親に?偉いな、」
「・・・まあ保護者に相談しないとな。」
・・ここで『姉に』とは言えなかった。
その後も少し話をして電車に乗り、途中で分かれた。
登校初日は有意義な一日だった。誠と言う友人が出来た事は最も大きな収穫だ。
姉と二人で住むには少々広く、部屋数の多い新居に帰り、少し教科書を見てみた。・・・目が・・・チカチカする。
漢字がいっぱいじゃないかっ!!!!
・・・これはまずいな・・・数学は大丈夫だ。というか、もう習った所がほとんどで、なんとかなる。それ以外は・・・
確かに俺は姉に仕込まれたおかげで一通りの事が出来る。が・・・高校二年生の日本語力には着いて行けないぞ・・・
『忖度』『白濁』『愚鈍』・・・なんだ・・・これは・・・
・・・見なかった事にしよう!・・・いや、無理だ、さすがにまずい。
一人で自問自答していると知らない間に思いのほか時間が経っていて玄関が開く音がした。
「ただいまー!」
・・・救い主(姉)が現れた!
こんにちは!神田です。
天君、ちょっと不安になってますね。
ご安心ください。次回でひなちゃんがあっさり解決する・・・予定です。
今後とも叱咤激励よろしくお願いいたします。