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体育祭 元落ちこぼれvs女帝 6



「あれ、アダム!?」



 ルナと一緒に障害物競走出場の受付を済ませ、待機場となっているトラックに向かうと、凄まじい数の参加者の中に見慣れた濃い栗毛色の髪を見つけて、わたしは思わず声を上げた。



「おう、リリスか」



 するとアダムもこちらに気づいて、わたし達の方へと歩いてくる。

 その肩にはもちろん、背中に背負ったトゲトゲの針が特徴のアダムのハリネズミ型召喚獣――ピグくんもいて、キュッと可愛く鳴いてわたしにあいさつしてきた。



「うわぁ! ピグくーん! 会いたかったよぉー!! 相変わらず可愛いねぇ~」


「キュキュッ!」



 小さな頭をなでなでしてあげると、もっと撫でてと言わんばかりに丸っこくて長い鼻をわたしの手に擦り付けてくる。そのあまりの愛らしさにわたしの表情はデレデレを通り越して最早デロデロだ。

 すると案の定というか、膨れっ面をしたルナの両腕がにゅっとお腹に回されて、わたしの肩に顎を乗せられる。



「むー妬けるなー。可愛さなら僕だって負けてないのに、なんでリリスは僕の場合はねだらないと自主的に撫でてくれないのかなー」


「可愛さの意味が違うし、それにさっき撫でてあげたでしょ。それよりアダム、アダムが競技に参加するなんて珍しいね。去年まではわたしと一緒にほとんど見学してたのに」



 最早恒例となっているいつものルナのじゃれつきはスルーして、わたしはアダムに質問する。

 そんなわたしを見て、アダムは「いや、あしらい方が手馴れ過ぎだろ……」となんだかボヤいていたが、質問にはちゃんと答えてくれた。



「あー……まぁな。背中の怪我もようやく完治したし、何より今年のMVPの賞品はスゲェしな。ダメ元でも出る価値あるだろ」


「確かにあの賞品は惹かれるものがあるよね。でもそっか! じゃあ今回はライバルだね! お互い頑張ろ!」


「ああ。まぁお前が出てる時点で、オレのMVPが無いのは分かりきってるけどな。すげーじゃん、リリス。このままいけば、マジでエリザベッタ様と一騎打ちだろ」


「うーん……まぁ、それもこの障害物競走の結果にかかってるけどね」


 

 苦笑してわたしがそう言った直後だった。



『さぁ皆さん、お待たせ致しました!! いよいよ午前の超目玉競技!! 障害物競走が始まりますよ~~!!! なんと今年は生徒会協賛のもと、特別なステージを用意しちゃいました!! さぁ、ステージオープン!!!!』



 またキーンと耳をつんざくようなバカでかい実況が始まり、若干どころかめちゃくちゃイラっとする。

 しかしそれと同時に、突然競技場からゴゴゴゴゴと地鳴りが起こったので、怒りどころではなくなってしまう。



「何!? もしかして地震……っ!?」


「違うよ、これは……!」


「キュキュッ!?」


「ピグっ!!」



 揺れのせいでバランスを崩して倒れそうになる体を、ルナが支えてくれた。その隣ではアダムが肩からころりと落ちたピグくんを手で受け止めている。

 そして何の音だと周囲もざわつく中、誰かから「おい、みんな! フィールドを見てみろ!!」という声が上がった。

 それに周囲の参加者も一斉にフィールドを見れば、なんとまるで中世の古城のような巨大な建造物がフィールドからせり上がってきていたのだ!



「はあ!? 何これっっ!? 障害物競走って毎年こんななの!!?」


「いや……、オレが知ってるのは、普通にトラックでハードル使ったのだった筈……」



 わたしもアダムも何がなんだか分からない間に、古城が完全に地上に出現し終える。するとまた騒がしい実況が始まった。



『はーい! 皆さん、驚いちゃいました!? 今年の障害物競走はこの古いお城の中に入って頂上を目指してもらいまーす!! もちろんちゃんと召喚士と召喚獣が揃ってゴールしないと失格ですからね~! さあ、選手の皆さんはスタートに着いてください!!』



 テンションの高い実況とは裏腹に、とても学内行事でやるスケールとは思えない異常なステージに、競技場中がア然とした空気に包まれる。


 生徒会協賛と言っていたが、あまりに好き勝手し過ぎじゃない!? 学園長は何やってんの!?


 小一時間問い詰めたい気分に駆られるが、今はそんな場合ではない。なにしろこの空気の中でも実況だけは途切れることなく続いているのだ。



『はーい、スタート位置に着きましたか~? カウントダウンしちゃいますよー』



 その言葉に呆然としていた参加者達が慌ててスタート位置に着く。

 わたしも気持ちを切り替えて利き足を前に出し構え、その時を待つ。



『―― 3、2、1』



 シンっと静まる競技場にカウントする声だけが響く。



『スタート!!!!』


「うおおおおぉぉぉぉぉっっ!!!!」


「絶対勝って、1000ポイント取るぞーーっ!!!!」



 そしてスタートが切られた瞬間、参加者達が雄叫びを上げて、ダッと一斉に古城の入り口へとなだれ込んだ。



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