4 【リフレッシュ】
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カリカリと空気をひずませる音は白い息をたどって小さな反響となった。水面元は事件の違和感について頭に離れず現時刻、深夜2時のマンションパーキングで外の空気を吸いリフレッシュしている。
一人で一服していたところで案山子から電話がかかってきた。
「こんばんわ、珍しくない?電話かけてくるの。」
「俺も最初は仕事の後にのみ誘ってたときは仲良くなりたかったんですよ。でも水面元さんいつも断るじゃないですか。あ、そういうところもいいと思うんですよ!」
よそよそしくも親しみの嫌みを含んだ言葉がでてきた。
「で、今日の事件のこと?」
「そうですね、」
「じゃなかったらぶっ飛ばすわよ…」
少し考えた後で水面元は話を切り出した。
「今日訪ねた現場、あれは普通じゃなかった。いや、とっても普通なんだけど、普通すぎて逆に違和感があった。そう思わない?」
電話越しの案山子は少し間を置いてそうだねと相づちを打った。こんなときにも全体を見ながら考えていたのだろう。
「だとしても」
案山子は付け加えた。
「普通すぎるからといってそれが完全な普通であること、不自然すぎるほど普通であったとしても、ただ単に普通に僕らが迷い込んでしまっただけかもしれない。その可能性は頭に入れておこう、水面元さん」
たしかに。
それは超自然なほど自然だった、普通だった。どの現場にも事件の関係する何らかの後がある、だからこそ失踪のめどが立っているのもうなずける。なぜかというと、事件が起きた場合先ほどいったように何らかの軌跡が残る。ストレスであれ外傷であれ。しかし忽然と気まぐれでさまよい外出するのならただそれだけの時間から部屋は生活に終止符が打たれる。普通の匂いを残したまま。
「もし気まぐれの失踪だったとしても」
すこし電話を持つ手が疲れたのでスピーカーに変えた。案山子もそれにきづいたのか口調が少し真面目になった。
「それに至るまでの何らかの苦悩の跡が見られるはずだ。それがとんと見つからないのも気になる。だからこそ俺も思うんですよ、普通すぎるって。」
こんなところで止まっていてもなんなので。やりきるまでは落ち着かない水面元であった。
とてもではないが夜も眠れるようなタイプではないのだ。案山子は反対で夜は眠れる(寝るように準備や習慣を組んでいる。そういうところはちゃんとしている。さすがは長期マラソン型)。勤務時間をきっかり作業を始めて一秒単位でおわる。そんなしっかり