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其の参、嫌ですよ、僕はミッチェルです。

ここはやたらと小綺麗な一室。

明らかに二十畳以上はあろうかという広々としたそこは、本日もハイテンションだった。


スパ─────ンッ!


勢いよく襖は開け放たれた!



「グッモーニン、磨呂ども!」

「グッモーニン、ミス・こまち!」



ハーイ、皆、元気?

あたし、ミス・こまち!

うっかりうかうか平安京とかいうふざけたところに来ちゃったみたいだから、うっかり数学者になってみたんだZE★

Hey, YO!


そんなわけで、あたしの数学塾、大好評!

バカな磨呂どものおかげでか、がっぽり儲かってます。


ほんっと、こいつらってバッカでやんの。


紫の屋敷内に (無理矢理)作らせた小さな (決して小さくはない)塾は、毎日毎日、満員御礼。

あたしが言うのも何だけど、あんたら、何を学びに来てんの?



「じゃ、今日はー宇宙について教えてやっから!耳の穴かっぽじって、よーく聞くんだZE★」

「オーケー、トニー!」



バカみたいに、あたしが教えた通りに返事する磨呂ども。


マジ、バッカでー。



「ハイ、師匠!」

「ハイ、ミッチェル。どうした」



なんちゃらのなんちゃら磨呂とか、皆、名前が長ったらしいこの世界。

だから、あたしが適当に付けてやった。

やっぱりほら、いざハリウッド進出ってなったとき、まんま和名だと配役に問題あるじゃない。

ジャパニーズ役は何故だかあっちだとチャイニーズが演じてたりするし。

それだけきちんと演技の出来る日本人がいないってことなんだろうけど。


その点、最初から横文字のアメリカンネームなら無問題!


もちろん、逆らう奴には鼻フック決めて泣かしてやったけど。

(暴挙)


弱いな、平安貴族ご子息一行。


手を挙げたミッチェルを指すと、ハイッと元気よく立ち上がる平安貴族ご子息のミッチェル。

平安貴族でミッチェル……やっぱり無理あるか。



「うちゅうがわかりません、師匠!」



遠い目で思考逸れまくったあたしに、彼はそう投げ掛けた、

そうきたか。


あたしにだってよくわかんないっつの。

ただし、あんた達より知識はある!

あたしはゆとり前世代だ。

小、中学校と毎週土曜日まで、がっつりしっかり学校通ってたんだZE!

(≠賢い)



「宇宙ってのはー漢字でこう!『宇宙』!この世界は丸いの、丸、円!いーい?世界の果てまで行ったら落ちるとか、紀元前の奴が言うことよ!」

「きげんぜん?」



スルーだスルー。


ちゃちゃっと半紙に書いた地球 (只、丸を書いただけ)を皆に見えるように、高々と掲げる。


おおー……と上がった歓声に、思わず笑いそうだけど。



「でー、うちらのいる世界は『地球』っつー星!星=惑星!惑星は『宇宙』にあるんだ!」



半紙に筆で、ざざっと書き足していけば、びちゃびちゃと墨が飛び散った。


あーあー。

ま、いっか。

後で紫に掃除させよう。


半紙を回してやれば、興味津々な磨呂どもがそれに群がる。


そして。



「今日の格言!『水金地火木土天海冥』!」

「『すいきんちかもくどってんかいめい』!(磨呂リピート)」



……あれ、今って冥王星は、もう銀河系範囲外なんだっけ?

まあ、平安京だからまだインか。

アウトじゃないよね!



「おっし!今日はおしまい!シーユー磨呂ども!」

「シーユーアゲーン、ミス・こまち!」



すぱーんっと襖を開ければ、そこには、紫が泣き崩れていた。



「何やってんの、紫」

「……お願いですから、公達きんだちを集めておかしな講習会はおやめください、こまち殿……!」



またも泣き崩れた紫をほったらかしたまま、あたしは鼻歌混じりに、颯爽とその場を後にした。


やべえ、平安京なかなか楽しいところだよ、お母さん!



「あ、紫殿」

「あ、これはこれは坂田殿のご子息殿で……ひいいいいっ!?顔に、顔に墨が!」

「嫌ですよ、僕はミッチェルです、紫殿」

「ミッチェル!?ミッチェルって何のことでしょうか!?こまち殿、こまち殿ー!?」



紫の叫びは、あたしには届かなかった。


確実にあたし、下僕(バカな犬)の数を増やしつつあります。


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