僕を嫌いな君の為
***BL*** 中学生になってから、距離を置かれてしまった僕。 ハッピーエンド
いつから君は僕を嫌いになったのかな?
小さな頃から仲が良かった。
いつも一緒に遊んで、一緒に過ごした。
それなのに、君はいつの間にか僕から離れていった。僕、知らない間に嫌われる様な事したのかな、、、。
**********
俺はアイツを好きだと自覚した途端、アイツの側に行けなくなった。
アイツの横に立つと、空気と一緒に俺の好きが流れて行きそうで怖かった。
中学生になったタイミングで、距離を置く様にした。クラスが違った事を幸いに、さっさと委員会を決め、部活を決めた。
アイツは運動が苦手だったから、体育委員になり、陸上部に入った。
新しい友達は、みんな同じ陸上部。
朝はギリギリに登校して、放課後は隣の中学に部活に行く。陸上部は、隣の学校と合同練習なんだ。
俺はいつも機嫌が悪かった。大好きな望の側に行くのを止めたから、イライラしてばかりいた。
本当はアイツの側に行きたい。
アイツの一番でいたい。
誰にも、アイツに触らせたく無い。
でも、この感情が伝わるのが怖かった。
*****
放課後、望が俺の教室に来ていた。
後ろのドアから誰かを探している。
俺は気付かないフリをした。そして、アイツから見えない様に、友達の影に隠れた。
暫くして、ドアの方を見る。
望はいなかった。
ホッとしたクセに、「誰かに呼んで貰えば良いのに」と考えてしまう。
*****
「優弥」
「あ?」
振り向いた。
俺の不機嫌そうな声に、望はオドオドしている。
「今、大丈夫?」
「悪い、部活」
「、、、そっか、、、ごめん。また声掛けるよ」
淋しそうに笑う。
こんな時、自分で自分がイヤになる。
本当は、望を傷付けたくないのに、、、。
**********
やっと優弥を見つけて話し掛けたのに、不機嫌でタイミングも悪くてダメだった。
中学生になってから、全然優弥と遊べない。
避けられてるのかな?って思う時もあるし、新しい友達と過ごすのが楽しいんだろうなって考える時もある。
でも、それにしても会えない事が多すぎる、、、。
**********
放課後、望の教室の前を通った。
一番後ろに、大きな座席表が貼り出してある。
入学式の日から貼ってあるそれは、各クラス共通で、多分先生達や生徒同士名前と顔を一致させる為だと思う。
席替えも、期末テストが終わるまでやらないらしいから、当分このままだ。
望の席は、真ん中の真ん中だった。
座席を確認してから、俺は望の教室の前を通る度に、アイツを探すようになった。
大抵望は寝ているか、本を読んでいる。
だから、俺が毎回見ている事を知らない。
**********
クラスの誰かが話していた。
二組の吉沢優弥と中田はるみが付き合っている。
胸がザワザワした。
え?、、、知らない、、、。
優弥に彼女?
僕は、自分の席に座ったまま、動く事が出来なくなった、、、。
いつ?、、、いつから付き合ってるの?
彼女が出来たから、僕と遊んでくれなくなったのかな?
何て考えながら、歩いていたら廊下で優弥と可愛い女の子が話しをしていた。
気が付いた瞬間、優弥と目が合った。僕は思わず、来た道を戻ってしまった。
*****
優弥とは、会う事も話す事も無くなった。
*****
校外学習の林間学校。
バスで移動して、夕飯はみんなでカレーを作る。男女混合の班で、班ごとにカレーを作るんだけど、やっぱり女子の方がテキパキしていて、やる事が早い。
僕は同じ班の男子と、ただ見ているだけだった。
「やだぁー!」
と、一際大きな女の子の声がして、みんなで振り向くと、優弥と女の子が仲良くしていた。
僕はため息を吐いて、背を向けた。
カレーは普通に美味しかった。ちょっと水っぽかったけど、全然気にならなかったし、ずっと隣にいる野坂くんと
「美味しい、美味しい」
と食べた。
同じ班の女子達に
「男子は洗い物位やってね」
と言われて、野坂くんと洗い場に行く。
優弥だ、、、。
洗い場で、彼女と一緒だった。
僕は、下を向く。
「此処で良いか」
と野坂くんに言われて、僕は洗い物を流しに置いた。
向かいの洗い場で、優弥と彼女は仲良く洗い物をしている。
彼女がバカみたいに笑いながら、優弥を叩いた。
「痛ぇ〜」
「もー!巫山戯ないで、ちゃんとやってよ」
と嬉しそうな彼女の声。
隣で洗い物をしていた野坂くんが小さな声で
「仲が良いねぇ、、、」
と呆れた様に言った。
**********
後から来た望は、洗い物を終えてサッサと班に戻った。
ちょっと前までは、俺の方に視線を投げて来たのに、今日は何も感じない。
洗い場でも頭を下に向け、話し声も聞こえない。
小学生の頃はもっと活発で、遠くから俺を見かけると
「優弥ーっ!」
って叫んでくれたのに、今ではこちらも見ない。
まぁ、、、俺から避けたのに、淋しいなんておかしいんだけど、、、。
林間学校に行く前に、中田から告白された。
告白されて悪い気はしなかった。顔は可愛いし、気が強いけど、明るかった。
好きとかそう言う気持ちは無い。だって、望が好きだから。
彼女の明るさが無ければ、俺達はすぐ別れたと思う。
**********
林間学校で野坂くんと同じ班になってから、何と無く一緒にいる様になった。
野坂くんも僕とタイプが似ていて、身体を動かすよりも本を読んでいる方が楽しいらしい。
二人で帰えろうと下駄箱で靴を履き替えていたら、優弥が階段を降りて来た。
僕はちょっと見えた足の感じで優弥だと分かったんだ。
見てはいけない、、、。
視線を戻して、気付かないフリをする。
優弥の声が聞こえる。
胸がギュッとなる。
「宅間?大丈夫?」
「え?」
「気分悪い?」
野坂くんを見ると、丁度後ろを優弥が通り、ほんの数秒目が合った。
だけど、彼は直ぐに友達の方を向いて
「そう言えば俺の彼女!」
と話し始めた。
「大丈夫だよ」
と野坂くんに言うと
「そっか」
と笑ってくれた。
**********
下駄箱で望を見掛けて、ドキドキした。
アイツと一緒にいたヤツが
「宅間、大丈夫?」
と言うから、チラッと望を見た。視線が合った途端、マズい!と思って
「そう言えば」
と友達に話し掛けた。
心臓がバクバクして、ちょっと混乱していたかも、、、
その時、望の隣にいたのは、林間学校の時も望と一緒にいたヤツだった。
最近よく一緒にいるけど、仲良くなったのかな?
何だか少しイヤな気分。
部活の最中もその事が頭から離れない。彼女に話し掛けられても、すぐに思考が流れてしまう。
「ねぇ、聞いてる?」
と言われて
「聞いてるよ」
と言った。
でも、頭の中では違う事を考えていた。
*****
俺が望から離れれば、この気持ちは消えて無くなると思ったのに、前以上に望の事を考えている。
望と会っていないのに、いつもいつもいつもいつも、、、。
彼女が出来れば、望を忘れるだろうと思ったのに、そんな事無かった。
望に友達が出来た事に、イライラしている。
そこは俺の場所だろ?
自分勝手な気持ちに手を焼いて、俺は俺で無くなって行く、、、。
*****
「俺達、別れない?」
部活の帰り道、彼女を送りながら言った。
「え?何?急にどうしたの?」
彼女が笑って聞いて来た。
「何か、、、ちょっと」
曖昧な返事だった。自分でも変だと思った。
「私の事、嫌いになった?」
、、、いや、最初から好きでは無かった、、、。
「他に好きな人が出来た?」
、、、元から好きなヤツがいる、、、。
「どうして別れたいか、教えて?」
「ただ、何と無く、、、」
「じゃあ、もう少し付き合ってみようよ、、、」
「それは、、、」
無理だと思う。付き合ってみても、やっぱり同じ結果になるのが目に見えている。
「ごめん」
「、、、イヤだって言ったら?」
「、、、」
「、、、そんなの認めないって言ったら?」
「、、、ごめん」
「理由位ちゃんと教えて欲しい、、、」
「、、、自分でも上手く説明出来ない、、、。だけど、このまま付き合うのは違う気がする」
「気の所為じゃない?」
彼女は、泣いていた。横を歩く彼女が涙を拭く。
「別れたく無い」
「でも」
「嫌っ!別れたく無いっ!」
「、、、」
「もう少し付き合おう。そうしたら、私の事、好きになるかも知れないよ?」
「、、、分かった、、、」
ため息が出た。
「ホントっ?!」
「うん」
でも、上手くやれるかは分からない、、、。
*****
廊下で望に呼び止められた。
「吉沢くん」
なんで、苗字?
「理科室にノート忘れてた」
「あ、、、」
俺のノート。
望は目を合わせない。少し視線を下げたまま、俺にノートを渡す。
ありがとうって言いたかったのに、言えなかった。
***********
野坂くんと友達になって良かった。
いつも優弥の事ばかり考えていたのに、最近は前程気にならなくなった。
「あ、ノートの忘れ物」
野坂くんが手にしたのは、優弥のノートだった。
「知り合いのだから預かるよ」
野坂くんは隣の小学校から来たから、優弥を知らない。
「知ってる人?」
「うん、幼馴染」
「じゃ、頼むよ」
預かっておきながら、緊張している自分に気が付いた。
*****
無事にノートを返す事が出来て、ホッとした。
少しでも優弥と話しが出来て嬉しかった。
僕は今でも優弥と一緒にいたいんだ。
そう気が付いたら、ちょっと悲しかった。
**********
俺と中田は結局上手く行く事は無く、二週間程で振られた。
中田は一所懸命俺に話し掛け、デートに行こうと誘ったり、勉強しようと言って来た。
俺も拒絶はしていない。
でも、どこか冷めてしまった俺は、無理に笑う事も無く、どう見ても付き合っている二人には見えない対応だった。
中田も、元に戻れないと分かったんだろう。
「我儘言ってごめんね。二週間ありがとう」
そう言って別れた。
**********
二学期制の僕達の学校は、10月の半ばから新しい学期になる。
委員会も後期になって、新しく決める。
野坂くんに一緒に図書委員をやろうと誘われた。
放課後、野坂くんと図書室のカウンター業務をしていると、優弥が入って来た。
ああ、そう言えば優弥も本が好きだった。
「返却お願いします」
と本を置く。僕は本を受け取り、パラパラと捲ると、悪戯や汚れが無いか、忘れ物が入って無いかチェックした。
「大丈夫です」
と言うと、優弥は本棚に向かう。返却した本の続きを手にして戻って来る。
「お願いします」
と言って借りて行く。
図書室を出る優弥の背中を見ながら、彼女はどうしたんだろうと思った。
*****
優弥は度々図書室に来ているのか、僕が受付カウンターにいる日は、閉室15分前に必ず本を返しに来る。
そう言えば、部活、、、辞めたのかな?
「返却です」
あれ?この本、二週間前に僕が貸し出した本だ。中を確認して
「大丈夫です」
と言うと、新しい本を選びに行く。立ち読みしながら本を選んでいた。
本当は色々聞きたい事がある。
部活の事とか、彼女の事とか、、、。でも、僕は彼に嫌われてるみたいだから、話し掛け無い方が良い。
*****
図書室の仕事が終わり、優弥の貸し出しをしている間に、野坂くんが戸締りをする。
優弥が図書室を出て、誰もいないのを確認してから、電気を消す。
扉の鍵を閉めていると
「あの、、、」
と女の子の声がした。
「はい」
忘れ物かな?
「ごめん、僕、塾があるから先に帰るよ」
野坂くんが申し訳無さそうに先に帰る。
「うん、分かった」
僕が扉の鍵を開けようとして
「忘れ物?」
と聞くと
「あ!違います!、、、えっと、、、」
モジモジしている。何だろう。
「あの、宅間くんは!
「望?」
階段を上がって来た優弥に名前を呼ばれた。
僕は、優弥の顔を見た。
優弥は女の子に気付くと
「鍵、返しに行くんだろ?」
と言って、手を繋がれた。
「先生待ってるから、早く」
と言って、一階まで降りる。
「ちょっと、吉沢くん?」
職員室で顧問の先生を呼んで貰う。
「宅間くん、鍵の返却?」
「お願いします。今日も特に問題はありませんでした」
と報告をする。少し立ち話をして
「暗いから気を付けてね」
と言われて、挨拶をして帰る。
下駄箱でさっきの女の子が待っていた。
優弥が く! っと、僕の肘を引っ張った。
思わず振り返ると
「し、、、」
と言われて、声を抑える。
余り音を立てない様に靴を履き替え、彼女のいない方から外に出た。
暫く歩いてから聞いた。
「ねぇ、どうしたの?」
「あの子、望に告白しようとしてた」
「?、、、だから?」
「、、、その、、、」
「あの子が僕に告白しようとしたから、逃げたの?」
「うん、、、」
優弥が何をしたいのか分からない。
「あの子さ、、、ずっと下駄箱で待ってたら可哀想だよね。話し、ちゃんと聞いて来るよ」
優弥はこっちを見なかった。
僕は、ちょっと小走りで下駄箱に向かう。
彼女はまだいた。
「あの。僕に用事?」
「!」
「下校時刻過ぎてるから、学校から出ないと」
彼女は緊張しながら、僕に近寄った。
下駄箱を出ながら
「宅間くんに彼女がいなかったら、付き合って欲しくて、、、」
と言う。
「ごめん、僕、君の名前も知らないから、付き合うのはちょっと出来ないよ」
「、、、付き合ってから、私の事知って貰えれば、、、」
「、、、無理、、、かな、、、」
「そうだよね、、、。あの、私、根本って言います。名前だけでも覚えて下さい」
「ごめんね、有難う根本さん。気を付けてね」
彼女はペコリとお辞儀をして帰って行った。
*****
校門から一つ目の信号に優弥がいた。
僕は、どうしたら良いか分からない。
今まで、何と無く避けられている、と思っていたから、僕も近寄らない様にしていた。
ゆっくり歩いて信号まで行く。タイミング良く変わってくれるといいのに、、、。
僕は出来るだけ優弥から離れて、信号が変わるのを待った。
「吉沢くんの言う通り告白だった。でも断った。名前も知らない子だったから」
「、、、」
「クラスは教えて貰わなかったけど、根本さんって言うんだって」
信号が変わった。僕達は横断歩道の端と端を歩いた。
そう言えば、一度帰ったのになんで戻って来たんだろう、、、。
「吉沢くん、さっき何で戻って来たの?」
「や、、、下駄箱で待ってたけど、望が降りて来ないから」
「、、、珍しいね、今までそんな事無かったのに」
「、、、」
「だってさ、中学入ってから、全然喋らなかった」
それなのに、急にどうして?
「、、、僕さ、、、優弥に嫌われる様な事、したかな?」
「、、、」
「、、、ごめん、気付かない内に、きっと何かしたんだよね?」
「、、、」
何も返事をしてくれない。
僕はため息を吐いて
「また、口聞いてくれないの、、、?」
信号を渡り切り、もうすぐ別れ道だった。
「何なんだよ、一体、、、どうしたいの?僕には分からないよ、、、。優弥が僕の事嫌いなら
僕も近付かないよ。話し掛けもしない。今までだってそうだっただろ?、、、それなのに、優弥から近付いて来たら、僕はどうしたら良いの?どうしたいの?どうして欲しいの?」
「、、、」
僕はずっと優弥を見ない様にしていたのに、優弥の顔を見た。
泣きそうな顔だった、、、何で?
泣きたいのは僕の方だよ、、、。
僕は暫く待ってみた。優弥が何かを言ってくれるかも知れない、、、。
「ごめん」
僕は優弥をおいて帰った。
*********
本当に、自分で自分が何をしたいのか分からなかった。
俺から望を避けたのに、望が親しい友達を作った事が嫌だった。女子に告白されそうになっていて、二人が付き合う事になるのも嫌だった。
でも、俺にそんな事言う資格は無かった。
中学に入ってから、新しい友達とばかり遊んでいたし、彼女も作った。
俺が望から離れたら、望がどんな気持ちになるか考えなかった。
俺はただただ、望に俺の気持ちを知られたく無かったんだ。
望に嫌われた、、、これで良かったんだ、、、。そう思いながら、気持ちは全然晴れなかった。
**********
家に帰ってから、僕は流石に落ち込んだ。
何であんな事、言っちゃったんだろう、、、。
折角優弥から近付いてくれたのに、、、。あのまま上手く行けば、僕達はまた元通りになれたかも知れないのに、、、。
何だか、上手く行かないな、、、。
*****
学校で野坂くんが
「ねぇ、一緒に買い物に行かない?」
と誘ってくれた。
買い物か、、、そろそろ、優弥の誕生日なんだよな、、、。今年はどうする?
仲直りしたいのも事実。
「野坂は何を買うの?」
「姉ちゃんの誕生日プレゼント」
「え、仲良いね」
「いや、来月は僕の誕生日だから、何か上げないと貰えないんだ」
ふふ、やっぱり仲が良いじゃん。
「何処に行く?」
「じゃあ、自転車で駅近くの商業施設に行こうよ」
**********
教室を出ようとしたら、望と友達が出掛ける話をしている、つい後を追ってしまった。
二人で土曜日に駅近くまで行くんだ。
小学生の頃は、商業施設に子供だけで行くのは禁止だった。
そう言えば、中学生になったら行こうと約束していたっけ、、、。
他にも二人で映画に行こうとか、電車に乗って遊びに行こうと約束していたのに、、、。
俺は結局彼女とも別れ、陸上部も気まずくて辞めた。
*****
部活を辞めた俺は、休日をダラダラと過ごす様になっていたから、思い切って出掛ける事にした。
もちろん望達がいる商業施設に。
現地で会ったとしても、偶然を装えば良いし、二人の事が気になって落ち着かない。
自転車に乗り、長い陸橋を越え、20分程で目的地に着いた。
取り敢えず本屋をフラフラしてみる。
そんなにすぐに見つかるとは思えない。
俺も色んな店を覗いていた。
「優弥くん」
別れた彼女。
「どうしたの?一人?」
「まぁ」
「買い物?」
「たまにはフラフラ」
「そっか」
「そっちは?部活は?」
「この間大会があったから、今日と明日は休みなんだ」
「あー、、、大会あったんだ。どうだった?」
「予選落ち。後ちょっとだったんだけどね」
「残念。次は頑張れよ」
「有難う」
良かった。普通に話す事が出来た。
**********
最初に優弥に気が付いたのは、野坂くんだった。
「あれ?図書室に来る人じゃない?」
と言われて、彼が見ている方を見る。
「本当だ」
彼女と一緒だ。今日はデートなんだ、、、。
僕への告白は邪魔するクセに、自分は上手くやってるんだな、、、。ちょっと不貞腐れた。
仲が良さそうだ。
「野坂くん、あっち見に行こうよ」
と彼等から離れる様に誘った。
優弥の誕生日プレゼントはもう要らないや、、、。可愛い彼女から、何か貰うんだろう?
**********
野坂くんとフードコートで、ハンバーガーを食べた。
「お陰で良い物が買えたよ。予算内に収まったし、宅間くんのお陰だよ」
ラッピングされた小さな袋をテーブルに置き、野坂くんは喜んでいた。
「ラッピング、その色で良かったの?」
可愛いピンクとかじゃ無くて、濃紺と金のリボン。
「姉ちゃんは、こっちの方が喜ぶから。可愛い色とかにすると、ゲーッて顔される」
「そっか」
僕も本当は、優弥にプレゼントしたいなって思った物があったんだ。
でも、デートしている二人を見たら買うのを辞めた。
どうせ、喜んで貰えないし、彼女からのプレゼントが一番嬉しいと思うから。
**********
優弥の彼女が、優弥以外の男子と一緒にいた。
え?何だか付き合ってるみたいに見えるんだけど、、、。
試験前の部活動停止期間中だった。
確か、中田さんって言ったっけ、、、。陸上部の男子と二人きりで帰ってるけど、良いの、、、?
僕は、思わず優弥を探した。
彼女達に気付いたら、傷付くんじゃ無いかと思ったから。
振り返り優弥を探しに行こうとしたら、本人にぶつかった。
「うわっ!」
「ちょっ!」
二人で転びそうになる所を、優弥が踏ん張ってくれて転ぶのを免れた。
「ごめん」
全身で支えてくれたから、僕はちょっと恥ずかしかった。
「話し掛けようとしたら、急に振り返るから、、、びっくりした、、、」
驚いた所為か、口調がいつもの優弥だった。
そうだ!彼女が浮気っ!
「優弥、裏口から帰ろう!」
「何で、こっちからの方が近いじゃん」
「ででで、でも、今日は裏口の方が」
と言って、彼の腕を引く。
「ああ、アイツ等の事?」
僕は優弥の顔を見た。視線の先には中田さんと陸上部の男子。
「やっと付き合ったんだ」
「やっと?」
「ま、良いや。裏口から帰ろう」
そう言って、優弥は僕と腕を組んだ。
裏口から帰ると小さな公園がある。
「ちょっと寄って行こうよ」
彼に誘われて、中に入る。
小学生の頃はもっと大きく感じたけど、こんなに小さかったかな?
「俺、随分前に中田と別れたんだ」
「そうなんだ」
「部活もその時辞めた」
「それは何と無く、そうかなって思ってた」
「アイツは中田の事好きだったから、よく慰めてたみたいで、早く付き合えば良いのにって思ってたんだ」
「、、、」
「望、、、ごめんな。俺、望に嫌な思いさせただろ?」
「嫌な思い?」
「中学入ってから、望の事、避けてた」
「、、、」
「、、、あのさ、笑わないで聞いてくれる?後、誰にも言わないで欲しいんだけど、、、」
横に座る彼を見ると、膝に置いた手を開いたり閉じたりしている。
緊張してるのかな?
震える手で唇を触った。
「ヤバ、、、めちゃくちゃ緊張する」
声も不安そうだ。
「笑わないし、誰にも言わない」
「、、、ありがとう。望が嘘吐か無いの知ってるし、信用してる、、、俺さ、、、」
彼は目を閉じた。
「望の事好きなんだ」
「うん」
「、、、うん?」
「え?」
「えっと、望の事好きなの」
「僕も好きだよ?」
「あー、、、そう言う好きじゃ無くて、LOVE、愛してる、の好きなんだけど、、、」
「え!」
「びっくりだよね、、、分かるよ。俺自身びっくりした。だから、望から離れたんだ、、、」
「、、、そっ、、、かぁ、、、」
「嫌な思いさせてごめんな。望から離れたら、この気持ちも無くなると思ったんだけど、全然ダメだった。返って、望の友達に嫉妬しちゃうし、、、折角告白されたのに邪魔しちゃうし、、、」
「良いよ良いよ。理由が分かって、ホッとした」
「俺の事、気持ち悪く無い?」
「それは平気。優弥が僕から離れて行って、淋しいなって思ってた」
「、、、ごめん」
「また、仲良くしてくれる?」
「ああ」
「じゃ、今日一緒に勉強しない?」
僕は嬉しくて誘ってしまった。
優弥は緊張が取れたのか、以前の僕の大好きな彼の顔に戻っていた。
僕達はそのまま、優弥の家で勉強した。僕の家より優弥の家の方が近いから。
「塾とか行ってる?」
「行って無いよ」
「俺も」
なんて話しながらノートと教科書を出す。
**********
どうして望に気持ちを伝えたのか、分からなかった。
でも、望が俺の事受け入れて、避ける事無く仲良くしてくれるのが嬉しい。
前みたいに、一緒に過ごせる様になって、俺はフト感じる時がある。
俺の気持ち、ちゃんと望に届いてる?
一緒にいる時間が増えたけど、何か小学生の延長みたいになって無い?
望が図書室の受付の日は、俺も荷物を持って図書室に行く。
幾つか机とテーブルが有るから、勉強しながら待つ。
前は、図書室に貼ってある受付クラスの表を見て、望が担当の日に本を借りに来ていた。
今は、望と一緒に図書室に来る。野坂も一緒だけど。
図書室とは言え、ほぼ誰もいないから話しをしていても怒られない。
それでも、俺はカウンターの中には入り辛い。
だから少し離れた場所で勉強している訳だけど、、、。
望と野坂が仲が良いのは知っていた。
二人で仕事をしながら話している声が、微かに聞こえる。
勉強をしながら、野坂に嫉妬している自分が嫌だ。
そう言えば、野坂にプレゼント上げてたな。
分かってる、、、分かってるんだ。全部自分の所為だって。あんな事をして、望から離れたから野坂と仲良くなったんだ、、、。分かっているけど、ツラい、、、。
*****
三日間の定期試験が始まり、昼には試験が終わる。
「優弥、一緒に勉強しよう」
望に誘われただけで、嬉しい俺。
「野坂くんも一緒にやろうよ」
え、、、野坂も?
「今日?」
「うん、僕の家で」
「今日なら良いかな、、、明日は塾があるから」
「場所は後で送っておくよ」
中学生は学校にスマートフォンを持ち込めない。望は野坂と連絡先を交換してるんだ、、、。
昼飯を食って、望の家に集合になった。
野坂は勉強が出来た。特に数学が好きみたいで、俺と望は肩を並べながら野坂に教わった。
教え方が上手くて、分かりやすい。
さっきまで、野坂が苦手だったけど、今は少し尊敬している。
「明日は野坂くん、予定があるの?」
「塾があるから、そっちに行く予定。自習室も空いてるし、先生も何人か来てるから」
「そっか」
「明日は俺ん家で勉強しようよ」
と望に言うと
「じゃあ、お昼持って行くよ」
と言ってくれた。
*****
二日目の数学はまぁまぁだった。野坂が教えてくれた所はちゃんと出来た。
望が、持って来たお握りを食べながら、野坂を褒める。
「野坂くんのお陰だね。数学、自信が無かったから、嬉しいんだ」
パクッと頬張る。
「野坂くんは、数学は好きだけど、英語が苦手なんだって」
「最近読んだ本を薦められて読んだら、凄く面白かったよ。優弥も読んでみてね」
野坂の話題しか出て来ない、、、。
「野坂くん、野坂くんって凄い褒めるね。望は野坂くんが好きなの?」
にっこり笑う。
「、、、ごめん。二人きりだと思ったら、緊張して」
緊張?
急に下を向いて、お握りを小さく一口食べた。
「何で緊張してるの?」
パッ!とこちらを向く。
「だって!、、、だってさ、、、。優弥が僕の事好きだって言うから」
見る見る望の顔が赤くなる。
でも、望は俺の事、友達と思ってるんでしょ?
「そうだ、野坂と連絡先交換したんだよね?俺にも教えてよ」
とスマートフォンを出す。
「良いよ」
と望が俺の方に画面を見せると、待ち受けが俺と望の写真だった。
あっ!
とスマートフォンを胸に押し当て、画面を隠す。
「、、、見た?」
、、、俺はニヤけてしまう。
「見てない。見せて?」
「ヤダよ!絶対見たでしょ?」
「見たなら、見せてくれても良いじゃん」
ニヤニヤが止まらない。
「う、、、イヤだよ、、、」
「のーぞみ?」
「イヤだって」
「じゃ、その待ち受け、いつから使ってるの?」
「スマートフォン買って貰った時」
「春から?」
「春休みに買って貰った」
「ずっとそれなの?」
「だって!、、、だってさ?小学生の時は仲良かったから!中学生になっても変わらないと思ったから!」
意地悪し過ぎた、、、。望の目に涙が溢れて来た。
「淋しかったんだもん、、、。待ち受け位、良いじゃないか、、、」
「良いよ。俺もその写真、待ち受けにしたい。写真頂戴」
「、、、うん」
望はシャツの袖で涙を拭いて、連絡先を交換した。
「望は好きな人いないの?」
「、、、優弥、、、」
望はスマートフォンを弄りながら言った。
「そう言う好きじゃ無くて
「分かってるよ。愛してるの方の好きでしょ?優弥が好き、、、」
「でも、、、」
望が写真を送ってくれた。
「公園で好きって言われて、嬉しかった。、、、どうして嬉しいのか考えたんだ。優弥が離れて行った時は淋しかったし、彼女が出来た時は嫌な気持ちになった。、、、いつもいつも優弥の事考えて、優弥に嫌われてるなら、優弥の前から消えようって思った。、、、仲の良い友達だと思っていたけど、、、ちゃんと考えたら、僕も優弥の事好きなんだと思う」
「望、、、」
「優弥は知らないだろうけど、僕は本当に淋しかったんだ、、、。彼女が出来た事も教えて貰えなかったし、話し掛けても素っ気無いし、、、」
「、、、ごめん」
「、、、もう、淋しいのはイヤだ、、、」
望がもう一口お握りを食べる。齧る様に、ほんの少し、、、。
俺は、望の手からお握りをそっと取り、テーブルに置いた。
「、、、ごめん、望」
そっと抱き締めた。
望は、俺の肩に頭を寄せる。
「本当に僕の事が好きなの?」
小さな声。
「好き」
「ずっと一緒にいてくれる?」
「うん、ずっと一緒にいる」
「、、、ありがとう、、、」
*****
昼から集中して、何とか試験勉強を続けた。夕方チャイムが聞こえて来て、もうこんな時間かと思った。
「今日はちゃんと勉強出来たぁ」
と望が喜びながらノートを閉じる。
「あのさ、、、」
と言って立ち上がり、望はベッドに乗り、枕元のぬいぐるみを取る。俺の知らないぬいぐるみ。
「本当は買うの辞めようと思ったんだ。買いに行った日、優弥がデートしてるの見ちゃったし。僕からのプレゼントなんて受け取って貰えないかな?って考えちゃって、、、」
ベッドに腰掛けて、ぬいぐるみを弄りながら話す。
「デート?」
俺も望の横に座る。
「うん、彼女と駅近の商業施設で」
ん?
「望が野坂と行った日?」
「うん、野坂くんが先に優弥に気が付いた」
「違う、違う。あの時はもう別れてた。たまたま会ったんだよ」
「そうなの?」
「アイツ、家族と来てたし。、、、望はあの日、野坂に何かプレゼントしてたよね?」
「してないよ?」
「野坂がこれ位のプレゼント持ってた」
手で大きさを伝えると
「それは野坂くんがお姉さんに買った、誕生日プレゼントだよ」
ホッとした。ちょっと気になってたんだ。
「プレゼント、用意してくれたんだ、、、」
「うん、やっぱり渡したかったから」
俺は、ぬいぐるみを触る。柔らかくてホワホワしてる。ちょっとクタッとしている所も可愛い。
「本当は望が欲しかったんじゃない?」
望が手を伸ばして、ぬいぐるみを触る。両手で抱いて、俺の頬をぬいぐるみで撫でる。
「ほら、気持ち良いでしょ?。この子を僕だと思って、毎晩一緒に寝てね」
あー、、、幸せだな、、、。
つい望を抱き締めた。
「優弥?」
「ぬいぐるみよりも、望と一緒に寝たいよ」
そのままベッドに倒れ込む。ギュウギュウと望を抱き締め、巫山戯合う。
「優弥、、、大好きだよ」
望は俺に抱き付いて、顔を隠しながら言う。
俺も望を抱き締めて
「俺も大好き」
と言った。望が俺の匂いを嗅いでる。
「告白してくれてありがとう」
俺の腕の中で、俺の顔を見て言ってくれた。
いけないと分かっているのに、、、つい、、、。
望が愛しくてキスをした。
誕生日プレゼントがぬいぐるみ、、、。




