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変わる世界 10



 結局お茶会に出ることになったわたしは、生徒会長の思念体に案内され、ルナと一緒に校舎横から続く道の先にある大きな温室を目指して歩いていた。



「ここが温室よ」



 やがて全てガラス張りで出来ている温室の入り口まで辿り着けば、わたし達を招き入れるように、閉まっていたはずのガラスの扉が勝手に開いた。



「どうぞ」


「し、失礼します……」

 


 思念体に促されるまま足を踏み入れると、温室の中はまさに別世界だった。



「わぁ……!」



 澄んだ心地のよい空気に、清らかな水の流れる音。多種多様な純白の植物が温室中に生い茂げり、甘い匂いを放つ花々の周りには同じく純白の蝶が華麗に舞う。更には小鳥までも純白で、何匹も木に止まって可愛らしくさえずっていた。


 全てが白く、そしてこの世のものとは思えないくらいに美しい。そんな予想外の光景に、わたしは思わず感嘆の声が出た。



「……こんな場所が学園内にあったなんて知りませんでした。すごく……キレイな場所ですね」


「うふふ。そうでしょう? わたくしが幼い頃に見た〝神の楽園〟をモチーフにして特別に作らせた自慢の温室ですの。一般生徒には立ち入りを禁じているから、貴女が知らないのも当然ね」


「〝神の楽園〟ね……」


「?」



 呟かれた声にハッと後ろを見れば、ルナが苦虫を噛み潰したような顔で温室をぐるりと眺めていた。

 

 確かに神の楽園とは意味深な言葉だが、もしかしてルナは何か知ってるのだろうか?

 気になって声を掛けようと思ったが、しかし前方の拓けた場所に人影が見えてきたので口を(つぐ)む。


 わたし達を待っていたのは、テーブルの上に盛り付けられた様々な種類の菓子とティーセット。

 更にテーブルの左右に分かれて席に着いている生徒会の腕章をつけた十名ほどの生徒達と、彼らの側に座る彼らの召喚獣たち。


 そして――、


 そのテーブルの最奥にはまるで玉座のように煌びやかで繊細な細工が施された大きな朱色のソファーがあった。そこに足を組んで優雅に座るのは、艶やかな長い銀の巻き髪と大きな薄紫の瞳を持った女生徒。



「お茶会へようこそ、リリス・アリスタルフさんとルナさん。わたくし、首を長くして待っていてよ」



 玉座の背後に巨大な銀色に輝く有翼の獅子を従えた、まるで女帝のような様子で生徒会長――エリザベッタ・ノーブレは妖艶に微笑んだ。



「――さて、こちらはもういいわね」


「!?」



 そう言って生徒会長がパチンと指を鳴らすと、わたしの前方にいた思念体の生徒会長が一瞬にして消え去りギョッとする。

 本物の分身だとは聞いていたが、やはりあまりにも本物と瓜二つなので、こうして消えたところを間近に見ても実感が湧かない。



「ていうか今の、どうやって? まさか生徒会長が魔法を……!?」


「違う、その生徒会長の後ろに寝そべっている召喚獣だよ。彼が魔法で思念体を操っている」


「え!?」



 ルナの指摘に、わたしは思わず銀色に輝く巨大な有翼の獅子を凝視する。しかし獅子は素知らぬ顔で目を閉じ大人しく寝そべったまま。

 魔法を使った気配なんてまるで感じなかったのに……。



「うふふ。この子の名はレオナルド。とても美しく有能なのよ。――さぁ立ち話はここまでにして、まずは席にお着きになって。折角のゲストを立たせたままにはしておけないわ」


「あ、はい……」


「…………」



 促されわたしとルナは席に座り、生徒会長の合図で出てきた給仕係に紅茶を注いでもらう。

 それを生徒会長は見届けた後、ソファーから立ち上がりわたし達の左右に座る生徒達をぐるりと見渡した。



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