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隣人愛 〜奪われた生徒会長選候補者推薦状の謎〜  作者: ゆずさくら


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10/13

六時限目、古典

 日直の多田羅(たたら)が号令を掛けると、情報の授業が終わった。

 多田羅と宮藤(くどう)は六時限目、古典の担当教員から声を掛けられ、国語の準備室へプリントと返却するノートを取りに来るよう声をかけられた。

「鈴木くんは来てくれないの?」

 鈴木は手を合わせて謝った。

「ごめん、急用が出来て」

万慈(ばんじ)は力がないから、どうせ役に立たないわよ」

「その言い方、酷い。鈴木くんだって傷ついちゃうんだから。ね?」

 多田羅が振り返った時には鈴木はいなかった。

「……」

「本当に急用だったみたいね」

 二人は国語の準備室へと向かった。

 ノックをして、準備室に入ると、先生からノートとプリントを渡された。

 宮藤が主にノートを、多田羅が持ちきれない分のノートとプリントを持った。

 二人が教室の近くに来た時、廊下の角から鈴木と相田(あいだ)が現れた。

 多田羅が、それを見て立ち止まった。

 ぶつかりそうになって、宮藤は多田羅に声をかけた。

「どうかした?」

「なんでもない」

 鈴木が近づいてくると、二人に言った。

「待って。重いだろうから、俺が扉を開けるよ」

 宮藤はムクれて言う。

「重いだろうから、代わりに持つよ? じゃないの?」 

「多田羅さん、それ持とうか?」

「ありがとう」

 ノートを受け渡す時、手と手が触れる。

 多田羅は手が触れたところで、手を止めてしまった。

 鈴木はノートとプリントを引き受けられず、困ったように声を上げる。

「えっと、あの……」

「私が叩けないと思って、セクハラするんじゃないの。馬鹿万慈(ばんじ)!」

 いや、俺が手を動かさないんじゃない。鈴木は思った。彼女が俺の手に触れたまま、動かなくなったんだ、と言いたかった。

 だが、言うまもなく、すぐに荷物を受け渡された。

「……」

 三人は教室に入り、ノートを取りに来るよう呼びかける。

 ぞろぞろと生徒が取りに来る。

 最後に、ノートが一冊だけ残った。

 多田羅がノートの名前を確認する。

「これ井神(いがみ)の分だ」

 宮藤と鈴木が相槌をうった。

 そのノートを教壇に残し、三人は席に戻ると、まもなく古典の担当教員が来て、授業が始まった。

 午後の教室は暖かく、お弁当を食べお腹がいっぱいになっているせいもあって、居眠りしている生徒が目立っていた。

 先生が、日直である多田羅に声をかける。

「ちょっと窓を開けて換気しよう。そっちの窓開けて」

 教師は前の方の窓を、日直の多田羅が後ろの方の窓を開けた。

 外は、教室ほど暖かくはない。

 冷気の通り道から、寝ていた生徒が目を覚ます。

 その間も、授業は淡々と進んでいった。

 しばらくは、何事もなかった。

 さらに授業が進んだ頃、風向きが変わったのか、突風が教室に吹き込んだ。

「うわっ」

「やだっ!」

 プリントがバサバサと飛び、教科書、ノートが捲れる音がした。

「!」

 日直に指示して、慌てて窓を閉めさせる。

 窓を閉めて多田羅が席についた時、教室を見回し、先生が言った。

「おい、鈴木。鈴木万慈はどこに言った?」

 先生の位置からは、鈴木が見えないのだ。

 宮藤が隣の鈴木を見る。

 鈴木はしゃがみ込んで、机の裏を見ている。

「万慈は机の下にいます」

「プリントでも落ちたか? 早く拾って、席につけ」

 そう言うが、鈴木の反応がない。

「万慈、先生が」

 宮藤の呼びかけにも、鈴木は応答しない。

 教師が待ちきれなくなって、大きな声を出す。

「おい、いつまでやって……」

「あった!」

 先生の声よりさらに大きい声だった。

 鈴木は、そう言うと同時に立ち上がった。

 手には封筒が握られている。

「おい、座れ。今何の時間だと思ってる? 授業中だぞ」

 先生の言葉を無視して、封筒の中身を確認する。

 生徒会と担任の真岡(もうか)の印が押してある。

「間違いない。(たけ)の推薦状が見つかったんですよ。俺の机の下で」

「……それは良かったな」

 と、教師は呆れたように小さい声で答えた。

 今度は、竹が立ち上がり、授業中にも関わらず、鈴木の席に行く。

「渡せ」

 竹は強引に奪い取ると、制服の内ポケットに入れた。

「このクラスの生徒はどうして授業中、勝手に歩き回るんだ……」

 教師はおでこに手を当てて、嘆き、俯いた。




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