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体育祭 元落ちこぼれvs女帝 12



 ――昼休憩後。午後の競技が粗方終わると、何やらフィールドにデカいステージが用意された。

 取り付けられたステージ看板には、〝元落ちこぼれvs女帝MVP争奪戦!!〟と書かれている。



『さぁー!! 今年の体育祭も後はメインイベントを残すのみ!! 皆さんいよいよです!! いよいよ今年のMVPが決まります!!!!』


「わあああああああああああ!!!!」



 そのステージ上で実況者が熱の篭った実況をするやいなや、それに煽られた観客席に座る生徒達の歓声が巻き起こった。

 更に歓声の間合いを見計らって実況は続く、



『まずはMVP争奪戦のルール説明から始めましょう! ルールは簡単、5000メートル……つまりトラック12周半を召喚士と召喚獣が互いにリレーして、先にゴールした方が栄えある今年のMVPに輝きます!!』



 ちなみにリレーの配分は、最初の2周半が召喚士で、次の4周は召喚獣だそうだ。そしてラスト6周は召喚士と召喚獣が一緒に走ってゴールということらしい。

 まだ実況は続いているが、いよいよ出番が近づいてきて、実況を聞くどころじゃないくらい心臓がバクバクしている。



「――リリス、緊張してる?」



 実況者の後ろ姿をステージ裏から覗いていると、わたしの隣にいるルナがそう聞いてきた。

 どうやらわたしが強張った顔をしているのに目ざとく気づいたらしい。



「うん、まぁね……。こんな大勢の前に立つことって、そうそうないし……」



 素直に頷いて不安を口にすれば、そっとルナに右手を取られる。



「大丈夫だよ。リリスにはいつだって僕が側にいるんだから」



 そう言ってわたしの右手を大事に包み込むようして、しっかりとルナの左手へと繋がれる。すると繋がった指先からじんわりと温かくなり、不思議と緊張で強張っていた体が柔らかくほぐれていく心地がした。



『それではお待ちかねの選手の紹介だぁ!! まずは挑戦者、リリス・アリスタルフと召喚獣ルナの入場ですっっ!!!!』


「――さぁ、行こうか」



 ルナにこちらを見て優しく微笑む。

 それにわたしは繋いだ手をぎゅっと握り返して、頷いて答えた。



「うん!!」


「わあああああああああああ!!!!」


「――――っ!」



 ステージ裏から実況者の横まで歩いていくと、歓声がより間近に感じてビリビリと体が痺れるような感覚がする。

 落ち着いていた緊張がまたぶり返しそうになるが、ぐっと体に力を入れ堪えて、正面を向いて〝相手〟を待つ。



『そして、そして――。皆様大変お待たせしました!!! とうとう現MVPが登場です!!! 生徒会長エリザベッタ・ノーブレ様とその召喚獣レオナルドだぁーーーーっ!!!!!』


「わああああエリザベッタ様ーーーー!!!!」


「頑張ってくださいエリザベッタ様ーーーー!!!」


「元落ちこぼれなんかにエリザベッタ様は絶対負けません!! 今年のMVPもエリザベッタ様で決まりです!!!」



 生徒会長の名前が呼ばれた途端、今までの比じゃないくらいの爆音のような大歓声が競技場中に響き渡った。

 その歓声に応えるように優雅に手を振ってわたし達とは反対側のステージ裏から現れたのは、学園指定のジャージではなく、スマートなスポーツウェアを身にまとった女帝――エリザベッタ・ノーブレ。そして彼女に寄り添うようにして悠然と歩くのは、巨大な銀色に輝く有翼の獅子――レオナルドだ。



『いや~さすがはエリザベッタ様! 凄まじい人気です!! ではではお二方、中央で握手をお願いいたします!』


「あ、はい」



 あまりの観客席の熱狂ぶりに気圧され固まっていたわたしはハッとして、ステージ中央へと歩み出る。同じく生徒会長もスッとわたしの目の前に歩み出て、更にその横にはレオナルドも何故かついて来ていた。



「…………?」



 レオナルドを見るのはお茶会以来だが、やはりとても大きい。フサフサの銀色の毛並みはすこぶる柔らかそうで、こんな時でなければそのもふもふなお腹にダイブしたいくらいだ。

 それに前は目を閉じていたので気がつかなかったが、瞳は美しいルビーのような紅い色をしている。その吸い込まれそうな深い紅は、見ているとなんだか不思議な気持ちにさせられた。



「アリスタルフさん、お互い全力を尽くしましょうね」


「……は、はいっ!」



 ついぼぅと魅入っていると、生徒会長にニッコリと微笑まれて右手を差し出されたので、わたしも慌てて右手を出して握手する。



「こ、こちらこそよろしくお願いします」


『なんと素晴らしく美しい光景でしょう!! 皆様盛大な拍手をお願いします!! お二方はスタート位置へどうぞ!!』



 握手を交わすと実況の音頭で一斉に拍手が鳴り響き、それに送り出されるようにして、わたし達はリレーのスタート位置へと移動したのだ。



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