201話 子爵令嬢マリエルの黒歴史③
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目の前に居る叔父様事、コルドナギルドのギルド長。オーエン伯爵家三男のスパイク・オーエン叔父様は、私のお爺様の従弟に当たる…。同じ領内に暮らしているので朝練などで何度も顔を合わせている…おしゃべりなお爺さんだ…お爺さんって言うと怒るけど…
あぁ…お父様に知られずに、ペンダントの事収めたかったのに―――。
オーエン叔父様は私たち3人の座るソファの正面の椅子に座りこちらを凄い渋い顔で見てくる…
「マリエル、ジョス、オーブリーお前達には未成年の冒険者連れ去り未遂の嫌疑がかけられている。というか…嫌疑じゃねーよな。目撃者多すぎてフォローも出来ん」
「「「は???」」」
オーエン叔父様の言葉に私たちは絶句した。未成年の冒険者連れ去り未遂?え?なんで私たちが犯罪者みたいな嫌疑をかけられているの?
私たちの困惑した顔に叔父様は呆れた顔をして、大きく息を吐いて口を開いた。
「お前ら、考えてみろ。自分より背も体も大きな奴らが三人、無言で取り囲んでくる。腕を無理やり掴まれ、身動きが取れないまま引きずられていく。どこへ連れて行かれるのかも分からない――その先で何が待ってるか、想像してみろ」
オーエン叔父様の言葉に想像してみる…自分より大きくて強そうな3人に取り囲まれる…頭からサーっと血の気が引くのが分かった…横でジョスが「あ…ヤベ」っと言葉を漏らした。オーブリーは俯き膝の上に拳を握っていた…
「お前らがしたことはそういう事なんだよ」
オーエン叔父様は頭をガシガシ掻きながら大きなため息を吐いた。その時ジョスが反論するように口を開いた。
「でも彼は孤児じゃないですか!俺たちは貴族だ。貴族相手にそんな大ごとになるとか――」
ジョスの言葉に私はそれもそうじゃないかなと思い、オーエン叔父様の顔を見ると、明らかに不快そうな顔をして、ジョスを見た。
私は叔父様のこんな顔見た事が無い…明らかに先ほどとは部屋の空気が変わった。険呑な雰囲気に叔父様が口を開きかけたその時、私の右隣に座るオーブリーが立ち上がり、怒鳴った。
「ジョス、違う! 彼は僕らと同じだ!」
「は? 何が同じなんだよ! 親に捨てられた孤児ってことだろ!」
ジョスも勢いよく立ち上がり、睨み返す。
いつも温和なオーブリーがここまで感情を露わにするなんて、初めて見る。
「孤児だからって、勝手に“捨てられた”なんて決めつけるな!」
その叫びと同時に、オーブリーの拳がジョスの頬を弾いた。
鈍い音が響き、ジョスはソファの背に手をつき、歯を食いしばりながら体を支える。
「……てめぇ!」
次の瞬間、ジョスの右ストレートが炸裂した。
オーブリーの顔が横に弾かれ、足が一歩、床を滑る。殴られた瞳に炎が宿り、もう完全に理性が切れていた。
――ダメだ、このままじゃ取っ組み合いになる!
慌てて私は二人の間に飛び込んだ。
「やめなさいってば! 二人とも落ち着いて――」
言い切る前に、左右から同時に拳が飛んできた。
視界が白くはじけ、衝撃が頭蓋に響き渡る。
次の瞬間、私はその場に崩れ落ち、意識を手放した。
***
近くで誰かが話している…重々しく威厳のある声…
「なにより…お前たちがやらかした最大の過ちは身分を笠に着た横暴な態度だ」
身分?何…横暴……そう思い目を開けると見知らぬ天井があった…ここどこだっけ…そう思いながら顔を声がする方向に向けた、視界に入ってきたのはお父様。
お父様は頬を腫らした状態で床に直接座っていた。
「お…お父様…」
私の声に室内に居る皆の視線が集まった。お父様の横にはジョスの、その横にはオーブリーの父親たちが座っていた…そして部屋の中に領主様まで居る……ただ…領主様の横のソファーに座る男性に視線を向けた途端、背筋がざわついた…
真っ黒い服、真っ黒い髪、メガネのレンズまで黒い男は、お父様みたいに体格がいいわけでもない、細い体躯。なのにあふれ出る威圧感はここに居る誰よりも大きくて―――
何?私は目を見開いて体を起こし、寝ている場所から後ずさりしてすぐにソファーの背もたれに身体が当たってこれ以上動けない事に恐怖した。
怖い…怖いあの人―――怖い!
恐怖で頬が引きつると、頬からも痛みがやってきてとっさに頬に手をやる…何か頬に貼られている感触がして…そういえば私は殴られて――ようやくなぜ気を失っていたのか…現状を思い出してハッとする…
怖がっている場合じゃない!二人は?
室内を見回してお父様たちの後ろで同じように床に座らされている姿を見て安堵した。
「マリエル……」
名前を呼ばれ顔を上げるとお父様の悲しげな顔が目に入った。わ…私がお父様にそんな顔をさせてしまったの…しかもそんな床に座るなんて屈辱を私がさせてしまった?
「あぁやっと起きたんだね。君が原因で起きた事だね。君の口から何かいいたいことはあるかい?」
ショックを受けている私に話しかけてきたのは領主さまの隣に居た怖い人…この人、口は笑ってるけれど、目は全く笑っていない―――やっぱり…怖い…。
私は恐怖で何も言えずにいると、黒い男の人は目を細めた。
 




