其の漆、源氏雌鳥
♪♪♪〜♪〜
「はい、ストーップ!そこ、リンダ!テノール外れてるから気をつけて!」
「ソーリー、ミス・こまち!」
今日の数学塾、
皆でゲンジってます。
何か、帝の誕生会あるとかで?
あたし、知らないうちに出し物 (?)担当になってたらしいから?
我が数学塾生プレゼンツ、ゲンジメドレーをプレゼントフォー帝!
みーたーいーなー!
いいじゃん、いいじゃん、時代があたしに追いついてきたってか!
いや、まだ流石にそれはないか。
そうは言ったってあたし、平成人だもんね。
ソロで少女AだのBだのを振りつきでもよかったんだけど、せっかくだから、紫に敬意を表して的な?
(もう意味不明)
「ミッチェル!頼んどいたローラースケートはまだ?」
ミッチェルの知り合いに、自称発明家がいるらしい。
だから、ローラースケートをイラストに描いて、彼に頼んでみた。
たぶん木製だろうけど、この時代にローラースケートなんて作ろうものなら、設計図 (イラストだけど)があったとしたって、その手腕は確かなものだと思う。
ぜひに、がんばっていただきたい。
「はい、どうやら『ろーらー』部分の制作が難航してるらしくて」
「ふーん……。三日以内に仕上げるよう伝えといて。でないと……」
「鼻フックですか!?」
ざわっ。
鼻フックにざわめく一同。
(彼等にはかなり衝撃だったらしい)
「プラスで千年殺し (※ナ◯ト参照)もやるっつっといて」
「せ、千年殺し!?」
本気出せ、自称発明家!
天才は99%の努力と1%の才能とは彼の偉人の言葉だが、今そんな振り分けはいらない。
100%出してけ!
出せなかったら、あたしが100%千年殺しで迎えてやろう。
迎撃されたうえトイレに駆け込むだなんて、後にも先にも、なかなかいないはず。
どっちに転んでも、自称発明家の彼は、歴史にその名を記すかもしれない。
どうだろう……どっちでもいいけど。
それにしても、ニューな技の登場に、またもざわめく貴族ご子息ご一行。
お前ら本当に貴族か。
大丈夫なの?
そんなんでこれから、右だの左だのな立場を争う渦中に飛び込めるの?
「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」とか、多少嘘でも見栄でも詠えるだけの度胸と根性見せてみろ!
いや、この歌は本気度100%なぶん、だいぶイタいけどね!
精神が脆弱過ぎる彼等に、少しだけ、平安京の未来を憂いた。
(余計なお世話)
「ほらほら、練習やるよ!そこ、カーくん役のあんた!フォーメーション崩さないで!」
ぱんぱんっと手を叩いて、あたしはまた、練習に熱意を注いだ。
「ああ、こまち殿は今度は何を……」
「どうやら、帝の誕生会で出し物をやるそうですよ」
「出し物!?わたくしは聞いていませんよ!?」
「はあ……なんでも紫様に敬意を表して、『ゲンジメドレー』とかをおやりになるそうで……」
「源氏雌鳥!!???」
「いえ、『ゲンジメドレー』です、紫様」
「源氏雌鳥……わたくし、不安です……」
紫がお付きの者とそんな会話をしながら、不安げに見ていたこと何ぞ、あたしはもちろん、全くもって、知ったこっちゃなかった。
「ああ……不安ですわ……」
「……そういえば、紫って確か (歴史上では)あの『望月(この世)まるごと俺のもんだぜ!』っつう人と知り合いなんだよね?実はすごい?」
とにもかくにも、帝の誕生会まで、後一週間。