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変わる世界 3



 見渡せばぐるりと一面、人、人、人。



「ええっ!? なんで!!?」

 


 いくら視線に慣れてるわたしでも、こんな状況は初めてだ。敵意も悪意も感じないが、さすがに意味も分からず囲まれているのは気味が悪い。

 体がスッと冷えていくのを感じ、思わずルナと繋いだ手に力を籠めたのだが――、



「きゃあああああああっっ!!!!」



 突然爆発したような歓声が巻き起こり、何が起こったのかとわたしは呆然とする。



「な、何……?」



 よくよく声を聞けば、「やっぱりあれが噂の人型召喚獣なんじゃない!?」や、「アリスタルフさんがすっごい召喚獣を召喚したって噂、本当だったんだ!!」だのと、興奮した様子で騒いでいるのが聞き取れた。

 やっぱりもしかしなくてもこれ、ルナ見たさの野次馬なのーー!!?


 あまりの熱狂に身の危険を感じて思わず後ずさる。すると繋いだ手が強い力で引っ張られ、そのままルナにふわりと抱き上げられた。



「ルナ!?」


「なんだか分からないけど、ここは離れた方がいいみたいだね。――行くよ、リリス」


「え!? 行くって……!?」



 どこに?? と聞く前に体が浮き上がる。



「きゃあああああああーーっっ!!!!」



 ルナが飛んだことでまた新たな歓声が巻き起こるが、ルナはそれを全て無視し、人を避けながら廊下をビュンビュンと飛ぶ。するとその姿に魅せられた生徒達が後を追いかけて来る。

 状況が目まぐるしく替わり理解が追いつかない中、どんどんと小さくなるアダムの声が妙にハッキリと聞こえた。



「さっき遮られて言いそびれたけど、普通の奴らにとっちゃS組ってのは憧れの的なんだ。特にお前は元落ちこぼれからの大逆転なんて言われてもてはやされてるし、変に熱狂的な奴も多いから気をつけろよなー」



 ……アダム吞気な声に、わたしが頭を抱えたのは当然だと思う。



 * * *



「はー、よかった間に合って……」


「僕にかかれば遅刻なんてあり得ないよ」



 しつこく追いかけて来る生徒達を撒いた後、わたしとルナはようやく入学式の会場である講堂に辿り着いていた。


 席次表を受け取って中に入ると既にたくさんの生徒や父兄がクラスごとに着席しており、ステージ上では学園長が教師達と何やら打ち合わせをしているのも見える。

 やはりというか、またもあちこちから強い視線を感じるが、さすがに学園長達もいる場で騒ぐ気はないらしい。わたしはホッと胸を撫で下ろして、S組の場所を探す。



「おーい! アリスタルフさん、S組はこっちだよ~」



 するとステージ最前列の席から女の子の声がして、見ればストロベリーブロンドのふわふわした髪を二つに結った可愛らしい女の子がこちらを手招きしていた。

 最前列まで降りていくと、ちょうど彼女の右横の席が二人分空いている。念の為席次表を確認するが、確かにここがわたしとルナの席で間違いない。



「ありがとう。あの……」


「あ、わたしは同じ1年S組のアンヌ・ミィシェーレだよ。よろしくね~」



 ――アンヌ・ミィシェーレ。


 上位召喚士のことなど特に興味のなかったわたしですら知っている有名な名だ。

 確か召喚獣は伝説の神獣と謳われる〝麒麟(きりん)のチーリン〟だった筈。まさかそんなすごい召喚獣をもつ召喚士が、こんなゆるふわな雰囲気の可愛らしい女の子だったなんて……。



「えっと、ミィシェーレさんはわたしのことは知ってるみたいだけど、改めてわたしはリリス・アリスタルフと申します。こっちはわたしの召喚獣のルナです」


「?? なんで敬語~?」



 わたしがミィシェーレさんに向かって頭を下げて自己紹介すると、彼女は不思議そうに首を傾げる。

 するとそれを見ていたルナがクスクスと笑って彼女に言った。



「ごめん、リリスは緊張しているんだ。今までずっとソバカス栗毛男しか友達がいなかったから、女の子にどう接していいか分からないんじゃないかな?」



『ソバカス栗毛男』って……。


 確かに事実しか羅列していないけど、普通にアダムって呼んであげなよと言いたくなるあだ名だ。

 しかしミィシェーレさんはそんなルナの言葉を気にした様子もなく、ふんふんと真剣に頷いた後、ふわりと微笑んだ。



「そうなんだ~。じゃあわたしがアリスタルフさんの女の子のお友達第一号なんだね」


「え、ともだ……」


「うん友達~。名前もリリスちゃんって呼ぶね。リリスちゃんもわたしのことはアンヌって呼んで」


「ア、アンヌ……」



 にこにこと笑うアンヌにつられて、わたしも自然と笑みがこぼれる。

 友達。初めての、アダム以外の友達……。



「リリス本当に嬉しそう。でもにこにこを通り越して、ニヤニヤになっちゃってるよ?」


「えっ、うそ!?」


 

 ルナに指摘され、慌てて顔を両手で覆う。

 いかんいかん。つい初めて出来た女の子の友達に感動して、顔が勝手にニヤけてしまっていたみたいだ。



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