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眠らないミッドナイトを泳いで

笑いの無い夜を繰り返して

作者: 小泉 上沙
掲載日:2025/09/09

ボケとツッコミの話。

ツッコミ「はいどーも! カニと〜?」


ボケ「サルで〜?」


ツッコミ・ボケ「サルカニガッセンでーす!!」


ボケ「あのねカニ君。僕最近ええことあったんよ」


ツッコミ「めっちゃ気になるやん。何があったん?」


ボケ「昨日な、日課のサイクリングしとったら向こう

   から美人さんが歩いてきとったんよ」


ツッコミ「色々気になるけど……まあ、それで?」


ボケ「そしたらな、その人が通り過ぎる瞬間チラって

   こっち見てな、「キムテクに似てる〜」って小

   声で言ってたねん!」


ツッコミ「アホ! 鏡見てこい! んなもん幻聴や幻

     聴。お前がキムテク似ならこの世の全員キ

     ムテク似やぞ!」


ボケ「……」


ツッコミ「…………」


ボケ「……今のええ感じやったな」


ツッコミ「ボケもツッコミも完璧やったわ」


ボケ「それにしても、流石に夜の十二時から漫才の練

   習は眠いな」


ツッコミ「お前が急に「公園に来い」とか連絡してき

     たんやろ」


ボケ「ええやんけ、お前も俺に会えて嬉しいやろ?」


ツッコミ「嬉しすぎて死にそうやわ」


ボケ「素直ちゃうなぁ」


ツッコミ「本音や本音」


ボケ「――じゃんけん負けたほうがそこの自販機でコ

   ーヒー買いに行こや」


ツッコミ「突然なんやねん。別にかまへんけど」


ボケ「そんじゃいくで……。――グッパで組んでも文句

   無し!!!」


ツッコミ「それ2人でするもんちゃうねん。普通のじ

     ゃんけんでええんよ」


ボケ「仕方ないな。それでやってやってもええで」


ツッコミ「上から目線すぎやろ。何様や」


ボケ「いいからやんで。じゃーんけんホイ!」





ツッコミ「結局俺が負けるんかいな」


ボケ「おーありがとな。……しっかり微糖やな」


ツッコミ「お前まだブラック飲めんのか」


ボケ「あんなん飲みもんちゃうわ。ただ苦いだけや」


ツッコミ「うわ、失言やんお前。コーヒー豆の農家さ

     んに謝ってこい」


ボケ「……ごめん」


ツッコミ「ガチトーンやめてや、俺が悪いみたいやん

     け」


ボケ「……ごめんなさい」


ツッコミ「おい」




ボケ「夜の公園のベンチで飲むコーヒーは格別やな」


ツッコミ「そうやなぁ」


ボケ「隣にいるのが女の子やったらもっと最高やな」


ツッコミ「そうやなぁ」


ボケ「俺最近思うねんけどさ」


ツッコミ「おん」


ボケ「俺らこのままでええんかな」


ツッコミ「………………」


ボケ「どしたん」


ツッコミ「いや、急に真面目な話やなって思て」


ボケ「俺やって真面目な話するときぐらいあるよ」


ツッコミ「似合わんな」


ボケ「うっさいわ。……わりと本気な話やねん。俺らが

   20歳でコンビ組んでから9年経つやんか」


ツッコミ「もうそんな経ったんか」


ボケ「ほんま早いよな。9年、9年や……。売れてても全

   然おかしない年月やぞ。今の俺らはどうや!」


ツッコミ「賞レースは最高でも3回戦落ち。テレビに

     出たことなんかない。ライブだけじゃ生活

     費まかなえんからバイト漬けの日々」


ボケ「……そうや。それが俺らの現状や」


ツッコミ「別に、10年以上経ってから売れる人やって

     ザラにいるやろ」


ボケ「ああ、確かにおるな。けど俺らもそうなれると

   思っとるんか?」


ツッコミ「……そりゃ、俺らなら……」


ボケ「はっきり言えとらんやんけ。もう、分かっとる

   やろ」


ツッコミ「俺は……まだ諦めたない」


ボケ「それは俺も同じや。けどな、もう夢見れる歳で

   もないって話や」


ツッコミ「じ、じゃあ、どうするっちゅうねん!今こ

     こで解散でもするんか!?」


ボケ「ちゃうわ! そんなこと言っとらん」


ツッコミ「なら何が言いたいねん!! 話始めたんお

     前やろ!」


ボケ「ちゃうねんちゃうねん。……あぁ、俺もこんなこ

   と言いたいわけちゃうんよ」


ツッコミ「どういうことや?」


ボケ「急に……不安になんねん」


ツッコミ「何がや」


ボケ「俺らの年齢ってさ、普通に家庭持ったり仕事で

   結構な役職持ったりしててもおかしないやん」


ツッコミ「まぁ、そやね」


ボケ「実際に友達から結婚式の招待状が送られてきた

   りするんよ。……そんなん、不安になるやん」


ボケ「俺ら、こんなことしててええんかなぁ」


ボケ「こんな仕事とも言えへん仕事でええんかなぁ」


ボケ「この先この道選んだこと後悔しいひんかなぁ」


ボケ「俺たちがやってることって報われんのかなぁ」


ボケ「焦燥感が止まらへんねん。心の奥がスカスカす

   るんや、なぁ! 俺は……、俺らは、どうするべ

   きなんや!!」   


ボケ「――誰か、答えを教えてくれや!!」


ツッコミ「そんなん……答えなんてないがな」


ツッコミ「どうするべきなんかはお前が一番分かっと

     るやろ」


ボケ「それが分からんから困っとんねん……」


ツッコミ「俺らは漫才師や。これまでも、これからも

     ずっとそうや」


ツッコミ「俺らを漫才師にしたんはお前や。なら自分

     が選んだ道ぐらい後悔すんな」


ボケ「けど、けど……、このままやったら俺ら……」


ツッコミ「ああもうっ、うっさいな!! 売れてへ

     んからなんやねん! 報われへんからなん

     やねん! 周りのやつと違うからなんやね

     ん!」


ツッコミ「俺らはお笑いがしたいから漫才師になった

     んやろ! 売れてへんとか心底どうでもえ

     えわ!!」

     

 ツッコミ「俺らは死ぬまで漫才すんねん! お前と

      漫才が出来んくらいなら死んだるわ!分

      かったらさっさと立てや。通しやんぞ」


ボケ「……めっちゃ熱く話すやん……」 


ツッコミ「話させたんはお前じゃ」


ボケ「なんか、悩んでたんがどっか行ってもうたわ」


ツッコミ「そもそもそんなしょうもないことで悩んで

     んなや」


ボケ「ええやんけ別に。俺は繊細やねん」 


ツッコミ「お前が?」


ボケ「なんか文句あんのけ」


ツッコミ「なんでもええわ。さっさと始めからやんぞ

     もう1時や」


ボケ「よっしゃやるか」


ツッコミ「――おう」






カニ・サル「どうも、ありがとうございましたー!」 


司会者「いやぁ、『サルカニガッセン』。今回も爆笑

    を巻き起こしてましたね!」


サル「そら僕らはおもろいですからねー」


カニ「調子なりすぎやろ! すぐ干されんぞ」


サル「そんなん水で戻したらええやんか」


カニ「お前はシイタケか! そっちの『干す』ちゃう

   ねん」


観客「「「「「ワハハ!!」」」」」

   

司会者「そんな『サルカニガッセン』のお二人にお聞

    きしたいのですが、お二人は売れるまでかな

    り年月がかかっていますよね?」


カニ「そうですねー。だいぶ遅咲きのほうやと思いま

   す」


司会者「中々売れない期間があっても諦めずに続けた

    のには何か理由があるのですか?」


カニ「……それは――」

サル「……そりゃ――」


カニ・サル「こいつがいたからですわ」


 彼らは夜を、乗り越えていく。


あなたの夜が誰かのためになりますように。

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