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安全第一異世界生活  作者: 笑田
コルドナ辺境伯での日々
182/200

181話 兆候

ウハハは窓を見た。まだ空には太陽の姿が見えない薄暗い早朝、ジャルの森の騒々しさに目を覚ました。騒がしい…魔物の発する魔力が多く動いている。魔物達がいつもより街に近いとウハハは感じた。


「ウハハ…」


そう一声零すと、カナメのベットからそっと抜け出し、ぴょんぴょん跳ねて部屋を出て行った。

クロトは、ジャルの森を見える家の屋根の上に立ち、森の方向を凝視しながら言う


「これは、あと数日で魔物が溢れるか…」


クロトがそうこぼすと、クロトに肩車をされた黒龍のコクトが、ハワワを愛でながら事もなげに言う。


「我が対応しようか?」


クロトは首を横に振り笑いながら答えた。


「いや、この辺境の者達はスタンピードを楽しめる奴が多くてな。それには及ばないよ。ありがとなコー」


「何と?そうか、スタンピードのたびに人間は魔物に蹂躙されるだけの存在と思って居ったが、人間は強くなったのだな」


「ははは、そうだね。人間は強くて逞しいよ」


二人はジャルの森を見ながらこれから起こるスタンピードを恐れる事も無く笑いながら騒がしくなっている森を見守っていた。


***


私が起きた時、リビングのテーブルの上に置手紙が置いてあった。

『冒険者ギルドに報告があるので出かけてくる。少ししたら戻るから朝ごはんよろしく クロト』

朝から冒険者ギルドに行くなんて珍しい。そう思いながらも、朝食の支度をしようと米を研ぎ、鍋に水を入れて今日は魔道コンロで米を多めに炊くことにした。たぶんこんな早くにトーさんが冒険者ギルド行くって事は、今日は忙しくなるだろうから、簡単にお昼は食べられるものが良いよね、そう決めて卵焼きを作り始めた。

キッチンから家の中に卵の焼ける食欲をそそる匂いが広まる頃に玄関が開いてトーさんが帰って来た。


「ただいま~、良いにおいだな。お腹減った」


帰宅後すぐに匂いにやられたトーさんからは、元気な言葉が紡ぐがれ、私は笑ってしまう。コーくんやウハハ、ノンナさんはもうご飯を終わらせ工房の作業の手伝いをしてくれている。


テーブルに腰掛けるトーさんにご飯を用意して持っていく。だし巻き卵が好きなトーさんが嬉しそうに笑う。今朝のご飯メニューは

●白米

●キャベツとジャガイモの味噌汁

●だし巻き卵

●きゅうりの朝漬け

●カレー風味のチキンステーキ


「豪勢だな?なんかあるのか?」


「今日忙しくなると思って、朝からお肉焼いちゃった。しっかり食べてもらおうと思って。違った?」


トーさんは、目を丸くして


「え?なんで分かったんだ?」


とても不思議そうに私に言う。私はトーさんに笑いながら


「いやいや朝から急に冒険者ギルド行っていたら、何かあったなって思うでしょ?」


そんな私の言葉に、トーさんはニンマリ笑うと、ご飯食べたら詳しく言うと言ってもぐもぐご飯を堪能し始めた。食べているトーさんの頭の上のハワワを回収して、ハワワ用のご飯も用意。


「好き嫌いなくしっかり食べるんだよ」っと話しかけると「ハワワ」っとすぐにだし巻き卵にダイブしていた。


そんな二人を眺めながら、私はキッチンでおにぎりを握る。しっかり塩を効かせたごはんの中に、甘く味付けした卵焼きを入れ込んで握ったり、カレー風味のお肉を小さく切ってそれを入れ込んだおにぎり、枝豆と塩昆布を混ぜ込んで作ったおにぎり。それをひとつづつ海苔で巻いて、保存用の紙に包んで、何が入っているか書いていく。時間停止のアイテムバックを用意してトーさんに渡す。


「30個ほどおにぎり作ってるから、お昼に皆で食べて。私も何か手伝う事ある?」


「ノンナのポーション作りの手伝いをしてやってくれ。しばらく森に入れなくなるから」


「あら、今ある薬草じゃ、足りないかな?採取してこようか?」


「いや、薬草は冒険者ギルドから大量に仕入れているから作業頼む」


トーさんから薬草が入ったマジックバックを受け取ると、ノンナさんの居る工房に行こうとしたら、


「数日後にスタンピードが起こる。カナメも町外に出る冒険者だ。後方支援だとおもうが、招集されるから覚悟しておいてくれ」


トーさんは真剣な顔で私に言ってきた。


「あぁ、スタンピードでバタバタしていたんだ。そっか。わかった」


私がトーさんの言葉に頷きながら笑顔で返事をすると、トーさんは困ったような顔をする。


「怖くはないのか?」


「んーむしろ嬉しいかな。旅の時は私は蚊帳の外だったけど、今度は私でも何か役に立てるみたいだからね」


そう笑顔で返事をして、工房のノンナさんの手伝いに向かった。向かいながら私は今度は役に立つように頑張るぞ!!そう拳を握りしめ決意した。


そんな私が去ったリビングでは、頭をガシガシ掻きながらトーさんが一人


「敵わないな」


なんて呟いて笑っていた事を、実は聞き耳スキルで聞こえたなんて、トーさんは知らない。

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