ステータスを俊敏に全振りしたら、ラスボスが自分のしっぽだった件
2月1日
ずっと見られている。
女神様が最後に言った言葉。
それが思い出せない。
この村にきて友達になったアロースちゃんに見てもらう。
「えー、なんにもいないよ」
「ずっと見られているんだけど」
「気のせいじゃないの? お耳はかわいいけど」
「みてみて」
ぴこぴこと片耳を動かすと、アロースちゃんがきゃっきゃと笑った。
2月2日
「目をあけて」
白いカーテンが揺れるすてきな部屋。
「あなたの部屋よ」
アロースちゃんがベッドにぴょいと飛び乗り、嬉しそうに揺れている。
「こんなによくしてもらって、いいの?」
「気にしないで」
「アロースも喜んでいるし、自分の家だと思って欲しい」
アロースちゃんのパパとママが、書類を渡してくれた。
「エセリアル」
それが私の新しい名前。
記憶の無い私に名前をくれた。
この世界の言葉で「Ethereal」気高きものという意味だと教えてくれた。
私はワーワー泣いてしまった。
アロースちゃんが慌てて頭をなでてくれた。
2月3日
気配が強くなった気がする。
振り向いても誰もいない。
でも、女神様が言った言葉を夢が教えてくれた。
「ステータスオープン」
視界に重なって、文字と数字が表示された。
【名前】エセリアル
【種族】獣人
【職業】シバ神
【Lv】5
【体力】10
【攻撃】8
【防御】12
【俊敏】20
【スキル】なし
スキルポイント25
これは、うっすらと覚えてる。
俊敏が高いから、これを伸ばしていけば、恩返しができるかもしれない。
「シバ神ってなんだろう?」
こんど村の長老に聞いてみよう。
2月5日
村に入ろうとしていた魔獣を追い払った。
怖かったけど、勇気をだしてにらみつけてやった。
頭の中でぴろろんという音が響いたので、ステータスをみたらLvが上がっていた。
【Lv】5→6
スキルポイント25→26
この日、少しだけポイントを俊敏に入れてみた。
【俊敏】20→24
何が変わるだろう?
2月6日
何かを感じる。
急いで振り向くと、目の端に、何かがいる!
【俊敏】にもっとふれば何か分かるかもしれない。
2月7日
【俊敏】24→46
失敗だったかもしれない。
気配をより強く感じるようになった。
早く動けるようになったけど、そいつは、私よりももっと速い。
遊ばれているみたいだ。
食欲がなくて部屋にこもっていたら、アロースちゃんがお菓子をもってきてくれた。
甘くておいしい。
パパとママに正直に話した。
頭をなでて抱きしめてくれた。
村長のところにいけば何か知っているかも。
明日行ってみよう。
おなかがぐーと鳴って、みんな笑った。
血のソーセージ《ブルートヴルスト》がおいしかった。
2月8日
村長に会いにいった。
「なにもおかしなとこはないよ」
とちょっと困った顔だった。
「シバ神ってなーに?」
まえから不思議に思っていた職業を聞いてみた。
村長が奥の部屋から古い本を持ってきた。
カラフルな衣装を着た神様が踊っていた。
「創造と破壊の神様だよ」
誰かの笑い声が聞こえた気がして、振り向いた。
気配だけ残して、そいつはやっぱりいなかった。
2月10日
村長にお願いして、村の外で狩りをした。
もっとLvを上げて【俊敏】を高くしたら、あいつを捉えられるかもしれない。
暗くなるまで山を走り回って、魔獣をやっつけた。
家に帰ったらパパとママが真っ赤な目で私を抱きしめてくれた。
【Lv】6→21
【俊敏】46→61
2月18日
めいっぱい息を吸い込む。
今日の朝ごはんはレンズ豆のスープ。
お隣の家は魚を焼いている。レモンじゃなくてライムがこだわり。
ママは今日機嫌がいい。
背後で誰かが笑っている。
でも、そいつは匂いがない。
いないのにいる。
いったいなに?
もっとLvをあげないと。
2月19日
朝から山の中を走って魔獣を倒した。
トルルルン。
いつもと違う音がした。
【Lv】25
【俊敏】65
【スキル】春雷
2月20日
目の前にドラゴンがいる。
青い炎のような舌がちろちろ燃えている。
アロースちゃんたち、きっと心配しているだろうな。
ごめんなさい。
でも、どうしてもがまんできなかった。
早く使いたい。
強いやつに試してみたい。
「春雷!」
気が付いたら私はドラゴンの後ろにいた。
ドラゴンの体が半分なくなっていた。
2月40日
【Lv】59
【体力】10
【攻撃】8
【防御】12
【俊敏】99
【スキル】春雷
とうとうこの日が来た。
私は村に戻った。
挨拶だけはしておきたい。
パパとママは、二回りも大きくなった私をみても驚かなかった。
アロースちゃんも抱きついて離れなかった。
一緒に食事を食べて、アロースちゃんと一緒に眠った。
2月41日
暖かい庭で私は準備する。
背後の気配は、今は存在に変わった。
今日こそは決着をつける。
「春雷!」
ものすごい勢いで振り向く。
体が引きちぎれそう。
目の端にそいつが映る。
まだ、これでも足らないの?
「春雷!」
限界を超えてその先に。
手を伸ばす。
指先に触れた!
握りしめる。
温かい!
「わぎゃん」
痛い!
悲鳴を上げたのは、
私だった。
アロースちゃんが笑っている。
パパとママが笑っている。
とうとう捉えたそれは、私のしっぽだった。
その瞬間。
ぽろろん。
【職業】シバ神→柴神
ステータスが更新されていた。




