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安全第一異世界生活  作者: 笑田
旅と出会いと冒険と
41/217

40 トーさんの願いと再会と

ニコニコ笑う聖女様。三神 彩音 御年37歳


口に手を当てて青い顔をする私 麻生 要 御年52歳 見た目5歳である。


私は聖女様に頭を下げた。それを見て聖女様はクスクス笑いだす。

笑いながら私たちの正面の椅子に座る聖女様。それを見て私も座りなおした。


「初めまして、麻生アソウ カナメです。こちらの世界では5歳児です。」


「あら、日本では?」


「52歳で孫も3人居ました。あ…えっと、さっき言っていた、孫娘のミカちゃんが聖女様の小説の大ファンだったんです。小説知ってますか?」


「「”華白の聖女~召喚聖女・愛と友情の物語~”」」


私と、聖女様の声が完全に重なった。クスクスクスクス

周りは唖然としている。


「いや~~~あの小説の事知ってるの嬉しいわ。」


「私は、孫がその小説の聖女様の強さが好きで、コスプレしたり色々していましたので」


「フフフ、そうね小説通りって嫌で、私は、私じゃない。いっぱいフラグ折って、折りまくって今の「私」が居るの。」


私は唖然とした「フラグを折った」と・・・聖女様は言った。

唖然とした私の顔を見て聖女様は口角を上げた


「折ったわよ。王族との婚姻なんか冗談じゃない。

結界消滅さすか、無理やり結婚かの2択を提案したら、糞王子が、結婚を取って来たから速攻結界消滅してやったの。あの時の王族の土下座は見ものだったわ、フフフフフ」


強い!!強いよ聖女様!!


「いまは王族は聖女には不可侵なのよ。だから基本貴族の治療も受けない。受けるときは超高額なのよ。

それと私の仲間が信頼した方々からの紹介・あとは恩人のお願いかしら」


「恩人?」


「エド前に来て」


聖女様の横に立ったのは金髪キラキライケメン。


「お初にお目にかかります。私エドモンド・ケリィーズイット。

あなたのお父上に運よく助けられた者です。」


私がトーさんを見るとトーさんは私の頭をよしよしして


「エドモンド久しぶり。その立ち姿、もう問題はなさそうだな。膿は出し切ったか?」


「そうですね。8割と言ったところです。全部出し切ります。期待していてください。」


トーさんとエドモンドさんはニヤリと笑い合っている。あーーー悪いことする時の男の子の顔だ。私がキョロキョロ二人の顔を見つめているとトーさんの向こう側から訳が分からないと言うお兄ちゃんの困惑顔が見て取れた。


「えーっとごめんねお兄ちゃん。びっくりさせて。

私聖女様と同じ世界から来た人間なの。トーさんに保護されて養子にしてもらって、今があるのよ」


「トーさんとカナが、養子?」


え?気になるのはそこなの?

お兄ちゃんは戸惑いながら私とトーさんを見て首を振った


「あの町で見たときから二人は羨ましいくらい親子だったよ。今は僕もその中に入れてもらえてるの、とっても嬉しいんだ。」


トーさんはお兄ちゃんと私の頭を抱え込んでギューっとして


「そうだな」と笑った。トーさんの顔が泣きそうだったのは内緒だ。そんな私たちの姿に聖女様は口を開いた。


「そちらの女の子?えっと確か男の子のはずよね?ミハイル・ストーティオン君」


聖女様の言葉に、慌ててお兄ちゃんは立ち上がり


「お初にお目にかかります、ストーティオン伯爵家 嫡男 ミハイルでございます。挨拶が遅れ失礼いたしました。」


「良いのよ。こちらこそよろしくね。さて、烏さん受付のミサの話だとミハイル君の事をご相談したいとありましたが?それは前ストーティオン伯爵夫妻の事かしら?確か奥様が調子が悪い状態でしたかしら。」


トーさんは肩を上げてお手上げのポーズをした。


「あの手順で思っていたがあんたの周りは、良い人間がそろっているんだな。その通りだ、前ストーティオン伯爵の奥方様を救ってほしい。母親を殺された、この子が命の危険なく安心して伯爵邸に戻るためにお願いします。」


そう言ってトーさんは頭を下げた。お兄ちゃんも私もトーさんを見て聖女様に頭を下げた。聖女様は頬に手を当てて小首をかしげながら言った


「あらあら、それは無理なお話だわ。」


聖女様の言葉を聞いて私たち3人は頭を上げて聖女様を見た。


「だって、ねー」


聖女様と一緒に来た人が二人、お兄ちゃんの座ってるソファーの横に座り込みフードを取った。そこには涙を流しながらこちらを見ている赤髪に白髪の混じった50代の男性と、灰色の髪に緑の瞳の女性が涙を流しながらお兄ちゃんを見据えていた。


二人を見た途端、お兄ちゃんは目から涙が溢れてポタポタと落ちていく。ポタポタトとめどなく溢れて涙に震える口を開けて声が出ないのか…口を開閉してようやく声がでた。小さな震える声


「お祖父様・お祖母様、僕が不甲斐ないばかりに…お母さまを……お守りできず………申し訳ありませんでした」


ようやく出た声で紡いだ言葉は懺悔の言葉だった。

10歳の子供に何が出来ただろうか。自分の命を狙われながら何が出来ただろう。

涙を流しながら自分のズボンをぎゅっと握って懺悔する姿は痛々しく今にも消えてしまいそうで、お兄ちゃんの手を、身体を、抱きしめてあげたくなった。でもトーさんに手を握られて首を振られた……


前伯爵は涙を流しながらお兄ちゃんをぎゅっと抱きしめ


「私たちこそ、あの男に追い出されるように邸を出てしまい、お前たちを守れず、すまなかった。」


「ラミラは死んでしまったのね…辛かったわね。ごめんなさい私が病気なんかにかかったせいで主人が目を離さなくてはならずこんな事に……」


前伯爵夫人も涙を流しながらお兄ちゃんを抱きしめている。二人に抱きしめられ涙を止められずお兄ちゃんは泣き続けた。その姿を見て、懺悔もあるだろうが、肉親に抱きしめられた安堵の涙もあるのだろうと私は思った。


「恩人の烏さんのお願いは叶えたいのはやまやまだけれど、叶えられないわ、だって夫人の病気はすでに治っていたんですもの。」


聖女様はトーさんにウィンクした。トーさんは聖女様をみて破顔した。


「あんた最高だな」

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