其の弐、数学者になっから。
さて。
只今あたし、紫んちでご厄介中。
(くつろぎまくり)
暇。
超暇。
何だよここ、てかこの時代。
洒落っ気づいて和歌とか読んでんじゃねえよ、和歌とかさあ。
テレビなし、携帯なし、スマフォもなし、ゲームもなければトイレはぼっとんどころの騒ぎでもない。
「う───────ん……」
あたしは考えていた。
どうやって現代に帰還するか。
──ではなく、どうやって現代文明を持ち込んでやるか。
ここをひたすら考えていて、そして、
飽きた。
めんどくさいから、適当に文明持ち込んでやって、適当におちょくっちゃろ。
そう、心に固く誓いを立てた。
(適当で厄介)
だってさあ……どうやって来たのかわかんないわけよ。
取り敢えず布団から何度か転がり出てはみたものの、やっぱり帰らないわけよ。
ベッドじゃないから?
いや、ビールがないからか!?
ビールがないって痛いよね─────っ!
煙草は煙管で代用してます★
大体が、帰還出来る奴は最初っから来ないっつうの。
来たってすぐ帰れるんだから、長居なんてしないはず。
偉人は偉人であるが故、偉人向けイベントが発生するわけであって、凡人に発生するイベントってのは、イベントではなくハプニングだ。
そう、珍事!
そんなこんなで出来る限りの一人再現VTR的努力はした上で、合理的に脳内会議で議論した結果、そうなったわけであります隊長!
うっかりな珍事がまたもや発生して気紛れ (誰の?)に帰還出来た暁には、ハリウッドに脚本を持って突撃しようと思ってます隊長!
「何はともあれ、現地で出来る行動を取れ!」
「イエッサー!」
以上、脳内会議これにて本当に終了!
スパ─────ッン!
「紫!」
「ひゃああああっ!?こまち殿!?」
トイレ (廁?)に入ってた紫が思いっきりしゃがんでたけど、お付きの奴が着物の裾を持ったまま目ん玉ひん剥いてたけど、そんなんはどうでもよかった。
「あたし、今日から数学者になっから」
「す、すうがく……?」
数学もわからんのか。
は─────……どうしょもねえな、平安京。
ぽかーんと馬を鹿と言っちゃった人みたいに口を開けたままの紫とお付きをそのままに、あたしは颯爽とその場を後にした。
トイレのドア (襖?)は、開けたままで。
「紫さ……ひいいいいっ!」
「ひゃああああっ、ま、まだ途中ですよ!」
「も、申し訳ございませぬ!」
バックが騒がしかったけど、どうでもよかったので振り向かなかった。
数学者ねー。
我ながらあったまいーい。
歴史に名が残ったらどうしよう!
あたし、超すごくない!?
この時代に数学って、その発想がマジパねえ!
「ににんがしー、にさんがろくってか」
九九 (二の段)を歌いながら、あたしの足取りはどこまでも軽かった。
どうでもいいけど、平安京あっちーな。
何なの、盆地だからとか?
別名 / 紫式部おちょくり日記。