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体育祭 元落ちこぼれvs女帝 8



 真っ暗な世界で、誰かがわたしを呼んでいる。



「……ス」



 誰?



「…………リス」



 誰なの?



『――――僕だよ』



 そう言って返事をしたのは、純白の髪から黒光りした二本の角が生え、手に真っ黒く鋭い爪が生えている一人の少年。


 顔はいつもわたしの隣にいる少年を彷彿とさせるが、しかし目の前の少年は神々しい彼とは似ても似つかない禍々しい雰囲気をしている。

 それになにより、彼の一番の特徴である背中に生えた純白の羽根が、目の前の少年のは黒く変色し、ところどころ残った白い部分がまだらのようになっているのだ。



 ……あなたは誰?



『分からないの? 僕はルナだよ』



 違う! ルナの訳ない! 



『酷いなぁ、リリスは。僕の言うことを否定するんだ?』



 だってルナはもっと精錬としていて! すごく綺麗で……!



『……お前のせいでこんな姿になったのに』



 え?



『夜の魔女、リリス!! お前さえいなければ!!』



 ――――っ!?



「リリス!!!!」



 突然耳元で名前を叫ばれて、わたしはパッと目を開いた。すると視界にどアップでアダムの顔と、その肩に乗ったピグくんが映る。



「はぁ、よかった……。全然目ぇ覚まさねぇから、マジで焦った……」


「アダム……? あれ、わたしさっき何を……?」



 アダムの安堵した声を聞いて、ようやくわたしの頭が覚醒し始める。



「そうだわたし達、あの空洞の床が抜けて、下に落っこちちゃったんだっけ……」



 ギシギシと痛む体を起こして辺りを見渡せば、ここが扉ひとつ無い、石壁で出来た薄暗く小さな部屋だということが分かった。

 しかし天井を見上げて、わたしは首を傾げる。



「あれ?? わたし達、上の穴から落下したと思うんだけど、天井には穴が空いてないね?」


「ああ、俺もよく分かんねーけど、もしかしたら部屋に入った時に穴が閉まっちまったのかも……」


「あー、なるほど」



 それが正しいとすれば、閉じ込められたということか……。

 とりあえず焦ってもしょうがない。わたしが石壁を背もたれにして座って待つ姿勢を見せると、アダムが驚いた顔をして、「おいっ!!」と怒鳴った。



「お前、俺の話聞いてたか!? 出口が無いのに何のんびりしてんだよ!?」


「んー……、現状この分厚い石壁を壊す術はわたし達には無いから、無闇に動いてもしょうがないし……。それにルナがきっと探し出してくれるよ」


「…………」



 そうわたしが口にすると、アダムは何も言わずにわたしの隣に座り込んで、ポツリと呟いた。



「……お前、なんであいつのことそんな信じられんだよ? そりゃあいつは強ぇけど、全ッ然召喚獣らしくない胡散臭いヤツだぞ?」


「あーそれ。わたしも最初ルナに出会った時、アダムとおんなじこと思ってたんだよね」


「あ?」



 言いながら思わず笑みが溢れてしまっていたらしく、アダムが怪訝な顔をする。



「だって見たことも聞いたこともない人型の召喚獣だよ? フツーに疑うし、性格だってあの飄々(ひょうひょう)とした捉えどころの無い感じじゃない? ……ルナのことを信じようなんて、最初は全く思えなかった」



 だからあの屋上の出会いから二度目なんて絶対に無いと本気で思っていたのに、またわたし達は再会し、結局ルナはわたしの召喚獣になっている。



「不思議だよね。最初は絶対に信じないって思ってたのに、ルナと一緒に過ごしていく内に、絆みたいなものがわたし達の中にも出来てきたことを実感するんだよ。だから今はルナを信じられるというか……。こういうのがアダムとピグくんみたいな、召喚士と召喚獣の繋がりなのかなって思うんだ」



 なんだかこういう話は気恥ずかしくて、最後は早口になってしまった。

 こんな拙い説明でちゃんと伝わっただろうか?


 そう思ってアダムの様子を伺い、そしてわたしはビクリと肩を揺らした。



「それって、ホントにピグに対する気持ちと同じか……?」


「――え?」


「リリスッ! 伏せてて!!」



 いつになく真剣な表情でわたしを見るアダムの問いに聞き返すのと、ルナの声が遠くから聞こえて石壁が吹っ飛んだのは同時だった。



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