27 トーさんの 安全ではない 冒険活動 後編
俺はワイバーンが下りられそうな広い空地を見つけそこに降りてもらった。
首を垂れるワイバーンの眉間の部分をよしよしとなでながらお礼を言う。思った以上に早く王都近くに着くことが出来た。
「よしよし、ずいぶんと無理して結界の近くまで飛んでくれたんだな。ありがとう。良かったらこれ食べてくれ」
お礼に以前狩っていたレッドホーンブルを闇の空間から出しワイバーンに差し出す
ワイバーンはそれを嬉しそうに咥え、そして空に帰っていった。
その姿をみて…あれ?ワイバーンにしては大きいような?翼の形が違うような?色も違う。
ワイバーンの特殊個体だったか?まあ良いか
さて王都まで20㎞って所か、それなら身体強化を使い走ったら数十分で着くか。
王都門はいつもの賑やかで長蛇の列ができているが、今日は列が短いな?
嫌に周りが緊張しているようだ?何かあったのか???
俺が列に並んで周りの様子をうかがっていると、商人風の前の男が振り返って俺に話しかけてきた。
「あんちゃん、さっきのあっちの方向にモンスターが出たんって知ってるか?わしうとうとしとって気づかんかったんじゃ」
「いや、私もこちらに向かって走っていたから気づけなかった。何が出たんだ?」
「翼竜が出たそうだ。聖女様の張った結界間際まで飛んできたらしく、兵士の皆もバタバタしてたんて。もう飛び去ったけん、門も開けてくれてよかったよ」
「ほーう、翼竜とは珍しい。そんな中寝れていたあんたは大物だな」
「どこでも寝れるのがおいらの強みだで、ハハハ」
なるほど、それで皆逃げて列が短いのか…翼竜、先ほどのワイバーンの事ではないよな?まあいいか。
翼竜のおかげで列はすぐに進み俺の番になる
「王都へは何をしに?」
「注文品の納品だ」
俺は商人ギルドカードを門の魔道具にかざしながら兵士に言った。魔道具は青く光る。それを兵士が確認し
「錬金術師か、犯罪歴なし問題ない。ようこそ王都へ」
兵士は軽く微笑んですぐ後ろの人物の入門チェックに移った。
俺はそのままの足で中央教会ではなく、門近くの街の案内所の受付の女に声をかけた。
「ようこそ王都に。観光ですか?お仕事ですか?」
「道が分からなくて、教えてくれ。
ニホンのミカミにシンカンを届けに行きたいんだ」
「ミカミ氏でございますね。少々お待ちください。お届け物に傷はおありで?」
ニコニコと張り付けていた笑顔を解き、鋭い眼差しで問い返してきた女
「残念なことに、大層状態が悪いが、破損などは無いから、納品に問題ない。きっとミカミの興味のある一冊だよ」
「どなたから手に入れられたのです」
「白狼がミカミに是非と」
「手配いたします。本はどちらに?」
「手元に」
「かしこまりました。では、王都冒険者ギルドにいき、受付5番の男にこの札をご提示ください。案内されますので資料室の2番にお入りください。部屋を間違わないように」
「わかった」
俺は女から木札を受け取りその足で冒険者ギルドに。
受付は基本4番までしかない。5番目は副ギルドマスターの座るカウンター
カウンターの上を5回ノックする。
すると男が顔を上げてこちらを見る。
「久しぶり、オーズ」
オーズ・アザリナ (伯爵家次男坊 29歳)
冒険者ギルド職員時代の後輩だ
「あれ?先輩、冒険者辞めたんじゃ?」
「冒険者はやめてねーよ。辞めたのはギルド職員だ」
そう言いながらオーズに木札を提示する
オーズは着いて来いと目くばせをしながら席を立った
「で、療養中じゃないんですか?」
軽口をたたきながら俺の前を歩く。
「子育て中だ。家族が二人出来てな」
「先輩が子育てなんて、似合わなすぎる」
「ほっとけ」
オーズは階段を通り過ぎ資料室の前で立ち止まった。
「こちらでお待ちください。」
俺は首を振る。
「2番だ」
オーズはフッと笑い、資料室を少し戻り、階段との間にある壁を5回ノックする
すると中から2回ノックが返ってきた
「シンカンの納品だ」と声を出すと
扉がないところが開き中に俺だけ誘導された。
オーズに軽く手を上げ中に入る。中は8畳程の部屋だろうかベットが1つ。ベットサイドにテーブル、ベットの横に椅子がおかれ、その椅子には小柄な黒髪の女が座っていた。その後ろにある衝立の後ろに護衛が数人。目線でそれだけ確認しておく。
「こんにちは、お届け物は私の知り合いかしら?」
「あんたが聖女?」
「はい。私 三上 彩音 と申します。貴方はどなた?」
女はスッと立ち上がるとへそのした辺りで手を重ね深々と腰を折った。
貴族がする礼とは違う礼を俺にして見せた。
カナメの礼と一緒だ。
「お辞儀だ」
俺はボソリと言葉をはするとミカミはあら?と首をかしげた。
「お辞儀さん?変わったお名前ね?」
「ちがう…すまない、娘がその礼を『お辞儀』と言っていたのでな」
俺は咳ばらいをしつつ背筋をのばした
「俺は冒険者の烏、今回白狼に頼まれてエドモンドを連れてきた。ベッドの上に出しても良いか?」
「どうぞ」
何か俺に聞きたそうにしている聖女から目をそらしベッドの上にエドモンドが現れるように慎重に、闇から出していった。
部屋には小さなランプがいくつもついているせいか
明るい場所に出たエドモンドは、まぶしそうに目を細め、聖女様を見て微笑んだ。
「ごめんねアヤネ、へまをして、こんな事になってしまって」
「お馬鹿な子。いつも頼りなさいって言っているでしょう。男の子だからって無理をするからこんなことになるのよ」
「耳が痛いよでも…27歳になって子供扱いは辛い」
まるで姉弟のように話す二人。
友人とは本当だったんだ、しかし俺はエドモンドの足が気になってしまい、声をはさんだ
「悪いが、喋るよりも何より足を見てやってくれ。普通ではもう治らない。あんた頼みなんだ」
エドモンドは俺の言葉を聞いて嬉しそうに聖女に話しかける
「アヤネ、烏さん良い人だろ。俺の勇者様だよ」
「フフフ、優しい方ね。エドモンドを心配してくださってありがとう。大丈夫。私、光魔法得意なの。絶対治すわ!!」
俺に、そう笑いかける聖女は、俺の知る人に似ている
聖女はエドモンドの足を見分し、鑑定をかけているのだろう
そして、ぶつぶつと‥‥つぶやき始めた。
『骨は主軸・神経は中枢から末端へ・血管で血を全身に送り・筋肉で全てを支え・脂肪で臓器を保護し・皮膚で身体を守る‥‥‥ 神の光 再生魔法!!』
すると聖女がかざした手のあたりから光が広がりゆっくりエドモンドの足からそのまま体を覆って最後は頭まで覆ってキラキラキラキラ
キラキラキラキラ……俺はこのキラキラを最近よく見ている
キラキラは徐々に収まり消えていった。
「エドモンド痛みは?」
聖女がエドモンドに声をかけると、エドモンドは痛くない事に気づき、涙ぐみながら笑った
「ありがとうアヤネ。もう痛くない。大丈夫」
その言葉を聞いた聖女は、エドモンドに抱きついた。
「心配したのよエド!!」
抱きつかれたエドモンドは目に涙を浮かべたまま、頬を染め 破顔した。
「心配かけてごめんねアヤネ」
俺はその光景を見て肩の荷を下ろした。もう大丈夫だ。
まだ、この後エドモンドにはすることがあるだろうが、それはまた別の話だ
「よかった。俺はこれで失礼する。
エドモンド完了報告のここにサインくれ」
俺がそう言って報告用紙を差し出す。エドモンドが受け取りサインをしていると、聖女様が声をかけてきた。
「烏さん。貴方の娘さんは前世の記憶がおありなの?」
俺はフルフルと首を横に振る
聖女様はそれを見て悲しそうに目を伏せた。
「そう…変なこと…」
「俺の娘は転移者だ」
聖女が言葉を紡いでいる途中に言葉をかぶせた。
聖女様は俺の言葉に大きく目を見開き
「転…移……者」
そう小さくつぶやく
俺はその言葉に頷いて返す。
聖女様はみるみる目に涙が浮かぶ
「娘の名前は「 カナメ 」
聖女様が日本の食事を、この世界に広めてくれていたおかげでお米が食えるといつも言っている。俺からもお礼を言いたい。ありがとう」
聖女様は、涙をこぼしながらフルフルと首を振りつつ手を握りしめている
おれは、エドモンドの方に視線をやると困った風に眉を八の字にしている。
これは…あれか…望郷の想いか……
「娘はまだ5歳でな、もう少し成長したら、今度は親子で王都に来る。その時、都合がつけば会ってやってくれ」
俺がそう言うとやっと聖女様は嬉しそうにコクコクと頷き
「ぜひともお待ちしております」
そう言って笑ってくれた。
もう少し大きくなれば大丈夫だろう
「そうだな、今回みたいにワイバーンに騎乗するのもカナメと一緒なら楽しいかもな。」
俺はエドモンドから完了報告書をもらって
「じゃあな」
っと部屋を出ていった。
さあ。帰るぞ。カナメとウハハのもとに
帰りも超特急で帰還するぞ!!
俺は決意を固め拳を握りしめた。
【エドモンド 視点】
「ねえエド、今朝ね翼竜が王都近郊まで来たって大騒ぎだったの。まさかねぇ...」
アヤネは困惑気味にこちらをみてくる
俺は肩を竦め首をフルフルとふる
「僕はずっと烏さんのスキルの中に居たので、何も観てないんだ」
俺の言葉に「そう」と、一言言って後ろに控える側付き達に、部屋の用意をさせるように指示を出す
まあ、十中八九 烏さんだと思うけど
でも次にワイバーンの目撃がどこかの街の近くで出たら…その付近に烏さん住んでるって可能性高いって事じゃないかな、フフフ
私の勇者様のする事だ。
悪いことじゃない。
内緒にしておこう。
そして僕も勇者様の愛娘に会ってみたいな。




