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安全第一異世界生活  作者: 笑田
旅と出会いと冒険と
40/217

39 ドキドキワクワク!!スパイな家族

分厚い塀に囲まれた外壁、立派な門。門には何人もの鎧を着た兵士が並び

鎧を着てない揃いの制服を着た人たちが入門書類・身分証のカードに目を通し次々と列を捌いていっている。

私たち一行は入門審査待ちの行列に並ぶと、じっとその様子を眺めていた。


「仕事ができる人ってすごいね」


テキパキと仕事をこなしている姿はまさに働く男。かっこいい。

女装中のお兄ちゃんは苦笑交じりに


「5歳の女の子の反応としては、いささか背伸びが過ぎるかな。」


「カナメの相手なら俺を倒さないと嫁にはやらん」


「トーさんそれは無茶が過ぎるけど、気持ちは分かる」


二人の会話を聞きながら…私は一生結婚できないかもと思ってしまった。


なんせ、トーさんA級冒険者で、ワイバーン乗れるし、ユニコーンも単独討伐しちゃうチートなトーさんを倒せる人っているのかな?狼さんとか?


審査が進み私たちの番。家族全員冒険者カードを出して仕事で来た事を伝え魔道具にカードをかざし入門する。職員さんから


「ようこそ王都へ」


との声かけに、お兄ちゃんと二人


「ありがとうございます」


とあいさつをすると案内の人や、鎧を着た兵士さんも手を振ってくれた。嬉しい。



ーーー王都ーーー


入門したらすぐに大きな噴水が中央に置かれた広場があり、その広場からいくつもの大きな通りが伸びていた。人も多く、馬車移動も楽に出来そうで良かった。そのまま大通りに入るのかと思ったけれど、トーさんは門のすぐ近くにある案内所に入り声をかけた。

案内所には、黒髪でストレートの髪にメガネをかけて口元に黒子のあるきれいな受付さんがにこやかに笑いかけてくれている。


「ようこそ王都に。観光ですか?お仕事ですか?」


「仕事で、王都に来たんだが、道を教えてほしい。」


トーさんが道が分からないとは珍しい。私は首をかしげながらウハハに頼めばわかるけど?っと馬車からお兄ちゃんと一緒にやり取りを眺めていると


「以前三上氏に頼まれていた宝石と一緒に烏が来たと。あと、10年物の白ワインが手に入ったので商談を。」


「ワインと宝石はどちらに?」


「手元に」


「ワインの銘柄を聞いても」


「ストーティオン産のミハイル」


ここまで聞いて私とお兄ちゃんは目を合わせた。


女性は目を光らせて指でトントントン机をたたきトーさんの後ろにある馬車を見る。覗いていた私と目が合ったかもしれない。女性は口角を上げ


「このまま、西通りにある宿屋。『音の里』に行って三上氏の面会まで待たせてもらうとお伝えください。使者がお部屋に伺うまでお待ちください」


「わかった有難う」


そう言って何かを受け取ったトーさんは御者台に乗り込んだ。すぐに出発した。私たちの馬車を案内所の受付のお姉さんが優しい顔で見ていた。


 キャビンからトーさんに問いかけようとすると、トーさんは人差し指を口に当て内緒のジェスチャー。私とお兄ちゃんは二人でトーさんの真似をして指を口に当てて笑い合った。


 西通りの宿屋 『音の里』は大きな宿屋で、街中にもかかわらずきちんと馬車止めも馬房もあり、ターちゃんも安心してお休みできる場所だった。

私とお兄ちゃんで良い子で休んでいてねと馬をなでる姿に、厩務員の男性はにこにこだ。


ターちゃんを預けてそのまま受付まで案内された私たち、トーさんがカウンターに木札を置いた。その木札は細工が細かく、上下に格子模様が入ってその中に鳥居と桜の模様が入り、中央に日本語で三神と彫ってあった。すごく日本らしいその札はカウンターに居る受付の男性に回収された。


「お部屋はどうされますか?」


「三上氏の面会まで待たせてもらう」


男性は一礼すると、「こちらへ」と案内を始めてくれた。最初は宿の中と言う趣から廊下に代わり、5分位歩いたところで行き止まりになった。木造の壁の一定の場所を案内の男性は2回たたくと壁が回転して開いた。


「そのまま中でお待ちください。」


と私たちに男性は向き直った。トーさんは頷くと私とお兄ちゃんの手をつなぎ一緒に中に入っていった。

 壁の中には応接室?と言わんばかりに10畳くらいの空間が広がっており

大きな2人掛けのソファーと1人掛けのソファーが2客、テーブルがあり、大きな本棚が壁一面に並んでいる。後ろを振り返るとそこは壁。…窓も扉もない、部屋の2人掛けのソファーにドカリとトーさんが座った。私もお兄ちゃんもおずおずとトーさんを真ん中にしてトーさんの横に座った。


「もう話しても良いぞ」


「なになに!!あのやり取り!!かっこいい!!」


「びっくりしました!!まるでお話でみた、スパイみたいでした!!」


私とお兄ちゃんはトーさんに嬉々として話し始めた。トーさんは思ったより熱のこもった私たちの言葉に


「おぉ…そんなに楽しかったか」


コクコクと頷く私たち。


「このやり取りはスパイ家族って本から来てる。このめんどくさいやり取りの根本が聖女様って噂があったんだが。」


トーさんは大きなため息を吐いた。

スパイ家族って!!!バリバリ某アニメと一緒のタイトルじゃないか!!!

あわわわわ…それを知っているってことは、生きていた時間軸が同じなのでは!!!海賊の王になるとか!!!アニメとかも好きなのでは!!孫のミカちゃんと気が合うかも!!思考に陥っていると


「カナメは読んだこと無いのスパイ家族?」


「カナメ?」


私を見てトーさんとお兄ちゃんが訝しみ始めたので、私は大きく深呼吸して、フーっと息を吐いてからトーさんに向き直って


「さっき言っていた、ミカミの下のお名前を教えてトーさん」


ガタン!!大きな音が響いた。びっくりして音の方向に振り向くと

設置されていた本棚がスライドして、白いフードを被った人が何人も入ってきた。その中央には黒髪の女性。女性はお辞儀をした後、


「初めまして、カナメさん。私 三神 彩音ですわ」


と満面の笑みで挨拶された。


「………私その名前知ってる。知ってるよ。三神 彩音、ミカミ アヤネ、アヤネ‥‥聖女アヤネ……たしか小説の主人公………」


私は目を見開いて目の前にいる聖女様を凝視した。その衣装、私知ってる。その服のコスプレ衣装ミカちゃんに頼まれて作ったもの。私は震えだした手をぎゅっと握って………っと言う事は…これ…いや此処はミカちゃんが大好きだった小説の世界?小説の世界と言う事は目の前の聖女様は……


「ミカちゃんが、ミカちゃんが言っていた聖女様だぁーーー!!」


私は立ち上がって大声で叫んでしまった。


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