悪の星
満月が夜を照らす日、人は気が大きくなり、イライラし、精神的に不安定になる。
私の名前は石田真由美!高校一年生!
桜で覆われた道路を通り過ぎれば私の通う学校。公立櫻ヶ丘高校に到着!
校門を早足で通り抜け、クラスに着くと私の大親友たちが挨拶を掛けてくる。
「おはよ、真由美」「おいっすー!真由美!」「おはようございます、真由美ちゃん」
「おやおや、三人の美少女の声が聞こえるぞ」と内心で思いながら、声の方を見ると三人の女の子がいた。
最初に挨拶をしてきたのは清水雪絵。
名前に雪が入っているからなのか肌がすごく白い、それと対象的に光る黒い長髪が特徴的な女の子で、顔も整っていることから学校内でも人気が高く、噂じゃファンクラブもあるとか、また年上の先輩からもよく告白されているが、本人はその事を鬱陶しいと思っているらしい。あと胸が小さい。
二人目は、短髪で褐色な肌がその性格に完璧にフィットしている元気な女の子、相川唯華。
運動神経が抜群で色んな部からスカウトが来るけど、上手く避けている、勉強はあまり得意では無いけど、根が真面目だから苦手なことでも頑張っている姿は、カッコイイと思う。
そんな私の二人目の友達、因みに胸は大きい。
三人目は、その風貌は優しさと温かさに溢れ、口から出てくる優しい言葉には、母親の様な母性を感じる、大人びた少女
藤本静音。
私たちの中では一番のブツを持つ少女でもある。
この三人の少女たちが私の絶対に仲を切れない大親友達だ。
「おはよう!みんな!」
挨拶を済ませると直ぐに三人に近づき、他愛もない雑談を交わす。
「愛ってなんなんだろうね」
「何よいきなり」
「いや、さ、私たちは中学から馴染みがあるわけじゃん、それで小さい頃は一人ぼっちだったからさ、恋愛ってどんなんだろって思って。」
「恋愛ねぇ、わかってると思うけど私たちに合う男なんてそうそう居ないわよ。」
「そんなのわかんないじゃん、私たちより同い年か年下の男の子は日本に775万人もいるんだよ。」
「あら?年上はいいの?」
「絶対に嫌」
「でも、いいじゃない私たちがいるんだから」
「確かに、貴方たちにはあの時から感謝しかないし親友だとも思ってる。でも私も普通の恋ってやつがしたいよォ〜」
「だけど、あんただってよく告白されてるじゃない、と思ったけど年上ね」
「全く理解してくれないかねぇ、ここまで断ってんだから、あ〜あ、運命の相手は私には居るのかなぁ」
唯華がはぁ〜とため息混じりに喋る。
「運命の人が現れたら、私はどんな事でもするのに」
「なら、まず私がその体を堪能させてもらおうかな」
私は手をワキワキする。
「おりゃー!」、「ちょ!真由美〜!やめてってぇ〜」
「おりゃおりゃおりゃ!」、「ひぃ〜〜」
雪絵がその光景を目の当たりにし、自分の胸に目をやる、
一時すると絶望した顔になる、自分の胸と唯華の胸のあまりの格差に驚愕していた。
静音が笑う。
雪絵は笑う静音を見て、涙目の瞳でキッと睨んでくる。
そんな雪絵に静音が声を掛ける。
「大丈夫だよ、雪絵ちゃん、まだ大きくなるって」
「自慢なの!そんな核兵器を抱えておいて、私に励ましの言葉を送って来るなんて!この人でなし!」
静音に雷が落ちる。ショックを受けたみたいだ。
「私だって、こんなのいらないよ、重いだけだし、擦れると痛いし。」
次は、雪絵に雷が落ちた。
お互いがお互いに雷を落とし合うという、悲惨な光景が前に広がった。
唯華はゲラゲラ笑っている。
「そ、そういえば!今日転校生が来るみたいだよ!」
私が話題を変える。
ショックを受けた二人が涙目でこちらを向き、唯華は笑いすぎてでた涙を拭いながらこちらを見る。
「どんな子なんだろうね」
そんな会話をしているとチャイムが鳴り、教師の原口が入ってくる。
「席につけー」
クラスのあちこちで話していた子達が席に戻る。
「んじゃ、昨日も言ったように今日は転校生がうちのクラスに来る。」
クラス中が湧く。
色んな所で転校生への淡い期待を持つ声が聞こえる。
女かな!イケメンかな!可愛かったら狙ってみようかな。
やはり、色恋沙汰関係の話しか聞こえない。
落ち着け、お前ら、原口がクラスを静め、入ってきていいぞ
とドアの向こうへ声を掛ける。
ガララ、ドアが開き、一人の少年が入ってくる。
クラス中の視線が集まり、当然私たちも扉から入ってきた少年を見つめた。
少年は下を向いて歩き、どこか暗そうな雰囲気、髪は伸び放題で、目が見えない。
原口が黒板に名前を書き、振り向き口を開く。
「今日転校してきた後藤勇気くんだ、後藤、クラスに一言頼む」
少年は、黙っている。
「お?どうした、後藤。今から仲間になるクラスメイトに一言言ったらどうだ?」
原口が詰め寄り、後藤は小さく口を開く、どこか元気がない
「後藤勇気です…」
結構前の列の私たちでさえ、ギリギリ聞こえるぐらいの小さな声、正直、ご、ゆう。ぐらいしか聞こえなかった。
これが俗に言う名前負けというやつなのだろうか?
「全然聞こえませーん!」後ろから自称一軍男子の声が聞こえる。
うるさいぞ、衛藤。自称一軍男子の名を呼び注意する原口。
この声にビクッと身体を震わる、後藤くん。
その様子を見た瞬間、私は不思議と胸がドクン、ドクンと大きな鼓動を打ち、張り裂けそうになる。
どうしたの私、こんな昂り…。
あの時以降感じたこともない昂りが私の中にはあった。
「もういいぞ、後藤、お前の席はー石田、お前の隣良いか。」
「いいですよー!」
「後藤、何かわからないことがあったら石田に聞け。」
小さく頷き、席に向かう。
「よろしくね、後藤くん」
ハッっと小さく驚き、頷く後藤くん。
ハァハァ、何この感情後藤くんを見るだけでなんでか興奮しちゃう、顔は熱いし、どうしたんだろ…、まさか!これが恋!?
そして、私は恋であろうこの感情を察し、近くにいる少女たちに目をやると少女たちも頬を赤らめ、どこか興奮気味だった。
ホームルームが終わり、私はトイレに3人を連れて行った。
「ねぇ、三人とも」、「待って、言わんとしていることは分かるわ、でも、まさか四人とも同じ人が運命の人とわね。」
「なら、どうする?日本は一夫多妻制では無いし、私たち四人で奪い合うっていうのもねぇ…」
「そうだ!」私は名案を閃いた。
「私たち四人で後藤くんと付き合えばいいんだよ。」
「だから、一夫多妻制は日本じゃ無理なのよ」
「違う!違う!私たち四人で後藤くんの周りに居る男及び女を排除し、私たちと後藤くんだけの世界で愛というものをこの恋愛で学ぶんだよ!」
「つまり、運命の人を私たち以外愛せないようにする訳ね、真由美にしては見事な考えね。」
「さっすが雪絵!その通り!どうかな!?」
静音と唯華もこくりと頷く。
「なら、私たちで後藤くんを管理し、邪魔するものはいかなる手を使ってでも私たちの幸せな時間は邪魔させないってことでいいかしら?」
「うんうん!」、「なら、まずは後藤くんに近づくことからね」
「うわ〜!興奮してきたァ!ヒヒヒ!」、「唯華ちゃんあまり独占しないでよね、私だってすごく興奮してるから」
四人の少女たちの目は完全に獣と化した。
そうと決まれば、私たちは後藤くんに詰め寄った。
「ねぇねぇ、後藤くん、趣味とかはあるの?」
「どこから来たの?」
「後藤くん、髪切らないの?」
絶好の獲物を前にヨダレをダラダラ垂らし、目はギラギラと輝きを放つ獣のような様子で話しかける。
後藤は、普段あまり喋らないのか、会話がぎこちなく、声に張りがない。
ボソボソと喋り、直ぐに口を紡ぐ。
少女たちは益々興奮していた。
そんな時、後ろから「なに、話してんの」と声とともに顔が出てくる、自称一軍男子の衛藤だ。
私達は邪魔者を睨みつける。
「なになにー、怖い顔してぇ。」
「うるさい、私達は後藤くんと話してんの、あんたはどっか行って。」
「こんな、芋臭い奴の何がいいんだよ、俺方が100倍いいぜ」
その言葉を聞いて、静音の拳がプルプルと震えている。
どうやら、静音は自分の運命の人をバカにされると許せないたちのようだ。
それは他の三人も言えたように三人とも切れていた。
場のピリピリとした空気を感じずにズカズカと入り込んで来る衛藤。
「なぁ、俺たち放課後カラオケ行くんだけど、お前たちもどう?」
「絶対に行かない」雪絵が鋭い日本刀でぶった斬る。
「そんなこと言わずにさぁ〜、行こうぜぇ〜。」
バン!静音が机に拳を打ち付ける。後藤くんがビクッとする
「雪絵が行かないって言ってるでしょ、どっか行きなさいよ」
普段怒らない静音にビビったのか衛藤はソサクサと一軍グループの元へ戻って行った。
「へぇ〜、静音が怒ることもあるんだねぇ。」
唯華と私が驚いていると。
「あんな害虫、今すぐにでもぶち殺して上げたい気分だわ」
普段の静音が絶対言わなそうな言葉が口から出てくる。
「ひひひ、ひひひひ」、「唯華また悪い癖が出てるよ。」、
「あ!ごめん、雪絵ありがと。」、「いいのよ、どうにもならないみたいだしね、まぁアイツらがウザイのは百も承知だから、今度なにかしてきたらただじゃおかないわ。」
女子高生の口から出る言葉としてはあまりにも殺気じみた
会話に後藤くんビクビクしていた。
その姿をみた静音が、「大丈夫だよ、怖かったねぇ」と自分の胸に後藤くんの頭を沈ませ、頭を撫でる。
後藤くんは突然のことに戸惑っている。
この光景をみた他の三人は、あ!ずるい!と一緒に叫ぶ。
後藤くんの取り合いが始まる、四人でギャーギャー話していると、後藤くんがフフっと小さく笑った。
その一瞬をみた四人は益々惚れてしまい、そして下半身を濡らしていた。
この獲物を今すぐにでも食べたい。ハァハァと息を荒くする獣たち。
そんな光景を向こうからじっと見ていた男たちがいた。
その日の放課後、私たちはクラスに残り後藤くんの会話で盛り上がっていた。
「ヤバくない、後藤くん!あの感じまさに今まで出会ってきた男性の中で一番だよ!」
「だよね!まさに私たちの運命の人、こんな所にいるなんて、髪で分かりにくいけど、顔も可愛い顔してるし」
「それじゃあさ、今日の放課後、後藤くん誘ってどっか行こうよ!」
さすが唯華、好きなものに対しての行動力は見事なものだ。
この提案に対し、断る理由など、どこにも無く、私たち三人は頷いた。
「そうなれば、後藤くんはどこ?」
「そういえば、放課後になってから見てないね。」
「トイレ?」という唯華の問いかけに対し、静音が「いや、カバンは無いし、先に帰ったのかなぁ?」
「「「えー!!!」」」静音以外の三人が驚愕の声を上げる。
「そんな、私たちのプリンス、急にいなくなるなんて…」
およおよと唯華が落胆とともに嘘泣きをしていると。
「あ、後藤くんなら、衛藤くん達が連れてったよ」
隣で話していた別グループの女子高生が喋った。
「ほんと!どこに!」唯華が詰め寄る。
「え、あ、えっと、何処かまでは分からないけど、学校内のどこかにはいるんじゃないかなぁ?」
「あ!そういえば、私、職員室から帰っている時、後藤くんを連れた衛藤くん達が校舎裏に行ってるの見たよ」
同じグループの女子高生が教えてくれた。
「ありがと!、行くよみんな!」
唯華がそう言うと、私たちは校舎裏に向かった。
校舎裏に着くと、そこにはボロ雑巾の様にボコボコにされた後藤くんがいた。
「大丈夫!?」私は咄嗟に後藤くんの元へ行き、体を抱き抱える。
うぅっとうめき声を漏らす後藤くん。
この様子を見た雪絵は、「とりあえず、保健室に連れて行こう。」
「そうだね、ゴメン後藤くん、持ち上げるね。」
肩を組み、私は後藤くんを持ち上げ、保健室に向かった。
保健室に着くと、そこには先生はおらず、私たちで軽く手当をすることにした。
「ごめんね、後藤くん服脱がすよ。」
制服のボタンを外し、後藤くんの肌が露になる。
私たちは愛しの人の裸を見て興奮する反面、ある事実に気づいた。
「すごいアザ…こんなのいくらアイツらにやられたかといって、一朝一夕で出来るようなものじゃない。」
後藤くんの体にはアザが至る所にあった。
「まさかこれって…」、「えぇ、虐待に近いことはされていると思うわ。」、「やっぱり…そう…だよね。」
「許せない許せない許せない許せない許せない許せない」
「ヒヒヒ、それはイケナイナァ」
唯華と静音が不穏な空気を出している。
「落ち着きなさい、貴方たち、私たちの勝手な解釈だけで決めつけるのは良くないわ。とりあえず、後藤くんを軽く治療したら私たちで療養しよう、家に帰らせる訳には行かないわ。」
「そうだね、ならおじいちゃんに連絡入れておくよ!」
「ありがと、真由美、貴方たちも一緒に来るでしょ?」
「いや、私たちはちょっと用事を思い出しちゃった」
「あら、二人してそうなの、なら後藤くんは真由美と連れていくわ、それじゃあまた後で。」
「えぇ」、「うん、またね雪絵…ヒヒヒ…」
私たちが何故愛を知らないのか、そしてこの強い仲間意識は何処から来るのか、異常すぎるその関係には深く暗い過去があった。
石田真由美
常に酔っぱらいの父と、娘の為にせっせと働く母の元に生まれた。
最初は、酔っ払った父がパチンコで負けたのなんだので私を殴ろうとすると、母が庇ってくれた。
母は死ぬほどボコボコにされ、体の至る所にはアザがあった。
しかし、毎日のように続く暴力と罵詈雑言に母は、諦めた。
ある日を境に、母が私を無視しだした。
父は、相変わらず酔っ払っており、私を殴ってくる。
「痛いよぉ、ママ、助けて!」
必死の叫びでも、母の耳には届かず、父は益々機嫌が悪くなる。
髪の毛を鷲掴みにされ、引きづられる。
「うるせぇんだよ、クソガキが!この中にでも入ってろ!」
押し入れを開け、その中に私を閉じ込めた。
「出してよ!パパ、ママ!」
押し入れの扉を叩くが、返事は無い。
それ所か、父と母が居る気配が無くなった。
私は脳裏にとある言葉が過ぎる「お前なんか死んでしまえ。」
息遣いが荒くなり、私はこのままここに閉じ込められて死ぬんだという死の恐怖を体に感じた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。」
必死に唱えるも、答えは帰ってこない。
時間が過ぎる、どれくらいの時間がたったかも分からない。
お腹がギュルギュルとなる、空腹感で体を動かすこともままならない、死ぬと思ったその時、押し入れが開かれた。
そこに居たのは、大家さんだった。
家賃を滞納していた私の家を訪ねてきて、扉に手を掛けると開いたらしい。
大家さんは驚きのあまり、声すら出ていなかった。
「大丈夫!?」大家さんが抱き抱える。
私は、声すら出ない、大家さんはすぐさま救急車に電話をかけた。
私は、救急車に搬送され、なんとか生きながらえた。
だいぶ体調がよくなり、休憩室で休憩していると、ニュースが流れた。
「石田真由美ちゃんの育児放棄を受け、石田仁志容疑者と石田由香里容疑者が逮捕されました。」
あのクソ野郎二人は逮捕されたみたいだ。
私は許さない、奴らを私と同じ目に合わせる。
私の心には、悪魔が住み着いていた。
五〜六年の月日が経ち、私はすっかり元気になっていた。
小学生五年生になり、友達もできた。
そして、今日はあのクズどもが出てくる、私にとってのお祝いの日。
自宅のアパートで奴らを待つ、早く帰ってこないかな、
取っておきのサプライズを用意しているから驚いてくれるといいな〜と考えながらルンルンと上機嫌でいると、
階段を上がってくる音がした。音的に二人分、あのクソ共だ。
私は、スタンガンを取り出し、玄関脇にスタンバイする。
扉が開かれる、「ったく、あのクソガキのせいで散々な目にあった。」
「ほんと、親不幸もいい加減にして欲しいものだわ。」
「おかえり、パパ!ママ!」
二人が驚き、こっちを見た瞬間、首筋に電気が走る。
「これから、私が道徳というものを教えてあげる。」
父と母を机に縛り付け、冷水をぶっかけ起こす。
「おはよ!パパ、ママ!よく眠れた?」
「てめぇ!真由美!ふざけんじゃねぇ!」
「うるさいなぁ、急に大きな声出さないでよ。」
ペンチで父の顔をぶん殴る、口から歯が吹き飛ぶ。
口から血を垂れ流す父、その光景を目の当たりにした母は、ごめんなさい、ごめんなさい、助けて。
と命乞いをしているが、私からすれば、何を言ってるのだか
「ママは、私が助けてって言っても無視してたよね、ほんとにこういう時だけ、都合がいいんだから、私泣けてくるよ、
まぁいいや、貴方達は、私がお腹をくぅくぅ鳴らして死にそうになっても、帰ってくる気配なくパチンコに明け暮れてたね。」
「貴方たちが逮捕されて、私はじいちゃん、婆ちゃんの家で育ったんだけど、そん時にじいちゃんが教えてくれたの。」
私の祖父母の家は養豚場をやってる。
「豚ってね雑食で何でも食べるんだって、それが骨であろうとね。」
「だからじいちゃんに言って、一匹の可愛い豚ちゃんを借りたの、欲にまみれた貴方達にそっくりな豚ちゃんをね」
首輪を付けられた豚が現れる。
ヒッ!っと小さく悲鳴を上げる母、父はふざけるなぁ!と叫ぶ。
「よいしょ」ダン!という鈍い断裂音とともに父の腕が切れる。
「ぐわぁぁぁぁ!!!」
「そんな叫んでたら、最後まで持たないよ。」
ぶった切った腕を手に取り、豚の前にほおり投げる。
ふごふご言って豚は匂いをかぎ、食らいつく。
「俺の腕がァァ!」
「くふふ、可愛い可愛い豚ちゃんもルンルンで食べてるよ。」
私は歪んだ笑顔を浮かべる。
「良かったじゃない、醜く膨れ上がったその見た目が少しスリムになったよ、まぁ腕だからそんな分からないけど。」
「それじゃあパパ、気張っていこー!」
肉切り包丁を振り下ろした。
五〜六回ほど肉を削ぎ落とすと父は動かなくなった。
「流石にこんなものか、人間が痛みに耐えられる限界は、
いい勉強になったよ、じゃあねパパ。」
チラッと横を見ると恐怖のあまり失禁している母がいた。
「いい歳しておしっこ漏らさないでよ、汚い。」
「あんたなんか、死んでしまえ!」
「酷いなぁママ、私をあんなに守ってくれてたママとは正反対のこというじゃん、大丈夫だよ、ママには何もするつもりないから、豚ちゃんもお腹いっぱいみたいだし。」
よしよしと豚を撫でる。
「パパには、与えることの素晴らしさを教えたけど、ママには貰えることの素晴らしさを教えようと思います」
「ママ、人は食べ物無しじゃ7日で死ぬんだって、だから今からママには死ぬギリギリの所で私が生かし続けます。」
「どうしてもお腹が空いたら教えてね、私が料理を振舞って上げるから!」
ママの顔がどこかほっとした顔になった、私はその顔を見逃さない。
「パパのお肉を使ってね♡」
その言葉を聞いた瞬間、ママの顔が戦慄した。
あぁ!この顔!この顔が見たかったの!
下半身をガクガクさせ、私は下着を濡らしていた。
「それじゃあねママ。また来るね。」
玄関を開けようとすると奥から恐怖の旋律が聞こえた。
外に出て、思いっきり伸びをし、空を見上げると、
「今日はなんて綺麗な満月!私の記念日ぴったし!」
健気な少女は父と母の叫び声を脳内で再生しながら、
スキップをし夜の街に消えた。
清水雪絵
医者の父と専業主婦の母の元に生まれた。
一見裕福な家庭というのは、外も中もいいものと思われがちだが、私の家は酷いものだった。
24時間体制で管理された私の時間、一分一秒も私が自由に使える時間は無い。
私は、親に管理されていた。
成長の過程で勉強以外やったことがなかった。
両親がいない間にこっそり外に出ないように、私の足には机と繋がった拘束具が付けられていた。トイレは部屋の住みに置かれたペット用の奴で足していた。
お風呂も三日に一回、それ以外は机の前にいた。
そのせいで体臭は酷くなり、小学校では、虐められた。
私は、激しすぎる親の束縛と学校でのいじめから、私のストレスは限界を越えようとしていた。
だが、私にも心の支えがあった、私の数少ない友達、石田真由美だった。
石田真由美との出会いは、私がトイレに閉じ込められ頭から水をかぶり、出られずに途方に暮れていると、バキンっという音と共に鍵が壊れ、ドアが開いた、そこに居たのが石田真由美である。
「大丈夫?」という問いかけに上手く答えられず、静かに頷く
「でも、全身びちょびちょじゃん、これ私の上着着ていいよ」
「あ、ありがとう」人から初めて優しくされた。
「いいのいいの、困っている人がいたら助けなさいってばあちゃんが言ってたもん。」
これが私と真由美の出会い、そこから一緒にいることが多くなり、仲良くなった。
ある日の放課後、私と真由美と遊んでいると、偶然通りかかった母に見つかった。
私は、まずいと思う、母がつかつかと近寄ってきて、私の頬を叩いた、パンっという乾いた音が公園に鳴り響く。
「何をやってるの!貴方は家で勉強しなきゃダメじゃない!全ては貴方の将来を見据えてやっているの!なんで分からないの!」
「ご、ごめんなさい。」
「ほら!行くわよ!」私の腕を強引に掴み連れていく。
真由美が私の服を掴む。
「嫌だ!雪絵ちゃんと遊ぶの!」
「離しなさい!薄汚い子が私の雪絵に触らないで!」
その言葉を聞いた時、真由美の顔が豹変した。
その顔を見たお母さんの顔は恐怖していた、私も初めて見る真由美の顔に驚いていた。
真由美は、驚いた私の顔を見て、その手を離し、下を俯いた
「行くわよ、雪絵、なんて恐ろしい子。」
腕を引っ張られながら後ろを見て軽く手を振ると、真由美は満足そうに手を振り返してきた。
私は嬉しかった、私の友達がこの毒親に対し抵抗してくれた事に。
その日の夜、珍しく両親に呼ばれた。
「雪絵、お前変な子と遊んでいるらしいな、母さんから聞いたぞ」
「真由美は、そんな子じゃない!」
「なら、なんだって言うのよ!あんな顔普通の子はしないわ!」
「あんな子と一緒にいたら貴方の将来は真っ暗よ!」
「そこで、母さんと話したんだが、お前を全寮制の学校に転校される。」
ッ!!!衝撃が走る、唯一の支えである真由美と離れたら私は確実に壊れる。
「嫌だよ!なんで勝手に決めるの!」
「全てはお前の為を思ってやってるんだ!子どもは黙って親の言うことを聞いていればいいんだよ!」
「大体あんな薄気味悪い子と一緒にいること自体許せないわ!」
唯一の友であり心の支えだった真由美をバカにされたことと父親から言われた一言で私のストレスは限界を超えた。
私はその後、分かったとだけ小さく喋り、部屋を出た。
「全く困った娘だよ、大体お前の教育が悪いからこんなことなるんだぞ」
「貴方だって、全て私に押し付けて何よその言い草は!」
親が居間で喧嘩している、私は玄関に向い、父が使っているゴルフのドライバーを一本手に取る。
カチャっと居間の扉を開けると、父と母が口論の最中だった
私は、座っている父のコメカミにドライバーを打ち付けた。
父のこめかみから血が垂れる、急なことに母は驚いていた。
父は立とうとするもまともに立てない、私はすかさず頭にもう一撃食らわせた、父の頭が赤く染る。
その後も何度も何度も頭にドライバー打ち付ける。
父の目玉は飛び出し、頭は砕けていた。
ドライバーがへし曲がり、折れた
トス、私の肩に何かが刺さった、母が包丁を突き刺していた
実の娘に包丁を突き刺すとは、恐ろしい親もいたものだと思うが、私も実の父を殴り殺している。
「こ、この人殺し!」震えた声で母が言った。
私は肩に刺さった包丁を抜く、痛かったが痛みよりも殺意の方が勝っていたので、どうということは無かった。
その様子を見た母は、崩れ落ちる、私は母の上に馬乗りになる。
複雑な感情の私は愛と憎しみを持って胸に包丁を突き刺した
「内容はどうであれ、私を育ててくれたことには感謝するわ
じゃあね、母さん、父さん。」
母が血を吹き出し、憎しみの目で私を睨み、息を引き取った
「復讐で心は晴れないというけれど、私の場合はどうだったのかしら?憎しみから来ていたから復讐にはならない?なら、この感情はどういう感情なのかしら、まぁいいわ、真由美の事をバカにしたクズは私の手で殺せたし。」
ピンポーン
インターホンがなった、私は寒気がした、こんな状況を見られたら私は、少年院に入れられる。
恐る恐るインターホンを見ると、そこには真由美がいた。
真由美!?私は心で驚いたが、インターホン越しに話す。
「どうしたの真由美?」、「いや、今日のことで謝っとこうと思って、私のせいで雪絵ちゃんは叩かれたから」
「何言ってんのよ、あんなのうちの親が悪いんだから気にしないでいいのよ真由美。」
「そうかなぁ、でも一応雪絵ちゃんのお母さんに謝っときたいし」
「本当に大丈夫だから!」と強めの口調で言うと。
真由美は驚いた表情で「ご、ごめん」といい歩いていった。
その表情を見て私は玄関から出て、「ごめん!真由美、そんなに強く言うつもりは無かったの、その中に入れれない理由があって」
「どうしたの?」
「その、真由美の悪口を父さんと母さんが言ったから私その事が許せなくて、父さんと母さんを殺しちゃったの」
恐る恐る自分がやってしまった事を真由美に告げると
「嬉しい!私の為に怒ってくれたの!」と満面の笑みで言ってきた
この返事に対し、私は酷く驚いた。
「私は両親を殺したんだよ!」
「確かにそれは悪いことかも知らないけど、私も自分のパパとママ殺しているから」
その言葉にビックリした、なんで?と聞くと
「私も虐待を受けてたの、押し入れの中にずっと入れられて死ぬ寸前の所で助けられたんだけど、押し入れの中にいる時にあまりの恐怖と憎しみで私の心は壊れちゃっみたい」
親友の恐ろしい一言にビックリし改めて考えると、私も同じようなものかと気づく、別に両親を殺した事に罪悪感など微塵もなかったし、逆に自分の手でやれて良かったとまで思う。
「私たち、壊れちゃったみたいだね」
真由美がアハハと笑う、二人して笑いあった。
しばらく笑っていると、現実に戻された。
痛た、肩に痛みを感じた、そういえば私刺されているんだった、これがアドレナリンというものなのか痛みを全然感じていなかった。
「あ!真由美ちゃん怪我してるじゃん!」
「母に刺されたのよ、今まで痛みを感じないあたり、アドレナリンが出ていたのね。」
「アドレ…?」、「まぁ、そんな話はいいのよ、真由美手当てしてくれる?」
「うん、分かった!」といい包帯を巻いてくれた。
肩の処置を終了後、目の前の二つの死体に目をやる。
「この死体どうしようか」、「それなら任せて!私の時もじいちゃんが助けてくれたの!」といい真由美は携帯を取り出す
「もしもし、じいちゃん?私の友達が困ってるの助けてくる?」
うん、うんと相槌をうち、しばらくするとここの住所を教えてと言ってきた。
私は、携帯貸してと真由美にいい、携帯を借りるとスラスラっと自分の住所を喋り、真由美に携帯を返すと
「うん、わかった、待ってるね!」と元気のいい声で話した。
「じいちゃん、来てくれるんだって、じいちゃんが来るまでの間に友達をお風呂にでも入れときなさいって」
今の自分の状態を確認すると血まみれだった、こんなんじゃ外にも出れない。
「せっかくだから、真由美も入る?」「え!?いいの!?入る入る!」
相変わらず可愛い子、この子が友達で本当に良かったわと思う。
私たちは、お風呂の中でお互いの過去について色々話合い、
「んじゃ、これからは私たちはずっーーーと一緒だね!」
真由美がそう言ってくれた。
「私はいつも貴方に助けて貰ってばっかりね。」
「そんな事ないよ、雪絵ちゃんだって私の事助けてくれたじゃん!私忘れないよ!」
私は、そんな事あったかしら?と考える。
「私が戻ってきた時、雪絵ちゃんが一番最初に声掛けてくれたんだよ!」
「あら、そうだったかしら」
絶対そうだよと鼻を鳴らす
真由美が抱きしめて、「じゃあ、これからは二人で残りの人生を楽しくしようね、ずっと一緒だよ!」、「うん!」
私の人生はこれから始まる、この真由美という無二の親友と共に、お風呂の窓から外を見上げると空には満月が浮かんでいた。
独り身になった私を見て、真由美のお爺さんとお婆さんが私を家に歓迎してくれた。
この腐りきった世の中にも心休まる場所を提供してくれる人はいるのね、私はそう思い、石田家の迷惑にならないように生活をした。
あの件から1週間程経つが、警察の気配は今のところない。
だが、それも時間の問題だ、私はこの家を出ることにした。
「お爺さん、お婆さん、真由美、今日までお世話になりました。私は、実家に戻ります。」
「えぇ!雪絵!何で!」、「何でもかんでも、ずっとこのまま居てもいつ警察が来るか分からない、私はこの家に迷惑は掛けたくない、だから、今までお世話になりました。」
「おい、嬢ちゃん。」
居間から出ようとしたら真由美のお爺さんである龍玄さんから呼び止められた。
「お前、実家に帰ってどうするつもりだ」
「一人で生きていくつもりです。」
「嬢ちゃん、世の中を舐めちゃいけねぇ、お前みたいなちっこい子が一人で家にいることは許されねぇんだよ。」
「なら、ネットカフェに泊まります。」
「あんな、犯罪者予備軍のたまり場にお前を泊まらせる訳には行かんだろ。」
「なら、どうにかします。」
「お爺さん、はっきり言わないからこんなに長引くのよ、
雪絵ちゃん爺さんは、子どもが変に気にせんでこの家に泊まりなさいって言ってるのよ。」
「え…」
「あんたは、まだまだ子どもなんだから私たち大人に甘えればいいの」
「私、この家に迷惑をかけることになるんですよ…?」
「な〜に言ってんだい!子どもが親にかける迷惑なんて甘っちょろいもんよ!私たち夫婦が守ってあげるわよ!」
目からポロポロと涙が零れる、人の優しさに温かさに涙がこぼれた。
「あらあら、辛かったねぇ、枯れるまでお泣き。」
「うわぁぁぁぁぁん!」
私は生まれた初めて人の胸の中で泣いた。
暫くして、石田家にも警察が来た。
当然私のことだったが、お爺さんとお婆さんが突き返した。
私の壊れた心には、人の優しさを感じれるほどの余力がまだ残っていたらしい。
相川唯華
両親は離婚し、私は父に引き取られた。
母は、何も言わずに出ていったという。
私はどうしようも無く父に引き取られたという形だ。
父は、母に似た私をよく殴った、酒を持ってこいだの、パチンコに負けたのは全てお前のせいだの、ことある事に私を殴ってきた。
私は、すぐ様にでもこの家を出たかったから中学の時は、年齢を詐称しバイトに明け暮れていた。
勉強とバイトの両立で常にヘロヘロだったが、学校に行くと
癒しがあった、藤本静音という女の子だ。
彼女と出会ったのは小学生の頃で、常に一人でいる子だった。
周りの子は誰も彼女に話しかけない、私も常に一人でいたからもしかしたら同じなのかもと変な同情を彼女に持っていた。
急に一週間ばかし休むし、出てきたと思ったら酷くやつれており、体から少し臭う。
私は、そんな彼女を見捨てることが出来ず、私から話しかけたのが彼女との出会いだった。
話しかけると、周りの子達が動揺しヒソヒソ話が聞こえる。
「あの子、藤本さんに話しかけてる」、「やっぱ変な子だね」
「変な子同士、仲良くやればいいんじゃない笑」
そんな声が小さく聞こえるがそれを全部無視して彼女に話しかけた。
「こんにちわ、藤本さん」軽く挨拶をしたぐらいだったが、
彼女は酷く脅え、他人から話しかけられることを恐怖に感じている様子だった。
私はそんな彼女を見て、話しかけずに優しく背中を撫でてやるとよっぽど精神的に来ていたのか泣き出してしまった。
突然の涙に驚きを隠せずにいると、彼女は私の胸に泣きついてきた。
「よしよし、大変だったんだね」
彼女は私の胸の中でわんわん泣いていた。
しばらくして泣き止むと彼女はポツリと喋り始めた。
「なんで私に構うの?」、「なんでって言われても私もひとりだし、よく疲れた顔でいるし、なんかほっとけなくて。」
そんな言葉を投げかけると、彼女は動揺しまた泣き始めた。
「うわ!なんでまた泣くの!?」
「だって、そんなこと言われたの初めてだったから…」
「それまた大変な家庭に産まれちゃったんだね〜」
と他人事で言っているが私もそうだ。
「ほんと、大変だよ」彼女は薄く笑い、そう喋る。
「あ!笑った!」
直ぐに元の顔に戻ったが、彼女の笑顔が見れた初めての瞬間だった。
「今、笑ったでしょ〜」、「笑ってません」、「い〜や笑ったね!」、「笑ってません」、「嘘つくなって〜」、「笑っていませんから」
そんな会話を続けるとアホらしくなって二人で笑った。
「ねぇ、藤本さん!私たち友達になろうよ!」
「え…?」
「同じもの同士仲良くなれると思うんだ」
「私なんかでいいんですか…?」
「私なんかって、私は藤本さんだからいいんだよ!」
「あ、ありがとうございます。」
「なら、これから私たちは友達だね!藤本さんなんて面倒臭いから、静音って呼ぶね!」
「静音、久しぶりに名前を呼ばれた気がします。」
「自分の名前なのに?」、「家では呼ばれませんから…」
その言葉を聞いた時ある言葉が喉まで上がってきたが飲み込んた、深く詮索はしないようにしようと心に決めた。
「じゃあ、これから宜しくね!静音!」
「うん!」
これが彼女との出会いだった。
「あ〜、静音ぇ〜疲れたぁ〜」
「お疲れ、唯華ちゃん。はいこれお弁当。」
「いつも、ありがとぉ〜(泣)」
静音が毎日パンしか食べない私の体を気づかって弁当を作ってきてくれるのである。
これが美味しくて美味しくいっつも感謝しかない。
「静音は何かやりたいことでもある?」
「私はあの家を出れたらそれでいいかな」
「私もそれには賛成だね、早くあの家から出たいよ。」
「お互い考えることは変わらないね」と優しく微笑み喋る静音
可愛いという言葉を胸に押しとどめ、私もそだねとだけ返す
放課後になり、いつものようにコンビニでバイトをし、家に帰ろうとすると、コンビニの外で静音が待っていた。
「どうしたの静音!」
「ちょっと今は家に帰りたくなくて…」
意外と度胸のあることをする子だなぁと思う。
「しかし、私の家もなぁ…」
家にはあのクソ親父が居るし、静音を見た瞬間何をしでかすか分からない。
二人で頭を悩ませていると、バイクが目の前に止まった。
「ねぇねぇ、お嬢ちゃん達何してるの?」
バイクの男が話しかけてくる。
私は無視していると、「なになに無視?」と喋りかけてくる。
ちっ、めんどくさいのが来たと思い、「興味無いんだよ、失せな」とだけ吐き捨てると、バイク男は「きっち〜!」と訳の分からない言葉を喋る。
相手にするのもめんどくさかったので静音の手を取り歩き出すと。
バイク男が静音の手を掴む。
「無視は酷いよねぇ〜、意外と可愛いじゃん」
私、心底ムカついた為、股間に一発蹴りを喰らわせようとすると、一人の女子中学生が玉を蹴りあげていた。
「フォ!」っと言い倒れ込むバイク男。
「ちょ!雪絵、あんたやり過ぎだよ!」「いいのよ、こんなクズ野郎、こんぐらいが丁度いいわ。」
蹴りあげた張本人と隣に、もう一人女の子がいる。
「大丈夫?」、雪絵と呼ばれた女の子が静音に喋り掛ける。
「あ、ありがとうございます。」
「なら、良かった。じゃあね」、「バイバーい!」
二人して歩いていこうとしている時に、私は咄嗟に呼んでしまった。
「あ、あの!」、少女たちがこちらを向く。
「この子が困ってるんだけど、助けてくれない?」
静音の為に、提案をすると、少女たちは二人で話し始めた。
「ちょ、本当に言ってんの!?」「困った人がいたら助けるだよ!雪絵!」「あんたのじいちゃんにはなんて言うのよ!?」
「大丈夫!じいちゃんとばあちゃんなら分かってくれるよ!雪絵の時だってそうだったでしょ!」、「そりゃあそうだけど、分かったわ、あんたには本当に困ったものだわ。」
という会話が小さく聞こえる。
「あんた、名前は?」雪絵という女性が喋り掛けてくる。
「静音です、藤本静音。」
「なら、静音さん、この隣の連れが言うこと聞かないから着いてきな。」
「ありがとうございます!」
「あんたはいいの?」、私にも問いかけてくる。
「私はいいよ、家に帰って親父の面倒見ないといけないし。」
そう。とだけ喋ると彼女たちは歩いていった。
「じゃあね!静音!また明日!」、「うん!バイバイ!」とだけ別れの挨拶を交わし、私は家に帰った。
家に帰ると、クソ親父が眠っている。
「こんなとこで寝やがってクソ親父が。」
ゴミを見るような目で睨みつけ、私は自分の部屋へ向かった
貯金通帳を見る、あと100万でこのクソみたいな家から出ていけれる。
私は通帳を隠し、眠った。
次の日、私はいつも通り学校に行くと、静音がいた。
「おはよ、静音。」「おはよう、唯華ちゃん。」
「どうだったの昨日は?」
「いい子たちだったよ、二人とも家庭の事情で、祖父母の家にいるみたい。」
「家庭の事情〜?」
「特に雪絵ちゃんは従兄弟でもなんでもないみたいなんだけどおじいさんが泊めてくれてるって。」
「それまた、不思議な話もあるもんだ。」
まぁ深くは詮索しない方がいいだろう、彼女たちとこれから会うことはないと思うし。
「それより、あんたまた胸が大きくなったんじゃない」
静音は胸を隠しながら、「そ、そんな事ないよ!」
「ほんとかなぁ〜」手をワキワキさせると、静音がヒィ〜と嘆く。
「唯華ちゃんだって胸大きくなったんじゃない」
そういえば、私も胸が大きなった気がした。
「なら、今度下着見に行こうよ」
「いいよ、いつ行こっか」
下着を見に着いてくるってことはやはり静音も大きくなったみたいだ、今でも十分だと思うが、この子はどこまで大きくなるのだろうかと彼女の胸の成長に驚愕していると、
「今度の日曜日なんかどう?」静音が問いかけてくる。
「日曜ね、いいよ、分かった。」
「じゃあ、決まりだね、楽しみだなぁ〜」
約束を交わし、私は二人の女子中学生を思い出していた。
あの二人なんか同じような感じがするな。
という同じ境遇の中学生がいることへの淡い期待を持ち、授業を受けた。
時間は経ち、日曜日になった。
私は、静音との待ち合わせ場所に行くと、そこにはワンピース姿の静音がいた。
異常なまでに似合うそのワンピースに驚いていると静音が顔を近づけてきた。
「唯華ちゃん?」、「いやいや、待たせてごめんね静音。」
「いいよ、今来たところだから、じゃ行こっか」
目的の下着売り場に着くと、そこには見覚えのある二人がいた。
「あー!」先に気づいたのは向こうの方だった。
「どうしたの真由美、指なんか刺して」と指の方向を見ると、「あら、こんにちわ。」
「どうも」「あ、この前はお世話になりました。」
「こんなとこで会うなんて偶然だねぇ!」
「真由美、ちょっと声のトーン下げな、店の中だよ。」
「ごめん、雪絵」、「そういえば自己紹介がまだだったわね。」
「私は清水雪絵、家の事情でこの隣の石田真由美の祖父母の家に住まさせて貰ってるわ。」
「あ、相川唯華っす。この前は、静音がお世話になりました」
「いいのよ、この子が言い出したことだから」
「そうだ!せっかくだし四人で回ろうよ!」
真由美が提案を出してくる「いい考えね、私は賛成よ」
「私は、いいよ、今日は下着見たらバイトが入っているから」
「あら?中学生なのにバイトしているの?」
「別にいいでしょ」、「まぁいいわ、静音さんはどうする?」
「私も唯華ちゃんが行かないなら」「あら、そう。」
「じゃあまたどこかでね、行くわよ真由美。」
「待ってよ〜雪絵〜、じゃあねー!二人とも〜!」
二人が歩いてさっていく、「なんか絶妙な距離の二人だね」
「私たちにそっくりだね」
「まぁ、いいわ下着を見ようよ」「うん、そうだね!」
夕方になり、ある程度満喫した所で静音とは別れた。
一人で帰っていると、また出くわした。
「あら!また出会ったね!」
「真由美ちゃんだっけ?今帰り?」
「うん、雪絵を待ってるんだ」
「雪絵ちゃんとはどんな関係なの?」
「雪絵と私の関係性かぁ、そうだなぁ〜秘密を共有した親友ってとこかな!」
「秘密ってどんな秘密?」、私が気軽な気持ちで聞くと、
真由美ちゃんの顔が変わっていた
「唯華ちゃん、あまり人の懐にズカズカ入ってくるものじゃないよ」
この子、普段はあんなに元気いいのにこんな顔もするんだという意外な一面に驚いた。
「ご、ごめん」とだけ言うと
「ううん!いいよ!」いつもの彼女に戻っていた。
あの顔は一体…
「お待たせ、あら、唯華さんじゃない」
「どうも」「貴方、バイトはいいの?」
時計を見ると時刻は17:30を回っていた。
「やば!急がなきゃ!」
「まぁ、落ち着きなさい、人は常に心には平穏を持たせないと恐ろしい行動に出るわよ」
という変な忠告を受けた所で私は、「忠告ありがとね、じゃあね」とだけ吐き捨て、走っていった。
なんとかバイトには間に合いバイトを終わらせ自宅に帰るとそこには親父がいた。
いつも家で寝ているはずのクソ親父がなんで今日に限って起きてる、私はまずいと思った。
「今までどこに居た!?そして、なんだこの袋は!」と強引に袋を奪われる。
「あ〜?下着だぁ〜、お前なんでこんなの買う金がある。」
「それは、その」と言葉を噤んでいると頬を打たれた。
「てめぇ、まさか俺に隠れてバイトしてんだろ!」
「この出来損ないのクズが!」という言葉と共に私を蹴ってくる。
「てめぇ、舐めやがって、父親をバカにするのも大概にしろよぉ、これは教育が必要だなぁ」
親父が私の体を見て舌なめずりをする。
私は恐怖し後ずさった。
父の股間はパンパンに膨れ上がっていた。
嫌だ嫌だ嫌だ!脳内ではアラート音が鳴り響く。
父親は、おもむろにズボンを下ろし、ブツを見せてくる。
私は、そのブツをみて私の胸は恐怖で激しく鼓動していた。
息遣いが荒い父、はぁはぁと臭い息で私に近づき襲いかかってきた。
私は必死に抵抗をしていると、転がってあった一升瓶に手が触れた。
私はそれを掴み、父親の頭を殴った、父親が悶絶する。
私は通帳だけもって走って逃げた、どこまでもどこまでも。
暫く走り、橋の下に座り込んでいると。
「君、大丈夫?」
見知らぬ二人の男性が私のそばに近づいてきた。
「ねぇねぇ、どうしたの?」続けて話しかけてくる。
反応しない私を見て、「もうここでやっちまおうぜ。」
という声が微かに聞こえた、私の脳内にあの光景がフラッシュバックする。
はぁはぁと息遣いが荒くなる、私は立ち上がり走った。
男たちは、ちょ!待て!といい追いかけてくる。
必死に走っていると、路地に連れ込まれた。
奴らの仲間!?と思い、ここまでかと諦めていると
「やっぱり、唯華ちゃんだー!」
「あら、今日はよく出会いますわね唯華さん。」
面識のある二人の顔があった。
「凄い汗ね、どうかしたの?」
「わ、私父親の頭を一升瓶で殴って、そ、それから怖くなって走って逃げたら、男たちに絡まれて、もう、私どうしていいか、分かんなくて」
酷く脅えた私を見て、二人は衝撃の一言を放つ。
「あら、そうなの」「そうなんだー!」
「なんで、そんな反応なの!?人を殺したのかも知れないんだよ!?」
「何を人一人殺したぐらいで死んで当然の人物だったんでしょ」
「それは…」確かにそうだ、父親に対して尊敬などした事など無かった。
「死んで当然の人物を殺して、何が悪いのかしら」
「そうだよ!死んで当然の人は死ぬべきだよ!」
「あんた達、狂ってるよ」
二人が驚いた表情をし、盛大に笑った。
「狂っているか、確かにそうかも知れないな、しかし、私たちをこんな風にしたのは他でもない自分の親だよ。」
「私たちは激しい虐待を受けてたの、二人ともね、だから私たちは自分の両親を自分の手で殺している。」
衝撃の発言だった、だが、それと共に淡い期待は確信に変わった。
「あんた達もそうなんだね、静音から話を聞いた時から薄々気づいていたよ。」
「あら、そう、大人しい子だと思っていたら意外とお喋りなのねあの子。」
「まぁ、いいわそんな事、それで貴方はどうしたいの?」
「私は、私に暴力を振るった父親を許さない!そして、私を捨てて、地獄に落としたアイツを許さない!」
「そう、なら協力してあげる、困ったらこの電話に掛けなさい。」
電話番号が書かれた紙だけ渡され、じゃあねと歩き去る雪絵の後ろをまたねー!と真由美が手を振りながら闇夜に二人の
狂人は消えていった。
実家に帰り、父の状態を見に行くと、父の姿がない、当たりを見渡しても父の姿はどこにも無い。
どこに行ったんだ、あのクソ親父と思っていると、後ろから押し倒された。
「ゴラァ!唯華ぁ!実の父親の頭を殴りやがってぇ!」
父の顔には血がべっとりと着いていた。
「このクソガキがァ!死ね!しねぇぇ!!」
父が上乗りになり首をギリギリと締められる。
息が出来ない、私は力を振り絞り、父の股間に思いっきり膝蹴りを入れる。
「ぐおぉ!」父が絶叫を上げ、嘔吐した。
私は、先程父の頭を殴り、割れた一升瓶を手に取る。
股間にそれを突き刺した。
何度も何度も股間に突き刺すと、父は死んだ。
「このクソ親父が、その汚いブツは切り刻むのが一番お似合いよ。」
私は捨て台詞を吐き、一息着く暇もなく現実に引き戻される。
この死体はどうしたものかと考えていると、ある言葉が脳裏を過ぎる。
「困ったら電話を掛けなさい。」
私は、固定電話を手に取り、雪絵に電話を掛ける。
2コールで雪絵は出た、「もしもし、雪絵ちゃん?」
「早かったわね、人を殺した感触は?」
「最悪なものだけど、どこか清々しい気分よ、でも、あと一人残っているからアイツを殺したら私の心には真の平穏が保たれると思うわ。」
「そう、それで要件は聞くまでもないわね、死体の件で電話したんでしょ?」
私が考えていた事を的確に当ててくる。
「そうだけど」、「だと思ったわ」
電話越しに、真由美、おじいさんに電話お願いという声が聞こえた。
「今から真由美のおじいさんがそこに向かうから住所を教えてちょうだい。」
「あぁ、住所ね」、雪絵に住所を言うと
「まぁ、お風呂にでも入ってゆっくりしときなさい。」
「分かった。」
私は湯船に湯を張り、浸かる。
「ふぅ、気持ちいい」、疲弊した心が癒されていく気がした。
両手には突き刺した時の感触が残っている、頭の中には父のブツが時々映る、しかし、湯船に浸かっていると、次第とそういった感触や
窓の外を見ると大きな満月が当たりを照らしていた。
「こんな綺麗な月の下で人を殺すなんて、私は興奮でもしていたのかな」
お風呂から出て、夜風を浴びていると、軽トラと共に「唯華ちゃーん」という呼び声が聞こえた。
車が止まり、雪絵と真由美以外に強ばった顔を持ち、筋骨隆々な男性が運転席から降りてきた。
「紹介するわね、この人が真由美のおじいちゃんで、名前は石田龍玄さん。」
紹介されると、おじいさんは軽く会釈をした。
寡黙な人なのだろう、それ以外は何も喋らない。
「それじゃあ、これ着て!」
「これ、カッパ?」「そうよ、今から貴方の父を解体するの」
その言葉にゾッとした、解体ってマジという言葉が喉まで差し掛かったが押しとどめた。
この人達に何言っても意味なさそうだもんね。
「唯華さん、怖くないのね、最初はみんな嫌なものだと思うけど」
「実の父親を処分してもらうのに、娘が手伝わない訳にはいかないでしょ。」
「貴方、意外と根性あるのね」、「うるさい、あとさん付けは辞めて唯華でいい。」、「奇遇ね、私もちゃん付けは嫌なの、雪絵でいいわ。」
「それじゃあ、始めましょうか」、「やろやろー!」
真由美という少女はどこまで本気なのか分からない、未知の存在だ。
龍玄さんを筆頭に四人で父親を解体すると、父は10個のブロックに変わっていた。
「さてと、家に持って帰って、食わせるとするかの。」
「食わせるって、何に食わせるんですか?」
「豚だよ、豚っちゆうのはな基本的になんでん食うんじゃ、じゃからワシは、この子達が殺した死体も全部豚に食べさせた。」
私は初めて知った、でも、死んで当然のような人だったから可哀想という感情すら出てこなかった。
「そうだ、唯華ちゃんこれからどうするの?」
「とりあえずは、母に逢いに行くつもりだけど、この時間からじゃね」時計を見ると、時刻は夜中の2時を回っていた。
「ここに一人で居るのもなんだ、わしの家に来い。」
「いいんですか?」、「いいもなにも年頃の女ん子を一人で居らせる訳にも行かんじゃろ。」
「それじゃあ、すみません、お願いします。」
軽トラで、かれこれ40分揺らされるとおじいさんの家に着いた。
「ワシは、これを処分してくるから、お前たちは風呂に入りなさい。」
お風呂に入ったのだが、解体作業が思いのほか重労働で汗をかいた。
「すみません、ありがとうございます。」とだけ礼をゆうと、龍玄さんは畜舎の方へ歩いていった。
「ほら、唯華ちゃん!脱いで脱いで!、雪絵も!」
「ちょ!急かさないでよ真由美!」
こうして見ると二人とも普通の中学生なんだなと思う。
三人で肩を並べ、湯船に浸かっていると、雪絵が、
「私と真由美の関係と過去に着いて教えてあげる。」
いいわよね、真由美と私越しに真由美ちゃんに声をかけるといいよー!という返事が帰って行った。
それから、私は真由美と雪絵の関係や過去に着いて全てを聞いた、とんでもない過去を聞いて私なんかちっぽけな物だねとつい口に出てしまったが、雪絵は、「虐待に上下なんてものはない。」とだけ言った。
「そういえば、貴方男性に対しての恐怖感とかはないの?
酷いものを見せられたんでしょ?」
私もそれについては何らかのトラウマがあると思ったけど、そんなことは全然なかった。
「あ〜、それはなんでか感じなかったのよね、あんなもの見せられて、心底驚いたけど、あれに割れた一升瓶突き刺したことで、スッキリしたのかな?、私にもわかんない」
「そう、でも辛かったら言ってよね、私たちが協力するわ」
「ありがと、雪絵…、真由美もありがとね」
「いいよ〜、私たちも気持ちがいいし!」
「それはそうね」
「でも、まさか自分が実の父を殺すなんて思ってもいなかったよ」
「当然の報いよ、死んでもいい人間はうじゃうじゃいるのに、生きて欲しいと強く願う人間ほど早く死ぬものよ」
「それもそうだね、気持ちを切り替えて明日からも頑張るよ!」
「この調子なら問題なさそうね、これから宜しくね唯華」「よろしく、雪絵、真由美!」
私たち三人は友達となり、離れることの出来ない関係となった。
次の日の朝
私は、あの女の居場所を探るため、実家を訪れた。
私は中に入り、両親の寝室を探る。
「う〜ん、中々めぼしいものが見つからないなぁ」
弱ったなと頭を抱えていると、一枚の名刺が目に入った。
「うん?これは…?」名刺を手に取り、よく見てみると
「キャバクラ・エデン…AIKA?、これってもしかしたら」
私は高揚感を得ていた、うふ!これってあの女のやつでしょ
やっと会えるね、お・か・あ・さ・ん。
「ひひひ、ひひひひひひ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!」
私は寝室で高らかに笑った。
その日の夜、私はエデンというキャバクラの前にいた。
人の出入りが少ない、どうやら寂れたキャバクラの様だ。
私は中学生だから中に入れない為、裏口をこじ開け、中に入った。
中を散策していると、声が聞こえた。
「えー!シャンパン入れてもらっていいんですかァ〜」
女の声がする、でもどこか聞き覚えのある吐き気を催す声だ
店内の様子を覗き見すると、私の母愛華の姿があった。
あぁ!生きていてくれたのね!私のことなどとうに忘れて、自分のためだけにのうのうと生きてくれてたのね!
これで心置き無く、殺すことが出来そうだよ♡
私の頭には、目の前のクズ野郎を殺す以外考えていなかった
「ちょっと、君ここで何してるの」
エリアマネージャーみたいな人に見つかってしまった。
俗に言う黒服だ、私は少しため息を付き、「すみません、間違って入ってしまって、出方が分からないんです、教えてくれませんか?」
「全く、ガキがこんなとこに入ってきてんじゃねぇよ、ほら着いてこい」
「すみませーん。」私は胸元から一本の包丁を出す。
外に近づき、黒服の男が後ろを振り返った瞬間
「おやすみなさい♡」私は黒服の胸に突き刺した。
すぐに動かなくなり、そのまま引きずり、ゴミ袋が散乱してある、ゴミ置き場に放り捨てた。
「私の邪魔をしないでよね!全く!」
邪魔者も消し去り、店内に戻ると母が一人待機室に居た。
うふふ、どんな反応するかな〜、楽しみだなぁ
「こんばんわ!おかあさん!」
母が一瞬驚き、私の顔を見るやいなや、怪訝そうな顔をした
「そう!その顔が見たかったんだよ、おかあさん。」
「あんた、まさか唯華…?」、「そうだよ。あんたが捨てた唯華だよ。」、「あぁ、唯華!生きていたのね。私はあんなクソ野郎の元に置いたことを反省してたの!」
何を今更言うのかと思ったら反省の言葉ですか
「今更言ったってもう遅いよ、あんたは私を見捨てたんだ。」
「違うの!」母が叫ぶ。
「ああするしか無かったの、毎日お父さんに殴られて私も限界だったの」私はこの発言に酷く困惑した。
「そんなの嘘!嘘だよ!」、「嘘じゃないの!本当よ!だから、許して!お願い!」、「なら何で!何で!あの時私を連れてってくれなかったの!」、「それは、急だったからしょうが無かったの、直ぐに迎えに行こうと思ったけど、怖くて行けなかったの、だから許して唯華…。」
母が涙ながらに訴えてきた。
「そんなの…ずるいよォ、私だってお母さんと一緒にいたかったんだよォ…」私も不甲斐なく泣いてしまう。
「そうよね、唯華、寂しかったよね。」母が私を抱いてくる。
「うん、お母さん、寂しかった」私は母の胸の中で静かに泣く
ガシャン!私は頭を何かで殴られた、私は地面に突っ伏し前を見ると、割れたボトルを持った母親がいた。
「な〜にが「寂しかった、お母さん」だよ、ばぁ〜か。」
衝撃の言葉が私に降かかる。
「お前なんざ、1mmたりとも愛したことなんざねぇよ!勘違いしてんじゃねぇよこのクソガキが!」
私は、頭や腹を足で蹴られる。
一時の間、罵声をあびせ続け蹴ったことに疲れたのか、母はソファーに座った。
「ハァ…ハァ…ったくクソガキがよォ、実の母に楯突くんじゃないよ、全く。」
私は地面に突っ伏している、全身が痛い、だけど、私は理解したやはりこの女はクズで男に寄生ばかりする寄生虫で、社会のゴミなのだと。
「うふふ、ひひ、うひひ、いひひひひ、ひひひひひひひ」
「このクソガキ!まだ死んでなかったのかい!」
母が再び蹴りを入れてこようとする、私は包丁を足に突き刺す。
「うぎゃぁぁぁぁああああ!」猿の遠吠えのように痛がる母。
「ひひひ」太ももに一刺し、母が叫ぶ、腹に一刺し、痛がる母
「ふひひひひ」右腕に、左胸に、左肩に、顔に、胸に
何度も何度も突き刺す、「ひひひひひひひひひひひひひ!」
正気を取り戻した頃には母の顔が刺傷で見えなくなっていた
「お母さん、綺麗になったね。ひひひ」
私は、店を出空を見上げる、今日も満点の満月だ。
しかし、今日の月は赤く染まっていた。
藤本静音
両親の他に妹がおり、四人暮らし。
名家藤本という家庭に生まれ、世のため人のためにと小さい頃から英才教育を受けていた。
しかし、彼女は飲み込みが他の人より遅く時間が掛かった。
家族はそんな静音を疎んだ目で見た、小さい頃から過酷な環境で過ごし、やりたくない事も無理強いされ、やりたいことは「藤本の名に似合わない」として、やらせて貰えなかった。
生まれてから不幸が続く彼女に更なる不幸が降り注ぐ。
私が5歳の時、妹が生まれたのだ。
この妹は、大きくなるにつれ、才女と呼ばれ、
私が小学生になった時には、彼女はアルファベットを理解していた。
彼女は紛れもない天才だ、そんな妹を持った私の扱いは下僕同然まで下がった。
私は家族の目の前を通ると、罵声を浴びせられた。
「なんで、無能なお前が部屋で勉強をせず、廊下などほっつき歩いているのだ、全く無能の考えることは理解出来ん。」
「す、すみません、お父様。」
「貴様にお父様など呼ばれたくもない、おい!こいつを懲罰房に叩き込んでおけ。」
その言葉を聞いた時、私の体に寒気と恐怖が走った。
「懲罰房」その名の通り、罰を与えるために作られた部屋。
その部屋には薄い布団が掛かった板のベットがあるだけで、その他には何も無い、正に独房と同じだった。
私は、あそこで何度も地獄を見ている、だから私は必死になった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!もう、目の前を歩いたりしないから!部屋から出ないからあそこには入れないで!」
私は、父にしがみつく。
「その汚らわしい手で私に触れるなぁ!」
私は頬を打たれ、地面に転ぶ。
「この薄汚いクズがァァァ!!」
お腹を何回も蹴られる、私は死なないように体を丸める。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
フーフーと父の興奮した声が聞こえる。
「おい!何をやってる早く連れてけ!」
私は強引に立ち上げられ、地下室の懲罰房にぶち込まれた。
「すみません、お嬢様、お許しください。」
私は、地面ですすり泣いた。
一週間ほど独房に入れられ、時々なかを覗き、反省の色が見えたら出して貰える。
一週間もの間、学校に行かなくても教師は何も言わない。
藤本家に逆らうとどうなるか分かっているからだ。
学校に行くと、周りの子は私に寄り付こうとしない、常に一人の私に一人の女の子が話しかけてくれた。
「こんにちわ、藤本さん」
私は久しぶりの会話からなのか、酷く動揺して上手く返せなかった、しかも体が何故か震える。
震える体を必死で抑えながら、返事を返そうとすると、彼女は背中を摩ってくれた、彼女の突然の行動に私は驚いた。
しかし、私の感情とは裏腹に、目からは涙がこぼれた。
あれ?なんで涙が零れるの?心配した彼女が背中をさすってくれただけなのに、私は涙を零していた。
そんな私の様子を見た彼女は体を抱きしめてくれて、
「よしよし、大変だったね」と一言言ってくれた。
その一言で傷ついた心がゆっくりと癒される気がした。
それと同時に溢れんばかりの涙が目から零れた。
相川唯華と名乗る彼女とはそれから話すようになり、初めてできた友達となった。
中学にあがったが私の扱いは変わらないままだったある日、
「ねぇ、唯華ちゃんは親に反抗したことはある?」
「そりゃあね、私の親なんてクソみたいなやつだから、いつも殺したいと思ってるよ、でも反抗した所で大人と子どもじゃ力に雲泥の差がある。だから、私は早くあの家を出たいんだ」
「家を出るか…家を出てどうするの?」
「さぁ、そん時はそん時だよ。とりあえず私はあの家を出たい」
「そっかぁ、私もねあの親から逃げれるんならどこにでも逃げたいよ」
「確か、名家の人って言ってたっけ、静音もそうなんじゃないの?」
「うんうん、私はね、藤本という苗字が付いてるだけのただの虫、私は家族から嫌われてるの。」
「あ…、なんか…ごめん。」
「いやいや、いいのいいの!私が無能なのが悪いんだから」
「静音はそんな事ないよ!あんなに美味しいお弁当作れるんだから、静音は無能じゃないよ!」
「そんなこと言われたの初めてだよ、ありがとう。」
「それにしても、実の娘を無能呼ばわりってどういう神経してんのよその親。」
事実を述べる唯華が、そうだ!と何か閃いた。
「ならさ、無能でも無視ができないぐらいの強烈なパンチを食らわせてやればいいんだよ」
「パンチって私、格闘経験なんて無いよ?」
「違う違う、抵抗するって言っても色々あるでしょ、相手が私の存在を認めないといけない様なことをすればいいんだよ」
その言葉を聞いて、私は妙に腑に落ちた気がした。
「唯華ちゃんだったらどんなの?」
「私は秘密でバイトしてるから、そのお金で家を出てやるつもり」
「なら、私はあの家を燃やすことにするよ」
「え…?」唯華ちゃんが酷く驚いた顔をした。
「ちょっと何言ってるの静音?」
「な〜んてね冗談だよ、唯華ちゃん」
「だ、だよね〜、私びっくりしちゃったよ!」
アハハと笑い飛ばしたが、私は覚悟が決まっていた。
その日の夜
「ありがとね、唯華ちゃん、唯華ちゃんのお陰で私決心が着いたよ」
私の手にはガソリンタンクがあった。
鼻歌交じりに家の周りにガソリンをまく。
悪魔の巣穴に火を放ち、その業火で悪魔を浄化する為に。
「これだけ撒けば十分かな」
辺り一面からガソリン臭がする、私はマッチを一本スり、
ほおった。
ガソリンに着くや否や、瞬く間に火は業火へと変わり、辺り一面を覆い尽くした。
「燃えろ!悪魔共!貴様らは地獄で閻魔に裁かれ、地獄道で苦しむがいい!」
「アハハハハハハハハハ!」
少女の笑い声が満月が登る夜空に高らかと鳴り響いた。
悦に浸かる暇はそこまでなく、私はすぐさま移動した。
直ぐに、警察と消防が来るはずだ、早くここから移動しないと、でもどこに行こう、そうだ!唯華ちゃんに助けを求めよう
私は、唯華ちゃんが働くコンビニへ走って向かった。
着いた時に丁度終わった様で、唯華ちゃんが出てきた。
「どうしたの静音!」
「ちょっと今は家に帰りたくなくて…」
「しかし、私の家もなぁ…」
と彼女の家も家庭的に良くないみたいだった。
二人で頭を悩ませていると、バイクが目の前に止まった。
「ねぇねぇ、お嬢ちゃん達何してるの?」
バイクの男が話しかけてきた。
唯華ちゃんが軽くあしらい、私の手をとりその場から離れようとすると、バイク男が私の腕を掴んできた。
その瞬間私は鋭い殺意が目ざめ、今ここでこいつも殺してしまおうかと思った時、一人の女子中学生が玉を蹴りあげていた。
玉を蹴り挙げられた男は少し奇声をあげ、その場に倒れた。
目の前には二人の女子中学生がいた。
「ちょ!雪絵、あんたやり過ぎだよ!」「いいのよ、こんなクズ野郎、こんぐらいが丁度いいわ。」
という会話が聞こえた。
少女が一言私に「大丈夫?」と話しかけてくれて、私は
「あ、ありがとうございます。」と返すと、
「なら、良かった。じゃあね」、「バイバーい!」
二人して歩いていこうとしていていた。
私がぽかんとしていると、隣で唯華ちゃんが二人の少女の名を呼び止めていた。
すると、唯華ちゃんが私のためにこの子達に交渉をしてくれた、いつも助けてくれてありがと唯華ちゃんと心で感謝する
しばらく会話が続き、小さい方の少女が名前を聞いてきた。
私は自分の名前を返すと、
「なら、静音さん、この隣の連れが言うこと聞かないから着いてきな。」と私を助けてくれた。
「あ、ありがとうございます!」
交渉してくれた唯華ちゃんに感謝し、助けてくれた彼女達にも感謝を伝えた。
でも見ず知らずの私をどうして助けてくれるの?という疑問も生まれた。
唯華ちゃんと別れ、私は彼女達に着いていった。
「そういえば、自己紹介がまだだったわね、私は清水雪絵よ
そして、隣にいるのが石田真由美。」
「あ、なら改めて藤本静音です、今日はありがとうございます。」
「いいのよ、この子がゆうこと聞かないし、でもどうして助けが必要なの?」
私は当然の質問に戸惑った。
「ちょっと家で嫌なことがあって…」
「嫌なこと?どんなこと?」
「それはちょっと…」、「親を殺したとか?」
私は驚いた、エスパーなのかこの子は。
「冗談よ、ただからかっただけ」、「もー!雪絵!私までビックリしたじゃん!ごめんねー!静音ちゃん驚いたでしょ、雪絵はこういう冗談が好きだから」
「いや、間違ってません、私は実家を燃やしました。」
この人達なら話しても大丈夫という謎の信頼があった為、つい口から出てしまった。
「あ…」
「あら」、「えぇー!雪絵エスパーじゃん!」
「まさか、冗談で言ったつもりが当たっていたとわね」
「驚かないんですか?」
「驚くも何も私達も実親を殺しているからね」
「なんでですか?」
「何でもかんでも、私たちは虐待を受けてたからね、死んで当然だと思っていたし、別に気に病むことは無かったわ。」
「お強いんですね…」
「そんな事ないわよ、実親の死と引き換えに私たちの心は壊れてしまったからね」
「なら、私も…そうなのかな?」
「それは分からないわよ、私エスパーじゃないし」
真由美ちゃんがほんとに?と疑わしい目を向けていた。
「なら、ちゃんと死んだかは確認したの?」
「いえ、火で燃やしただけなので、生死までは…」
「そう、でも今は警察や消防なんかがいると思うし、また明日ね。」
「なら、雪絵私たちも手伝おうよ!」、「また始まった…」
雪絵ちゃんが頭を抱えた。この真由美という少女は困っている人がいたら助けたくなる心情らしい。
「貴方その困っている人を助ける癖どうにかならないのと思ったけど、それが貴方のいいところだもんね。」
「えへへ〜」雪絵に褒められて嬉しかったのか真由美が照れくさそうにしている。
「真由美が手伝うって言ってるから私も手伝うわ。明日の放課後、連絡してちょうだい。」
一枚のメモ用紙を渡された。
「すみません色々とありがとうございます!」
その日は石田家に泊まることになった。
「すみません、頂きます。」
「いいの、いいのたんとお食べ。」
「そうだ!じいちゃん!静音ちゃんが困ってるの助けてくれる?」
「どうしたんだ。」、「家を燃やしたんだって!」、「そうか。」
真由美ちゃんのお爺さんは淡々と話、「静音ちゃん、火をした時はどうしたんだい」
「ガソリンを家の周りに撒き火をつけました。」
「そうか。」とだけ喋りテレビをつけた。
臨時ニュースが流れる。
「先程名家である藤本家の本邸が燃えているという通報がありました。本日21:00過ぎ、近くに住む男性から家が燃えているという119番通報を受けました。消防によりますと、油かなにかが撒かれで燃やされた可能性があるということです。
これまでに負傷者などはまだ不明ということで、消防が消火作業を続けています。警察は放火として調査を進める方向だと言うことです。」
「やっぱり、ニュースになったか、お前さんいいとこ出身なのにどうしたんじゃ。」
「それは…」、「言いたくなかったら言わんでもいい、じゃが手伝う限りにはそれなりの理由があるといえよう」
「私は虐待を受けていました。名家の生まれである私は常に完璧でなければならないと言われ生きてきて、やりたくも無いことを無理強いされ、ミスをしたら地下室に一週間は閉じ込められました。」
「ほうか、ならコイツらがこんな目に会うのはしょうがないの、自業自得というやつじゃ」
「いいんですか…?」、「可愛い孫の頼みじゃ、断ることは出来んじゃろ、それに困ってる人がいれば助けるが石田家の心情じゃからの。」
「ありがとう…ございます。」
「ありがとう!おじいちゃん!大好き!」
「私からも協力ありがとうございます。」
「ええんじゃよ、若い子がこれからの未来を作っていくのに、そんな未来を潰そうとするやつに生きる世の中など無いよ」
それだけ喋り、お爺さんはテレビを消した。
次の日の朝。
私たちは予定通り、本邸を見に行くことになった。
「よし、なら準備はいいな、行くぞ。」
「ゴーゴー!」
真由美ちゃんは助手席に座り遠足にでも行くかのようにウキウキだ。雪絵ちゃんは、後部座席に無言で座っている。
私は雪絵ちゃんの隣に座った。
「とりあえず、本邸に着いたら、藤本さんあんたが一人でいけ、それで問題なさそうならワシらに電話をかけろ。」
「わかりました。」
「それと、警察になにか聞かれたら、友達の家にいましたとだけ言え、それ以外は何も言うな。」
「わかりました。」
車に揺られ、目的地である本邸に着いた。
「ここまでありがとうございます。行ってきます。」
「頑張ってねぇ〜」、「連絡待ってるわ」
車を降り、本邸に歩いて向かうと、そこには焼け落ちた家があった、その光景を見て、最初に思い浮かんだのは奴らを確実に殺せたかだった。
「ちょっと君いいかな」
やはり警察が現場検証をしており、私に声をかけてきた。
「私の家が…どうして…」
私は悲劇のヒロインを演じる。
「まさか、藤本静音さんですか?」
「そうです、私が藤本静音です。家族はどうなったんですか」
私は涙混じりに警察に問いかけた。
「お家族はお父様とお母様はお亡くなりに、妹さんは意識不明の重体です。」
その言葉を聞いて、奥歯をギリギリと噛み締めた。
「妹は無事なんですね…良かった…父と母の遺体は見つかったんですか?」
「えぇ、二人とも妹さんを庇って死んでしまったようです。」
は!私が家に居ても絶対に助けなかっただろうな、まぁ、優秀な妹を自分の身を持って守れたのだから本望だろう。
「そうですか…遺体を見せて貰ってもいいですか?」
「いいですが、大丈夫ですか?」
「はい、自分の目で現実を受け止めたいんです。」
「わかりました、ご遺体は署にありますのでお連れします。」
「ありがとうございます。その前に少しだけ、お電話を掛けていいですか?」
「ええ、いいですけど、誰に電話を?」
「私のおじいちゃんにです。」「そうですか、わかりました。」
雪絵ちゃんに電話をかける。
「もしもし」、「どうだったの?」、「二人はもうダメで…妹だけ生きてるの…」、「あら、そうなのならまた連絡頂戴、迎えに行くわ。」、「うん、ありがと。」それだけ告げ電話を切った。
「すみません、よろしくお願いします。」
私は警察の車で署に向かった。
署につき、無事に両親の遺体を確認したら、もう夕暮れになっていた。
「すみません、ありがとうございます…私も少し気が落ち着きました。」
「少し聞きたいことがあるから、明日、署に来てもらっていいかな?」
チッ、めんどいな…だが、行かなかったら怪しまれる、殺るなら今日だな。
「わかりました。失礼します。」
頭を下げ、電話をかける。
「もしもし」、「大分時間が掛かったのね、今から迎えに行くわ」、「ごめんなさい、ありがとうございます。」
10分ほど経つと、一台の車が来た。
「すみません、またよろしくお願いします。」
「おう、で、どうだったんだ?」、「妹が生きています、櫻ヶ丘総合病院で集中治療を受けているということです。」
「そうか、なら行くとするか」
お爺さんは車を動かした。
30分ほどたち、目的地の櫻ヶ丘総合病院に着いた。
「ここが、櫻ヶ丘総合病院ね」
「ワシは車で待っておく、お前達で行ってこい」
「分かった!それじゃあ行くよ!雪絵!、静音ちゃん!」
「全く、せっかちな子なんだから」
「うふふ、私も早くあいつを殺りたくてうずうずしてるわ」
「二人して、全く…」雪絵が頭を困らせる。
「それにしても大きい病院だね、これじゃあどこに何があるか分からないよ」
「それなら大丈夫よ、この病院なら父が勤めていたから私も認識があるの、集中治療室ならこっちよ」
雪絵に先導されながら私たちは集中治療室に着いた。
「ここからは静音一人で行ってちょうだい。私たちは無関係だもの。」、「分かってるわ、アイツは私の手で殺らないといけないの。」
そういい、私は集中治療室の中に入った。
「すみません、ここからは関係者以外は入れないんです。」
「私は、藤本琴音の実の姉です。」
「ご親族の方でしたか、それは失礼しました、妹さんはあちらになります。」
「すみません、ありがとうございます。」
病室のドアを開くと、眠っている妹がいた。
私は喜びで口角がぐにゃっと上がり、狂気の顔となった。
「こんばんわ、私の可愛い可愛い妹。」
「お嬢様!」といきなり呼ばれた。
妹を殺せる喜びで、興奮して気づかなかったが執事の田村がいた、こいつも私を懲罰房にぶち込んだ復讐対象だ。
「あら?田村いたのね。」
田村は酷く脅えた様子だった。
「お嬢様、昨日の夜は何処にいたんですか…?」怯えた声で話しかけてくる。
「あら、田村知りたい?、あの業火を作り出したのは誰なのか、そして今からここで行われることを」
「ま、まさか…貴方様が徳光様と京香様をそして、実の妹である琴音様まで!」
「えぇ、そうよ、私が殺したのそして貴方もここで死ぬのよ」
とだけいい、私は田村の首を両手で絞める。
ギリギリと首が絞まっていき、じたばたしている田村に
「じゃあね、田村、地獄であのクズ共に宜しくね。」
とだけ伝えると田村は動かなくなった、その姿を見て私は
にっこりと笑う。
「キャァァァァァ!!!」という甲高い悲鳴が聞こえる。
「あら、琴音、目覚めたのね。」
「あ、あぁ、田村をこ、殺したの…?」
「えぇそうよ、見て分からないかしら」
「ひ、人殺し!だ、誰か!誰か助けて!」
動けない体を精一杯に動かし琴音がナースコールを押そうとするその手に私は傍にあったハサミを突き刺した。
「あぁぁぁぁぁ!!!痛い!痛いぃぃ!!」
「あらあら、いけないじゃない、看護師さんも疲れているのに呼んじゃあいけないでしょ、そのうるさい口にはチャックをしなきゃね」
私はガムテープを取りだし口を塞いだ。
「ねぇ、琴音、フラッシュバックって知ってるかしら?」
んー!んー!と必死に喋ろうとしている琴音。
「さすが才女と呼ばれただけあるわね、私はねフラッシュバックを強制的に複数回繰り返すと人間がどうなるのか知りたいの」
私はポケットからライターを取りだした。
ライターを見た琴音は恐怖で体が震え、失禁していた。
「ふふ、いい顔よ琴音、私が見てきたあなたの顔で一番最高に好きよ、その顔。」
「それじゃあ実験と行きましょうか。」
ライターを2、3回スり、火を灯す。
「んんんんんんんんんんん!!!!」
「ふふふ、アハハハハハハハハハ!」
琴音の目が死んだ、精神的ショックでダメになってしまったのだ。
「やっぱり、精神的ストレスは人を壊してしまうのね、いい勉強になったんじゃないかしらこ・と・ね」
さてと、この死体を下に持って降りるとしますか、首を絞めて殺したから外傷がなくて看護師に見つかることもないし。
よいしょと田村の肩を担ぎ、ロビーへ向かった。
「あら、その人どうなさったんですか?」
「付きっきりで妹を見ていたので、疲れて眠っているみたいです、それじゃあ失礼します。」
それだけ聞くと、看護師は何も言わなかった。
雪絵ちゃんと真由美ちゃんに合流する。
「あら、その人は?」、「私の復讐対象の一人、目の前に居たからついつい殺しちゃった。」、「そう、ならおじいさんに頼るといいわ。」、「そうなの?」、「私たちが殺した死体も彼が処分してくれたから今回もやってくれるわ。」、「凄いね、真由美ちゃんのおじいちゃん。」、「でしょでしょー!、私のおじいちゃんは凄いんだから!」
真由美が嬉しそうに笑う。
「それで、妹はどうしたの?」、「あぁ彼女なら精神を崩壊させてあげたわ、あの感じだとまともに生きることは出来ないわね」、「貴方、中々えぐい事するのね」、「そう?」
私は、遺体をおじいさんに見せると、
「はぁ、全くお前さんたちはよく人を殺す子達じゃ、まぁいいワシが処分するわ、トランクに詰めとけ。」
遺体をトランクに詰め込み、石田家に戻った。
帰る途中、空には巨大な満月が光っていた。
次の日、署に向かうと事件当日どこに居たかを聞かれたが私は、友達の家に泊まっていたとだけ喋り、その他は事件のショックで覚えていないとだけ話した。
私は復讐を完了し、二人の新たな親友が出来た。
こういった経緯があり、私達の仲間意識は根強いものとなったのだ、だから私たちと同じ境遇の人がいるなら見過ごすことは出来ない。
「とりあえず、私の家に連れた行こう。」
「そうね、あのスーパー爺さんなら何とかしてくれるわ。」
私たち四人は石田家に向かった。
「ただいまー!じいちゃん!ばぁちゃん!」
「おう、帰ったか…その男は誰だ?」
「私の運命の人!」
爺さんに雷撃が走る、「うぅ、可愛い孫にもついに運命の人が訪れたか…、じいちゃん悲しいわい。」
「それよりも!じいちゃんばぁちゃん!この子を暫くの間泊めてあげたいの。」
「なに!?それは納得する理由がなければこの家に泊めることはならん!」
「多分…この子虐待を受けていると思うの。」
「ほぉ、ならしょうがないの、ばあさん、見てやれ。」
「全く人使いの荒い人、ほら大丈夫?」
「うぅ」と小さく呻き声をあげる。
「とりあえず、横にしといたらいつか起きるでしょ、真由美布団出してやんな、あんた達も手伝いな」
「「「「はい!」」」」
お婆さんの指示の元、後藤くんの治療を済ませ、休ませる。
「う、うう…ここは…?」
知らない天井だ、しかも僕は何故か布団に寝ている。
「なんで布団に…?う!」
起き上がると体の至る所に痛みが走る。
「あ、起きたんだね。まだ体が痛むでしょ寝て起きなさい」
知らない老婆が話しかけてくる。
「いえ、もう大丈夫です。すみません、ここは一体?」
「あぁ、ここは私とじいさんの家だよ、あんたに分かるように言うならば、真由美の祖父母の家だ」
「それは!失礼しました…」
「いいんだよ、あの子たちが連れてきたんだからね」
「真由美さん達が僕のことを?」
「そうだよ、あの子たちはあんたにぞっこんだよ」
「え!?ぼ、ぼくに!?」
「そうだよ、陰気臭い感じだが、あの子達は何が良かったんだか、私にゃ分からんよ」
老婆からトゲのある言葉が投げかけられる。
たしかに事実なのだから言い返す言葉が見当たらない。
「それで、真由美さん達は今どこに?」
「あぁ、あの子達なら用事があると言って出ていったよ、多分そろそろ戻ってくるところだ」
「ただいま〜!」、「お邪魔しまぁ〜す」
下から声が聞こえる、「お?帰ってきたみたいだね」と老婆は立ち上がった。
「あんた達!少年が起きたよ!」
「え!?ばあちゃんホント!?」
階段と思われる方からドタドタと上がってくる音がする。
「大丈夫!?後藤くん!」
真由美さんと他の三人の女性が焦った顔でこちらを見ている
「あ、すみません、治療してくれて…お陰でなんとか」
!?、真由美が僕の体に抱きついてきた。
「あ、えっと、その、どうしました?」
「心配したんだよ!校舎裏で倒れてるんだもん!」
「体は大丈夫なの?」
雪絵さんが話しかけてくる。
「まだ、少し痛みますけど、一応動けます。」
「そう、なら見せたいものがあるの、唯華と静音が頑張ったおかげですんなり事が進んだわ」
「にしし」、唯華さんが満面の笑みを零す。
「こっちこっち!」真由美さんに手を引っ張られ、僕は近くにある豚舎に向かった。
母屋から少し離れたところに立派な豚舎があった。
中からはふごふごと豚の声が聞こえる。
真由美さん達に手を引かれ、僕はある扉の前に立たされた。
「それじゃあ行くよぉ〜!それ!」
二枚の扉が一気に開かれる。
扉の奥には、大きな布が二枚あった。
「これは…?」
「ちょっと待ってねぇ〜、それ!」
真由美さんが一枚の布をはぐる。
そこには、机に縛られボロボロになった衛藤たちの姿があった。
「じゃじゃ〜ん!凄いでしょ!唯華と静音が頑張ったんだよ!」
「こっちもみて!」もう一枚の布をはぐる。
そこには、フックに掛けられ、ズタズタになった両親の姿があった。
「父さん…母さん!」
「これは私と雪絵が!後藤くんのためと思って頑張ったの!」
褒めて!褒めて!と犬のように近づいてくる。
「お前たちは自分が何をやったか分かっているのか!?」
「そんなの当たり前じゃん、コイツらは貴方を貶した、つまりは私たちが初めて愛した男性を虐めた悪者、貴方の敵は私たちの敵、だからみんなで痛めつけたの。最後を飾るのは後藤くんの役目」
「イカれてる…、お前たちはサディストだ!この犯罪者どもめ!気持ちが悪い!もう二度と僕の前に現れるな!」
「私たちは貴方のためと思ってやったのに、なんでそんなことを言うの!私たちが初めて愛したいと思った人なのに、貴方のためだと思ってやったのに!」
「黙れ!このサディスト共が!二度と僕に近づくな!警察にも連絡してやる!お前たちなんか死んでしまえ!」
そう言い放つと、四人の少女たちは気を動転させていた。
唯華は泣き崩れ、静音が寄り添い合い、雪絵が小さく涙を零した。
よし!今だ!僕は拘束されている両親のもとに向かった。
今助けるから!父さん!母さん!
両親の側まで近づくと背中に何かが入ってくる。
鋭い痛みが背中から全身に伝わる。
「ぐわぁぁぁぁぁぁ!!」背中に包丁が刺さっていた。
「後藤くん、貴方は私の親友たちを泣かせた、唯華を静音をそして雪絵のことを。私は私の親友を貶すものを許さない。」
背中の包丁が抜き、私は後藤くんの上に馬乗りになった。
「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね」
滅多刺しにする、見境なく、体の至る所に刃を立てた。
返り血が全身にかかる。程なくして我に返る。
「ごめん…私許せなくて自分でも分かんなくなっちゃって」
「ホント貴方は馬鹿な子ね、でもありがと。」
「真由美〜、ごめん!こんなことさせてごめん!」唯華が泣きながら謝る。
私たち四人は後藤くんの血で出来た水溜まりの上で抱き合った。
その日も、天には巨大な満月が私たちの悪行を覗いていた。
残酷描写をちょいちょい入れてしまい、誠に申し訳ございません、苦手な方が居ましたらここに謝罪文を置いておきます。