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落ちこぼれの召喚士 2



『この世界を創った天の神様が、世界の次に創ったのは人間だそうだ。


 しかし人間は神様の想定以上の力を持ってしまったらしく、ついには世界そのものが滅ぼされかねない事態になったらしい。


 その失敗から神様は人間から力を取り上げ、力そのものに命を吹き込んだ。人間と力をそれぞれ別の存在に別けたことで世界を守ったのだ。


 力はいつからか召喚獣と呼ばれ、人間と互いに共存し合う関係は今日まで続いている』



 ――これは、わたしが住んでる魔法王国ラーの創世神話の一部である。


 神話の通り、この国では今でも召喚獣と共生している。……いや、違うな。共生なんて軽いもんじゃない。召喚獣に依存し切ってると言える。


 魔法王国という名の通り、ラーでは普段の生活から魔獣退治に至るまで多くのことを魔法で賄っているのだが、人間にはその肝心要の魔法が使えないという重大過ぎる欠点があった。



 そこで出てくるのが、召喚獣である。



 召喚獣の生態は未だに謎が多いものの、総じて魔法が得意であり、穏和な性格の個体が多く、しかも頭も良くて人語を理解出来るハイスペックだ。

  仕組みは不明だが、人間の召喚によって召喚主に相応しい召喚獣が現れるらしい。


 神話も相まって、魔法王国ラーでは召喚獣は〝神の御使(みつか)い〟とも呼ばれている。



 ……だから神様に嫌われてるわたしには、召喚獣が現れないのかな。



 * * *



「我が声に応えよ! 神の御使いよ!!」



 放課後。アダムと別れ学園から学生寮に戻ったわたしは、早速人気(ひとけ)のない学生寮の屋上で召喚の詠唱を唱えていた。

 けど、何度も何度も何度も何度も繰り返しても、やっぱり召喚獣は現れない。



「はぁ、わたしの召喚獣……、一体どこに居るんだろう」



 屋上の柵に手をついて空を見上げる。

 もうすっかり陽は沈んで、まんまるなお月様が出ていた。


 ――小さい頃、両親や兄が召喚獣と一緒に居る姿を見る度に羨ましくて仕方なかった。


 わたしの家、アリスタルフ家は代々強力な召喚獣を召喚する一族だ。そんな名家の娘として生まれたのに召喚出来ないという負い目もあったが、しかしそれ以上にわたし自身が自分だけの召喚獣と特別な絆を繋ぎたいと願っていた。


 でも現実は残酷で、15歳になった今もまだわたしの召喚獣は現れてくれない。誰もが当たり前のように召喚獣を使役するこの国で、召喚出来ないということがどれだけ辛いか。


 魔法学園に入学する際、父様の反対を押し切って入学したのも半ば意地だった。召喚獣や魔法のことを勉強し深く知れば、いつかわたしにも召喚出来るかも知れないという希望を捨てたくなかった。


 なのに、その学園生活まで危ういなんて……。



「あーもう! わたしの召喚獣! いるんだったら、隠れてないで出て来なさいよーー!!」



 半ば自暴自棄になって、わたしは在らん限りの大声で屋上から叫ぶ。



「人見知りで今まで出て来れなかったって言うなら、今出て来たら許してあげるからーー!!」



 自分でも変なことを叫んでいると分かっているが、けれど人見知りとでも考えないと納得いかないじゃないか。

 この世界の人間は必ず一匹、自身に相応しい召喚獣を召喚することが出来る。ならばわたしにだって、対応する召喚獣が必ずどこかにいる筈なのだ。



「絶対大切にするって約束するから出て来なさいよーー!!!」



 ――この時のわたしは叫ぶことで胸に渦巻くムカムカを発散するのに夢中で、



「それ、ホント?」



 ――だから、気づかなかった。



 目の前に白い羽根を羽ばたかせて空を飛ぶ男の子が居たことなんて。



 召喚獣を呼ぶつもりが、とんでもないものを呼び出していたことなんて、全然知らなかったのだ。



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