あいつもこいつもドイツ人
帝生誕式典当日。
会場内は和やかながらも厳かに、琴の音色が雅やかに流れる中、風流に和歌が詠み交わされ……
て、いる訳ではなかった。
「皆ーノッてるかーい!?」
「イェ──────イッ!!!!!」
「Hey!」
「ヘイ!」
「Hey!」
「ヘイ!」
「Hey!」
「ヘイ!」
「Hey!」
「ヘイ!」
「「He──────y!」」
♪あいつもこいつもドイツ人ー
おいらーをー
狙っているんだよー♪
若干の間違った歌詞に乗せて、平安天国(改訂版)がノリノリで流れる。
いいね、あいつらわかってんね!
掴んでる!
アイドルが何たるかを掴んでるよ!
只今、出し物真っ最中。
平安天国を歌うは、我が数学塾に通うボンクラ共のオヤジ達。
(こまちに感化された)
あーおっかしー。
こいつらマジ、ノータリンでしょ。
そんなことを思ってげらげら大爆笑してれば、いつの間にきたのか、ミッチェルが隣で鼻息を荒くしていた。
「流石ですね、師匠!」
「そーお?」
「はいっ、こんなに盛り上がった生誕式典は初めてですよ!」
そりゃまあね、平安だしね。
まさか、懐かしアイドルソングでうちわ片手に盛り上がるとは、誰も思わんわな。
どうでもいいけど、この空気で誰かしら帝を祝ったりしてんの?
……絶対ないだろ。
「で、帝とやらは?」
「はいっ、あそこに!」
ミッチェルが指差した先。
「イェ───────!大臣サイコー!!!!!」
最前列で踊り狂うノリノリな帝と、
「あああああっ、帝、そのような真似はおやめください!」
縋るように泣きながら頼み込む、けど、頭には『LOVE★偶像』と書かれたはちまきをほぼ強制的に巻かされた紫が、そこにはいた。
「『乱れゆく この世を憂いて バカを見る』」
「おおっ、和歌ですか師匠!」
「うーん……標語?」
「標語かあ!やっぱり師匠は一味違いますね!」
バカを見てんのはお前もな。
そうは口にしなかった。