173話 番外編 曽根さんと山田君の異世界生活 ③
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この日の出会いからアタシたちはこの国に滞在することを決めた。意外にも聖女様は朝の祈りの時間以外教会に滞在していない。大体は音の里の宿泊施設の秘密の家が主になる。アタシ達は宿泊施設の長期滞在用の部屋に山田と二人で暮らすことになった。嬉しい同棲。
アタシは三神さんと一緒に、日々のお仕事の補助員として王宮にも行った。まだ十分働けるのでは?って思う王様が次代に譲るよう今引継ぎをしている。そんな王宮はあわただしくて賑やかだ。
三神さんに聞くに、少し前まで王子様が3人いたのに上の二人は問題行動が多く除籍や辺境に追いやられたらしい。その時一番力が弱く虐げられていた王子をある冒険者親子が助け、その王子の心の支えを側に戻し、そして王座に座れるように暗躍したらしい…何それ?王子様にとっては、まさしくヒーローじゃないか…それを一介の冒険者が?凄いな…
「その冒険者親子の娘さんが転移者なのよ」
目が点になった…え?転移者?召喚者じゃなくて?私が驚いている姿が面白かったのか三神さんはクスクス笑い王宮の廊下を歩き始めた。
「半年くらい前に日本で死んで、こちらに転移させたって教えていただいたの。どうやら父親の方は転生者らしいのだけれど、記憶は戻ってないそうよ。山田君みたいに産まれた時から意識のある子もいるみたいだけれど、死ぬまで思い出すことが無い子も居るみたい。この世界に来て同郷の方の痕跡はあれど、お話することが出来たのはあなた達で3人目。だからとっても嬉しいわ」
痕跡?それってイルグリット王国の…
「隣国イルグリット王国で食べたお好み焼きですか?」
「あらミホちゃんも食べたのね。お好み焼き美味しいわよね」
「あたし広島風のが好きですけど、美味しかったです」
「こっちだとそこまではね、ソースが出来ていた事だけでも奇跡だと思ったもの」
それ!ホントそれ!!アタシも思った。イルグリット王国にいた人メッチャ食にこだわりがあったのか、美味しいソース作ってくれててマジ神様って感じ。アタシは頭がもげるのではと思うほど激しく縦に振った。それをみて三神さんはクスクス笑う。
「私は小豆を見つけてね、おはぎや羊羹、後はコメの流通に力を入れたのよ。カナメちゃんにとても感謝されて嬉しかったの」
「エドさんも言ってましたが、カナメちゃんって誰ですか?」
「さっき言ってた冒険者親子の、娘のカナメちゃん。5歳の少女よ」
三神さんはカナメと言う少女の話をよくする。とても楽しそうに、聞くたびにその娘ちゃんに会ってみたくなる。そう言えば…
「そう言えば、フリムストに残っている友人がイルグリット王国で日本人に会ったって言っていたな…冒険者でしっかりした少女…」
アタシの言葉を聞いて聖女様はクスクス笑う。
「えぇ、少し前にカナメちゃんはイルグリットのお祭りに行くって出かけて行ったから、ご友人が会ったのはカナメちゃん親子でしょうね」
えぇぇーー世間て狭いなぁ!!知らない間に紬木とも知り合いなんだ…アタシがびっくりしていると、聖女様がそう言えば、
「国家間でフリムストとイルグリットって揉めていらしたじゃない、アレどうも解決して、和平協定結ぶ運びとなったみたいよ。なんでも国王が行方不明になって、新たに王になった王子様が平和的な方らしくてトントン拍子に話が決まったって言っていたわ」
クスクス笑いながら三神さんの顔を見て…まさかと思う
「その話の裏には…」
「また冒険者親子が動いたわね。連絡がきたもの。新しい家族が出来たから帰国したら会いに来てくれるって」
「ぉおお!!会える?」
「それまでミホちゃん達が居てくれるのなら」
クスクス言いながら扉前の騎士に声を掛けノックをする。すると中から「入ってください」と声がかかり三神さんは扉を開けてお辞儀をした
「お久しぶりです、ルクレチア殿下。お加減は如何ですか?」
「聖女様お久しぶりです。少し最近だるさが出ますね。暑さにやられたのですかね…」
そう笑い、顔色が悪い青年が答える。三神さんは楚々と青年の側によると、その手を取り魔力をすごくゆっくり体内に流している…そうして小さな声で「ヒール」を唱える。青年の顔色を見てもう一度魔力を流し顔を顰めた。
『我が魔力を糧としこの者の中を流れる害あるものを排除せよエリクシア』
そう呟いた途端、青年の身体がキラキラ光り、しばらくすると収まった。そして青年は目をぱちくり開き、
「あ、怠いのが取れた。頭の重さも取れました」
そう笑顔の青年とは裏腹に、三神さんは眉を顰め青年の側に控える男性に声を掛けた
「ニコライ殿、急ぎ調べてください。毒です」
その言葉を聞いた途端この部屋の空気が凍った。うぇ!マジかマジで毒殺とか陰謀とかそんな感じか、異世界こわ!!アタシが震えあがっていると、ニコライ殿と呼ばれた男性は、片眉を上げ、
「ほー、まだ殿下を狙う残党が居たと言う事でしょうかね。急ぎ調べます」
「殿下は安全性の高い食べ物を、王城が無理ならこちらで手配いたしますけれど?」
「食事なら私が作りますよ」
ニコライ殿と呼ばれた男性はニッコリ笑った。
「あら、ニコライ殿は料理をされるのですか?」
「王宮料理は無理ですが、平民の食べるモノなら家庭料理程度は。ミヤノマエ家は料理男子はモテるからと。初代様からのその…教えがありまして…その幼少のころから父上にしっかり教えられました…」
「ミヤノマエ家ってまるで日本の苗字みたい」
アタシがぽそっと零した言葉に皆がこちらを見て、三神さんを見る。
「フフフ、こちらカナメちゃんや私と同じ出身の聖女候補の曽根ミホさんです。しばらくは私の元で修行させますのでお顔を合わせることが多いかもしれないです。旦那様がおられますので、余計なちょっかいはご遠慮くださいね」
三神さんの言葉にアタシは顔を真っ赤にながら照れて、ついつい
「えへへ、三神さん旦那とか気が早いー。いや山田の嫁はアタシ一択だけど。譲らないけど。でも恥ずかしいけどうれしぃー」
王子様の執務室で盛大に惚気てしまったのはアタシの数多い黒歴史の一つである。
部屋に居る皆は、生暖かい目で惚気るアタシを見ていたと追記しておこう。




