変わる世界 11
「皆さん、ご紹介いたしますわ。こちら1年S組のリリス・アリスタルフさんと召喚獣のルナさん。念願叶って今日ようやくゲストとして参加して頂くことが出来ましたの」
生徒会長がそう言った瞬間、一斉に拍手が巻き起こり、「おめでとうございます」や「お祝い申し上げます」だのとみんなが口々に言い始める。
一種異様な光景に固まっていると、それに気づいた生徒会長がわたしを見てクスクス笑う。
「あまり緊張なさらないで、アリスタルフさん。ルナさんも。皆さん心より貴女がたを歓迎しておりますわ。さあ、紅茶もお菓子もお好きなだけお召し上がりになって」
「……あの」
盛り付けられた様々な種類の見るからに高級そうなお菓子を差し示されるが、生憎食欲などとても湧くような気分ではない。
わたしはこの際なので、思っていることを聞いてみることにした。
「アンヌ……友達に生徒会長はかなり珍しい召喚獣持ちの子しかお茶会には招待されないと聞きました。わたしを呼んだ理由はルナですか?」
「そうねぇ……。確かに理由はルナさんと言っても差し支えないのだけど。でもわたくし、ルナさんと同じくらい貴女にも興味を持ってますのよ?」
「え……?」
想定外の答えに戸惑い生徒会長を見れば、彼女は優雅にティーカップを持ち上げ、何か考える素振りをしている。
「――ねぇ、アリスタルフさん。貴女はご自分の〝神の神託〟はご存知?」
「〝神の神託〟……ですか?」
確かこの国で生まれた赤子には必ず教会で与えられるというものだったか。
知識としては知ってるが、しかしわたしは自分の神託とやらは知らなかった。なにせ物心がついた頃から家庭崩壊していた一家だ。そんなこと聞けるような雰囲気ではなかったのだ。
「…………」
わたしが何も答えられずにいると、それをどう受け取ったのか、生徒会長はそのまま話を続ける。
「わたくしの神託は〝神の愛し子〟……知っていて? 神々の頂点に立つ最も尊い神は真っ白な髪に澄んだ白い瞳をしているのよ」
「え……」
――真っ白な髪に、澄んだ白い瞳。
それはなんだか、〝ある人物〟を思い起こさせる。
ハッとして隣に座るルナを見ると、生徒会長もまたルナに視線を向けていた。しかし当のルナは、わたし達の視線など気にした様子もなく、ただ不機嫌そうに生徒会長を見ている。
「そして、そんな最も尊い神の色である白に近い色素を持つ者ほど、神に愛されていると言われているの。その為、濃い色素の者よりも薄い色素の者の方が上位の召喚獣を召喚し易いのよ」
「つまり銀髪薄紫瞳の、白に近い色素を持つ生徒会長は、特別に神に愛されているということですか?」
「ええ。そういうことになるわね」
「…………」
確かに神龍を召喚する兄様は金髪に青瞳と色素は薄めだ。他にもアンヌを筆頭にS組生も金髪が多い。
反対に最底辺と言われるネズミを召喚するアダムは、濃い栗毛色の髪に黒茶色の瞳。
そして、ずっと召喚獣を召喚出来なかったわたしの髪と瞳の色は……。
「……どうしてわたくしがこんな話をしたかと言うと、この法則は召喚獣にも当てはまるの。わたくしの召喚獣、レオナルドだってとっても美しい銀色でしょう?
――つまり貴女とルナさんは神に嫌われた召喚士と神に愛された召喚獣。全く真逆の、本来ならばあり得ない組み合わせ。うふふ、わたくしが貴女がたに興味を持った理由、これで分かってくれて?」
「…………」
〝わたしは神様に嫌われている〟
そんな風にわたしは小さい頃からよく心の中で呟いていた。
でも、それを本気で思ってた訳では決してない。
なのに生徒会長の言ってることが本当なのだとしたら、わたしは――……。