177話 薬師ノンナのポーションの活用術
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日本で言う猛暑の季節。
この大陸の国最南端に位置するオーラシアン王国の一番南にあるコルドナ辺境伯領は、暑い時期になると毎年何人もの冒険者や騎士などが倒れ帰らぬ人となる。暑くてもモンスターは出るし、盗賊も、山賊も待ってはくれない。門の兵士たちも変わらず鎧を付けて警備をしている。入街をしていた男が一人ふらふらとしているのを見かけ、兵士が駆け寄ってきて男の後ろに並んでいたものと一緒に、ふらついた男を木陰に運んだ。
「いや~辺境は熱くってこっちバテテしまってね…くらくらするよ」
「あんた東から来たって言っていたね。それはこっちの暑さはなかなか堪えるだろう」
一緒に男についてきた者がかいがいしく世話を焼いている。兵士が倒れそうになった冒険者風の男に
「外せる装備は外して身体を冷やさないといけない。これ飲みな」
渡された飲み物を男は一口飲むと、
「うまいですね。レモンでさっぱりしていて飲みやすい」
「そうだろ。そうだろ。若い薬師様が少し前に開発した水分補給ポーションなんだとさ。これ飲みだしてから、仕事中に倒れる奴が激減したんだよ。ありがたいぜ」
「凄い薬師様も居たもんだな」
***
バンと扉が開くとチビッ子少年のコーくんがお腹にマジックバックを抱きかかえて準備万端にお迎えに来た。
「ノンナ!薬師ギルドに納品行くぞ!!」
「コーくん待って下さい!あとこの作業だけ」
「早くだぞ!おやつの時間に間に合わなくなるぞ!!」
「それは行けません!」
「今日はカナメがドーナツ作ってくれたんだぞ!」
「!!!終わりました。さぁコーくん行きましょう!師匠納品コーくんと行ってきます」
バタバタと扉から駆け出す二人を、笑いながら見送るトーさん。作業台の器具を片付け流しに持っていく。そんなトーさんを見ながらかけていく二人を窓越しに見送りながら言う。
「コーくんがボディーガードしてくれて良かったね。あれからトラブルが無くなって安心した」
私の言葉に、トーさんは頷くと目を細め私の頭をわしゃわしゃなでた。
「そうだな。カナメ休憩しよう」
「そうだね」
あれからノンナさんを守るためもあり、メンバーがトーさんとノンナさん私でポーションやトーさんの薬を下ろす商会を立ち上げた。なぜ守るって、あまりにも有用だったから。
凝縮タイプのポーション。日本にも鍋とかのだしや、珈琲や紅茶の凝縮系の商品あったよね。基本は好みの水分いれて使うという便利使用。しかもどうやらノンナさんの魔力が作用して甘味が付くみたいで、魔力を通しただしを作ってもらったら、甘いだしが出来て砂糖要らずとトーさんと感心してしまった。そうノンナさんじゃないと作れないという希少性が凄いのだ。
ノンナさんは貴族と言えど男爵家。高位貴族に圧を掛けられると搾取されるかもと危惧して、冒険者ギルド・錬金ギルド・お兄ちゃんの家の伯爵家の後ろ盾があるトーさんが商会を立ち上げ庇護下に置いた状態。ただ、あまりにも希少性が高いので、濃縮タイプを誰もが作れないかを今開発中。
そんな感じで、毎年この暑さで体調を崩す者が多かったのが、水分補給ポーション販売後、外の仕事に当たる人が買いやすいように、門の近くや各ギルド、マーケットでも販売を始め、暑さで倒れる民は激減した。
「なんかごめんね。助手が欲しかったのに、商会とか…仕事増やしちゃって…トーさんの負担増えたんじゃない?」
冷たい珈琲をグラスに入れてトーさんの前に出しながら言うと、またしても頭をわしゃわしゃされた。
「カナメは誰かの心配ばかりだな。商会はお前の方が負担多くなってるだろう?」
私の顔を覗きながら困った顔で笑うトーさんに、首を横に振って否定する。
「卸は商業ギルドにしかしてないし、そんな負担でもないよ。配達は基本二人が行ってくれるし。夏は暑くて冒険者活動もしんどいしね。なので暑い時期に濃縮ポーションを他の薬師が作れるように開発しないとだね」
ニッコリ笑ってそう返事をすると、今度は髪を整える様に優しくなでられた。父親の記憶何て、覚えても無いんだけど…大きな手で頭を撫でられるのはなんかくすぐったくて…嬉しいもんなんだなって胸の奥がホンワカした感じがしてくる。トーさんがお父さんになってから、いっぱい甘やかされてるなって思うよホント。
私52歳だったのにな…今頃甘えられる嬉しさに気づくなんて恥ずかしいなぁ
いいよ。私もその分トーさんを大事にして甘やかそう
「珈琲のお供にドーナツトーさんも食べる?」
「コーたちに内緒で先に食べようか」
顔を見合わせて私たちは笑った。