突撃!隣の晩ご飯的な。
落ち着きがあって、ついでに趣もあるだろうだだっ広い庭園。
そこを囲うように敷かれた長い長い廊下。
行き交う侍女達のくすくすと耳を擦る笑い声。
と、しゃっしゃっと廊下を擦る着物の裾の音。
……布、悪くなるよ。
…
……
……つっっっっっまんねえ─────!
何ここ、何よここ!?
こんなとこに帝ってのは住んでんの!?
マジで!?
マージつまんねえとこに住んでんなおい!
てかさ、帝の部屋に着くまでどんだけ掛かんのさ。
悠に十分は歩かされてんだけど。
しかも禁煙かよ。
来なきゃよかった。
(そこが大事)
「ねー黒子、まだー?」
「おや、こまち殿のお気に召しませんでしたか?」
どこら辺があたくしのお気に召しますかね。
こんなに出入口から遠かったら、うっかり醤油買い忘れたときとかどうすんの。
また行くのとか、超めんどいじゃん。
(帝がどんなもんかよく理解してない)
帝生誕式典と銘打ったただのゲンジライブの後日。
黒子に気に入られたらしいあたしは、突撃☆帝のご自宅訪問を敢行していた。
もちろん紫は発狂に近いくらいに猛反対したから、侍女を買収して、薬で眠らせてきたけど。
(暴挙)
たかが帝でしょー?
どうせ、政治仕切ってんのは、右だか左だかの大臣とかなんでしょー?
あ、もち牛の車は辞退しましたさ。
あんなん乗れねっつの。
「こんなとこ楽しいかねー?」
菓子職人に (無理矢理) 作らせた金平糖を貪りながら黒子に聞けば、お上品に、くすくすと笑われた。
お前は女か。
「楽しいかと聞かれたなら、難しいかもしれないですね」
「だーしょー?」
「だからこそ、帝はあなたをお呼びになったんだと思いますよ」
「はあ……」
もう帰って、ミッチェルで遊びたいんだけども。
ぼりんぼりんと金平糖を食いつつ、ようやく辿り着いたらしい帝の部屋。
「……やべ、超気が合うかもしんない」
「それはよかったです」
簾子の掛かったそこには、
『ウェルカム!ミス☆こまち』
と、きったない字で書かれた垂れ幕が、堂々と下げられていた。
くす玉と一緒に。
「ではこれを」
手渡されたのは三角帽子。
先っぽに、ご丁寧にふさふさまで付いてる。
「……誰の差し金?」
「りさあちってやつです。坂田のご子息殿……ああ、ミッチェル殿でしたか。あの方にご協力いただきまして」
ミッチェル、立身出世を計ったな。
薄汚い政治の裏側を垣間見た気がした。
渡された三角帽子をかぶって、くす玉を引っ張ってみたなら、ぽんっと軽い音がして
「ジャ、ジャ────ン!」
「おおおおおっ!」
何とびっくり、
忍者が出てきた。
ごめん、紫。
しばらく帰んないかも。