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女帝の傀儡、傀儡の女帝 14



「どうして!? あの時(・・・)お前には、わたくしが呪いをかけたのに!! だから絶対に女神の力など持てない筈!! 呪いが解けていないのは、お前のその黒い髪と目から見ても明らかなのに、一体どうやって……!?」


「!? 髪!? 目だと……? どういうことだ? つまり貴女はリリスの髪と目を黒に変化したことに関わっているのか……? リリスの言う通り、神でないと言うのなら、貴様は一体何者だ!!!」


「う……あ……わたくしは……」



 わたしを震えた目で見ていた生徒会長は、兄様に鋭く問い詰められて視線をウロウロと彷徨わせる。



「わたくし……わたくしは……」



 ついにはがくりと崩れ落ち、地面に膝をついて頭を抱えんで生徒会長は絶叫した。



「違う!! 違う違う違う!!! わたくしは、わたくしこそが女神リリス!!!! 夜の魔女なんかじゃない!!!!!」


「!!!??」



 その叫びと共に禍々しい魔力が生徒会長から一気に放出され、温室中が眩い光で包まれる。



「……っ!!」


「目が……!」



 あまりの眩しさに腕で目を覆う。すると耳に、生徒会長と思しき心の声が頭の中へと流れ込んできた。



『使い勝手がよかったけれど、この体では(・・・・・)悪心が足りない。もう要らない。早く……早く次の依り代を探さなければ……。ああそうだ、あのソバカスの子ども。あれは実にいい依り代になりそうだった……! あれを依り代にしよう! 居場所にはわたしの愛しい天使も一緒にいる! ああ、早く行かなければ』


「!!?」



 ……ソバカス!? 天使!!?

 聞こえた言葉に、わたしの心臓の鼓動が一気に早鐘をうつ。

 まさかルナはアダムと一緒にいるの!?


 声は遠くへと過ぎ去り、混乱する頭でとにかく今の声の主を追いかけなければと考える。

 しかし次の瞬間、



「グガアアァァァァァァァァアア!!!!!!」



 聞いたこともないような、(おぞ)ましい何かの咆哮が温室の外から響き渡った。



「ノーブレ嬢! レオナルドも!」



 兄様が今の不気味な鳴き声を警戒しながら、完全に意識を失い地面にぱったりと倒れている生徒会長とレオナルドのもとへ駆け寄る。

 どうやら〝女神リリス〟を自称する声の主が去った為、魔力となっていたレオナルドも無事解放されたようだ。

 兄様は生徒会長の首筋に指をあてて、緊張で強張った表情をホッと緩めた。



「……脈はあるな。どうやら気を失っているだけのようだ。レオナルドの方も、消耗してはいるが恐らく無事だろう」


「そっか、よかった。……でも」



 ――まだ、終わっていない。


 最初は生徒会長がこの事態を引き起こしたと思っていたけど、実際にはその生徒会長すらも操っていた人物がいた。

 わたしに神託を下し、呪いをかけ、永きに渡って女神リリスを完全に根絶やしにしようとした人物。

 その人物が今度はアダムとルナを狙っている。追わなければ。



「……兄様、わたし……」


「……ああ、分かっている。ノーブレ嬢たちのことは私に任せなさい」


「!」



 まだ何も言っていないのに頷く兄様に、わたしは驚き目を見開く。

 すると兄様はそんなわたしを見て、クスリと笑った。



「私にはなんとなくしか分からないが……。しかしあのノーブレ嬢に憑りついていた人物が到底女神とは言えない存在であることは私にも分かる。そしてそんな存在を止められるのはリリス――お前しか居ないのだということも。なにせ奴は何故かお前を酷く恐れていた。お前は先を急ぎなさい。だがくれぐれも無理はするなよ」


「兄様……、うん! ありがとう!!」



 全部が終わったら、ちゃんと兄様にわたしのこと、女神リリスのこと、ちゃんと伝えよう。

 そう心に誓って、わたしは一気に駆け出す。


 待ってて、アダム! ルナ……!


 先ほどの人物の言動に危機感を覚えただけじゃない。今までのおかしかったルナとアダムの様子が一気に思い出されて、わたしの胸騒ぎは止まらなかった。




=女帝の傀儡、傀儡の女帝・了=



次回『大罪を犯し獣はその手に囚われる』

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