88話 暗躍する者達の作戦会議
部屋には静寂が満ち、皆が席に着く中、いくつかの書類と壁に貼られた大きな紙が目に留まる。その紙の前には執事が控え、張り詰めた空気が漂っていた。その静けさを破ったのは狼さんだった。
「俺から報告する」
【白狼のガルーダからの報告】
「今朝がた王城に雀を放し情報収集の結果だ、人間を喰らっている魔族が2名、男1体女1体だ。王妃の後宮で悠々自適に生活中。城の使用人も何人も喰らってるみたいだ。王妃の宮から消えた使用人は18人。生存の確認が取れているのは3人だけだ。」
グレード君は狼さんを見て目を見開いた。隣に座る私に、かすかに聞こえるほどの声で「白狼のガルーダ……が、なぜここに?」と呟く。白狼……それが彼の二つ名なのか。普通にかっこいい。それに比べてトーさんの「黒烏の暗殺者」という二つ名は、一体何に由来するのだろうか。少し思考が逸れたが、魔族か。私がこの世界に来てから、まだ一度も出会っていない種族だ。
そう考えていると、執事が紙に今の報告を素早く書き記していく。黒板とかはないのだろうか? 作ってみようか? いや、また違う方向に思考が飛びそうになった時、お爺ちゃんが一つ咳払いをした。
【ストーティオン伯爵の報告】
「昨日話を聞いてからこちらはグレード君の兄君、ニコライ殿からお返事が届いた。明日会う事になる。その際聖女様が同席を希望されたので、一緒にニコライ殿の説得に当たる。
それと元護衛騎士セルジオ殿にもコンタクトが取れた。明日退院するので、明後日に会う事になりそうだ。カナメちゃんは大丈夫か?」
「問題ありません」
私はお爺ちゃんをみてコクリと頷き、視線をトーさんに向けた。
「明日はトーさんも助けてくれる?」
「もちろん。一緒に行くよ!そのために昨夜から動き回ったんだから。」
私はトーさんの言葉に嬉しくてニコニコしたら、お兄ちゃんのむぎゅむぎゅ再開。そして「僕もカナに頼られたい」ぼそっと呟くと、お兄ちゃんは私をむぎゅっとしたまま立ち上がって、
「僕も何かお役に立ちたいです!手伝わせてください!」
と声を上げた。皆がマジマジとお兄ちゃんを見る。あまりにも無言で見られるので、お兄ちゃんがたじろいで……
「ダメですか?」
そう言ったとたん、ガタンと席を立ちお兄ちゃんと私を包むようにむぎゅっとするさっちゃん。お兄ちゃんはメッチャ奇麗な人に抱き着かれて顔を真っ赤にしてアワアワしている。
「さっちゃん?どうしたの?」
「この子メッチャ可愛い♡目もパッチリだし赤髪も綺麗だし。私と一緒に釣りをしよう♡これだけ奇麗ならフフ、大物が釣り上がると思うんだ♡」
「「釣り?」」
少年二人は声を合わせて質問する、それにさっちゃんはニッコリ微笑んで
「そう♡おいたをする悪いサルを釣るんだよ。」
グレード君を除けた男性陣がさっちゃんの言葉にあーーーーーって顔になる。あぁサルって第二王子釣るつもりなのね。……良いアイデアだと思う。お兄ちゃん可愛いし。きれいだし。うん
「私も協力する」
さっちゃんにニッコリ笑って親指を立てる。さっちゃんは嬉しそうに微笑んだ。グレード君は影を薄くしてお兄ちゃんを哀れなものを見るかの如く遠巻きに見ているにとどめた。気づいたんだな。これからお兄ちゃんがどうなるのかを。察しの良い子だなぁ~グレード君
「はい!席に戻る。次俺の報告するぞ」っとトーさんが声掛けをして
「「「はーい」」」
っと私たちは急いで席に戻った
【クロトことトーさんからの報告】
「最初に王城に入ってすぐに後宮がおかしいのは気づいた。後宮には闇魔法の結界が張られていて入れないようにされていた。まぁ同魔法の使い手の俺は入ったけど。ちょうど良い所に王妃の父親、エヴゲニー公爵が来ていたので後尾行して状況を確認してきた。
王妃は第三王子を暗殺しようとして、なかなか達成しなかったため、悪魔と契約した。王妃の願いは第一王子か第二王子のどちらかを国王にしたい。自分はこの国の王を誕生させた至高の存在になるのだと。それに協力している、契約した悪魔の好む食事を用意していたのが実家のエウゲニー公爵家の当主。」
父さんは言葉を切り狼さんを見て告げた
「師匠は言っていたな。もう何人も喰われていると。4か月位前からエウゲニー公爵は食事確保が困難になったんだと嘆いていた。悪魔の好む食事はなんだと思う?」
私はハッとする!!四カ月前……もしかして私と同様に気づいた人がほとんどだ。グレード君もわなわなとしている…お兄ちゃんは思案顔。私はトーさんに向かって、違うと言ってほしい気持ちを抱えて答えた
「子供…」
「そうだ人間の子供、特に女児の肉が好物なんだと、後宮に居る魔族は」
トーさんは眉間に皺をよせ吐き捨てる様に言い切った。その声に勢いよく席を立ちトーさんを見てグレード君は声を上げた
「その子供って…4か月前ならそうだよな、辺境の孤児院の不正を暴いて、ハイン姉さんや我が家が介入した頃だ……まさかその魔族は辺境の子供を喰ってたのか…」
「あぁ、エヴゲニー公爵が”辺境からは仕入れ出来ない”そうこぼしていたから確実だろう。辺境が第三王子の母親側妃の実家って言うのもあって、子供を攫っても分からないよう下地を辺境で作ったんだと。何年もかけて」
辺境の子供たちがあんな環境に居たのも、消えていきアルマ君があんなにおびえていた理由も魔族の為……エウゲニー公爵のせい……私はふつふつと怒りが込み上げてきた。
公害にしかならぬ王子たちを国の頭に据えようとする愚かさも、
己を至高の存在とせんとする傲慢な心根も、
そのために弱者たる子供たちを食い物にせんとする醜悪な所業も、
全部腹だたしい!すべて自分の事だけしか考えてないその思考に吐き気がする。
「王様も許せませんが、王妃はもっと許せない。やってやりましょう」
私は冷静に皆を見回しそう告げると。会議に参加して居る皆が大きく頷いてくれた。




