29 馬鹿ップルの排除かと思いましたが
頭上では太陽が白熱灯どころか、小さな恒星そのもののように燃え盛り、周囲の空気を焼却してしまうのではないかと思えるほどの凶暴な熱を撒き散らしていた。気温はとうに100度を突破し、皮膚を刺す程度ではなく、じりじりと焦がし、肉の奥にまで熱が染み込んでくるような灼熱の風が横殴りに叩きつけてくる。舞い上がった砂粒は金属片の弾丸さながらに頬へぶつかり、視界のすべてが巨大な炉に投げ込まれた世界のように揺らめいていた。
ここで発生する砂嵐は《毒の風》と呼ばれ、巻き上がる微細な塵をたった一息吸っただけで即座に窒息死すると言われている。
というものの、そもそもこの地帯は生者が歩くべき場所ではなかった。スキル『自己再生』を持たぬ者は、私でさえ数分と保てない、まぎれもない“死の世界”なのだ。
藍倫たちと辺境都市で別れたのち、私は馬型の機械人形にまたがり、ゆったりとした歩調で灼熱の砂原を踏破していた。
地表は過熱しすぎて空気が揺らぎ、遠景は蜃気楼となって溶け、陽炎に飲まれて輪郭を失っていく。太陽光は無数の刃の束となって視界へ刺し込み、見渡す限り金色の荒野――影すら焼き払われてしまったのではないかと思うほどの静寂と熱気が、終わりもなく広がっていた。
そのときだった。
陽炎がメラメラと踊る砂丘の向こう側で、ひときわ大きな砂塵が巻き上がったのだ。
何かが近づいてくる……最初は低い振動のような音だけだったが、次第に明確な接近音へと変わり、熱気の中で異質な存在感を強めていく。
やがて姿を現したのは、砂地を滑るように走る古代文明の乗り物――『バス』。
大量の旅客輸送を目的とした、いまではほとんど失われた技術の遺物ともいえる機構だ。稼働する個体はわずか数台で、そのすべてが人間の上位種たるAIによって管理されていると聞く。というものの、こんな灼熱の砂漠で出くわすとは想像もしていなかった。
バスは私の機械人形と並走しながら減速してくると、砂煙を散らして静かに停止してきた。
一体、何の用だろうか。
ガラス越しに車内へ目を凝らすと、運転手とバスガイドらしき人物が2名だけ。客の影はまったくない。
プシュッ――。
空気が抜ける音とともに入口扉が開いた。
灼熱を遮るように黒い日傘を広げ、ゴーグルとガスマスクを装着したバスガイド姿の女性が、儀式めいた所作でゆっくりと降り立った。異常なまでの熱と静寂の中、彼女の動きがひどく鮮烈に見えた。女性――山茶花は美しく姿勢を正し、深々と頭を下げながら手紙を差し出してくる。
「私は凹凸カンパニーの長距離バスでガイドをしております、山茶花と申します。聖女、三華月様でいらっしゃいますね……間違いございませんか」
「はい。私が三華月です」
「教国の最高司祭様よりのお使いで参りました。手紙をお預かりしておりますので、どうぞお受け取りください」
最高司祭の名を聞いた瞬間、背中を汗とは違う感覚がつっと走った。
どうせ面倒ごと――つまりクエスト依頼なのだろう。厄介なのは目に見えている。
というものの、最高司祭は神格こそ私より低いが、かつて私の不始末を何度も尻拭いしてくれた恩人だ。その者からの頼みであれば、簡単に断るわけにはいかない。
私は機械人形から降り、手紙を受け取る前に山茶花へ礼を込めて頭を下げた。
「こんな灼熱の地にまでお越しいただき……本当にお疲れ様です」
山茶花から受け取った封筒の中身を確認すると、そこに書かれた内容とは……
———““砂漠を徘徊し続ける伝説の《移動都市グラン・グラン》に囚われた奴隷たちを解放せよ””、という指令が記されていた。
奴隷制度は教国の強い働きかけで帝国でも廃止されつつあり、取引拠点の一つとなっているのが、浮遊都市だという。
奴隷商人以外は辿り着けないほど秘匿され、『真眼』を発動させなければ私でさえ位置の特定すら困難――いや、ほぼ不可能だろう。
いっそ失敗扱いにしてしまおうか……そんな考えが脳裏をかすめた、その瞬間…、
バスガイドの山茶花が日傘を掲げ直し、バスの扉へ静かに手を添え、乗車を促してきた。
「三華月様。移動都市グラン・グランまで、当バスにてお送りいたします。どうぞご乗車くださいませ」
なるほど、そういうことだったのか。
というものの、これはどう見ても信仰心を稼ぐ依頼ではない。しかし、人を売り買いする制度を放置する気にもなれない。ならば――行くしかないだろう。
私はバスの段差を踏みしめ、山茶花の後ろについて乗り込むと、次の瞬間、背中に氷柱を押し当てられたかのような悪寒が走った。
運転席に座っていたのは、圧倒的な“不快感”を凝縮したような存在だった。
腹はでっぷりと膨れ、怠惰を形にしたような体型。肩には目に見えるほどフケが積もり、肌は砂漠以上に荒れ、歯は黄ばんでいる。
そして何より――湿り気を帯び、粘りつき、肌を這うような視線。
その男は、全身を舐め回すかのような嫌悪の極みの目つきで私を見てくる。
生理的嫌悪というものの、ここまで鮮烈に反応したのは久しい。
表情を崩さぬよう努めながら、私は無言で会釈し、視線を切って奥の席へ向かった。
車内は外の地獄とは正反対に、心地よい温度と湿度が整えられており、緊張で固まった体が一気に緩んでしまいそうだった。
左右の窓際には広めの2人掛けシートが並び、長距離移動に耐えうる柔らかさを備えている。私は中ほどの席に腰を下ろし、外に残した機械人形へガラス越しに手を振った。
——クエストを終えたら、また迎えに来てね、と。
やがて山茶花が前方に立ち、ゴーグルとガスマスクを外して柔らかく微笑むと、明るい声を響かせてきた。
「こちらは浮遊都市グラングラン行きのバスです。本日はご利用いただき、誠にありがとうございます。バスガイドの山茶花と申します。年齢は……秘密で、独身です。しばらくの間、どうぞよろしくお願いします」
澄んだ声でそう告げた彼女は、秘密にした年齢こそ明かさなかったものの、外見から判断するに30歳前後くらいか。美人とまではいかないが、世の男どもが喜ぶであろう――いや、むしろ目を奪われずにはいられないであろう――過剰すぎるほど豊満な胸部が制服で強調されている。その姿は、灼熱の砂漠という死の世界に現れた蜃気楼のように非日常的だった。
山茶花の自己紹介が終わると、不快感の塊でしかない運転手が、なぜか“シュタッ”と勢いよく立ち上がってきた。まるで自分を主役だと勘違いしている三流役者のような動作だ。山茶花は作り笑いとも取れる柔らかい表情を浮かべ、その男を紹介し始める。
「本日、私と三華月様とご一緒させていただく運転手を紹介します」
「まいどぉ。わては運転手の五位堂といいます。どうぞよろしゅう。年は40才で、既婚者ですんで」
言うが早いか、五位堂は片目を閉じ、私へウインクを放ってきた。
ナルシスト系イケメンがよくやる、寒気のする“キメ顔”の仕草。それを、小汚い中年男が真似するとどうなるか――結果は単純だ。気持ち悪さが乗算されるだけである。
……それよりも、もっと気になるものがあった。
山茶花が五位堂に向ける視線が、妙に熱い。
恋慕にも執着にも似た、じっとりとした眼差し。
まさか――この二人、不倫?
独身のバスガイドと、この怠惰の塊のような男が……?
信じ難いが、密閉空間で長時間働く男女の関係は、世の中いつの時代も怪しいものだ。
とはいえ、確認はしておくべきか。
もし黒なら、『信仰心という』名の、ちょっとした小遣いくらいにはなるだろう。
私は控えめに、声をかけることとした。
「運転手さんに質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
「なんでっか。可愛い女の子からの質問は緊張しますわぁ」
ニィッ、と黄ばんだ歯を『カキーン』と鳴らしそうな笑顔で見せつけてくる。
やめてほしい。精神的疲労が倍増する。
さて、ここから本題だ。少し遠回しに探りを入れてみる。
「ご存知とは思いますが、『不倫行為は大罪』ですよ」
その瞬間――
五位堂は口をぽかんと開き、まぬけな顔を晒してきた。次いで、砂漠の炎熱のように突然、全身から汗が吹き出している。
山茶花の目にも明らかな動揺が宿る。
犯罪者がよく見せる挙動だ。
冬眠から覚めた爬虫類のようにぎこちなく動き出した五位堂は、うわずった声で反論してきた。
「不倫が罪な事くらい分かっていますよ! わてと山茶花はんの関係を疑っているんですか。一部がそうやからといって、皆がそういうわけでは無いでっしゃぁろう。そ、そうや。証拠だ。証拠はあるんでっか!」
……典型的すぎる。
「証拠はあるのか」と騒ぐのは、決まって黒の者。
図星を突かれて喋りすぎるのも、いつものパターンだ。
この二人が真っ黒であることは確定だろう。
信仰心を稼ぐ素材としては最底辺だが、小遣い程度にはなるかもしれない。
いいだろう。五位堂、あなたは討伐対象候補に決定だ。
覚悟なさい。尻尾は必ず掴んで差し上げましょう。
———————
バスに揺られながら窓外へ目を向ければ、広がるのは四方八方どこまでも続く砂ばかり。
粉のような砂が風に削られ、海の波のような模様を描く。
大きな砂丘は山のようにそびえ、陽炎の向こうで揺れる。
バスはなるべく平坦なルートを選んでいるのだろう。
横Gを抑えるようにゆっくりと蛇行しながら、丁寧に進んでいた。
意外にも五位堂の運転技術は見た目と反比例して優秀らしい。これだけは認めざるを得ない。
走り始めて20数分が過ぎた頃、山茶花がアナウンスを流してきた。
「砂漠の地下にサービスエリアを発見しました」
サービスエリア――
周囲に店舗が存在しない場所に設けられ、商業機能が集約された古代施設。
地中に密閉されていることを考慮すれば、当時の姿がそのまま保存されている可能性もある。学術的には無限の価値があるかもしれない。
もっとも、私の信仰心には一滴も影響しないため、興味は砂粒ほども湧かない。
山茶花――もとい《バスガイド》が、淡々と続けてくる。
「移動都市グラン・グランに向かっているところではありますが、観光業法の規程により、これより発見したサービスエリアの調査へ向かいます。お急ぎのところ申し訳ありませんが、どうぞご理解、ご協力いただきますよう、お願いいたします」
急ぐ旅でもないし、寄り道がひとつやふたつ増えようと痛くも痒くもない。そう気楽に構えていた矢先のことだった。
————バスが、まるで崖から飛び降りるかのような勢いで砂面へ斜めに突っ込み、そのまま地中へと滑り落ちていく。
ちょっと待て。いや待て。どういう理屈だ。
このバス、まさか砂を液体のように突破して潜航できる仕様なのか。
窓の外に目を凝らせば、景色はすでに濃厚な褐色の奔流だけが支配していた。砂粒が万単位で崩れ落ちるカーテンのように視界を覆い、上下左右の感覚さえ曖昧になる。
車体はまるで巨大なモグラが掘り進める地中トンネルに引きずり込まれたかのように震え、ザリザリと金属を削る振動が床から脚を通して骨に響く。
この深度で万が一停止したら、生き埋め確定——というものの、バスは速度を一切落とさず、砂の抵抗など存在しないかのように突き進み続けていた。推進力の異常さはもはや狂気の域だろうか。
強引すぎる潜行走行のせいで、車体は誰か巨大な機械腕に鷲掴みにされているような激震を繰り返し、天井の蛍光灯すらノイズのように明滅した。
金属同士が軋み擦れる嫌な音が途切れなく続き、このまま分解されるのではないかという錯覚すら覚える。
肝心の運転手といえば、すでに運転席から飛びのき、半狂乱で両腕を振り乱して叫んでいた。
「何が起こきてるんや!!」
そらそうだろう。運転手の不在にもかかわらず、バスは勝手に潜航中。
つまりこれ、超高性能の自動運転。砂漠での軽快な走行も、すべてはバスのおかげだったということか。
ほんの数分前、私はあのだらしなさ極まる中年親父の熟練した運転技術を褒めてやろうかと一瞬でも思いかけていたのだが……現実は非情。
親父はただの駄目な住人のエリート。人は見た目で判断してはいけないというものの、このケースに限っては見た目どおりだったのかもしれない。
とはいえ、ここで私にできることもない。
こうなれば、バスに身を委ねるしかないだろう。
酸欠で気絶する前に目的地へ着けばありがたいのだが——その瞬間だった。
バスが轟音とともに砂層を突き破った。
――――視界が弾けるように開ける。
胸を圧していた重たい空気が一気に抜け、巨大な地下空洞へとおどり出た。
まるで地下都市の入口へ放り込まれたかのような圧倒的な解放感が肺の奥を震わせる。
広大な駐車場には誰ひとりいない。
その先には間口の広い2階建ての建物が、重厚な静けさを纏って鎮座していた。
太陽のない地下世界のはずなのに、整然とした人工照明が白光を放ち、空気中の塵すら見つからない異常な清浄さが空洞全体を不気味に際立たせている。
学術的価値は相当なものだろうが、信仰以外に興味のない私からすれば、ここはただの巨大遺物置き場か何かだ。
外の景色に目を凝らしてじっと観察していると、バスガイドの声が車内にふわりと響いてきた。
「バスはサービスエリアへ、無事に到着いたしました。規程にのっとり、運転手が外の安全を確認してまいりますので、お客様におかれましては、車内から出ないようお願いいたします」
その声は、どこか抑えたけれども丁寧さが滲むアナウンスで、耳に届くたびに緊張の糸が微かに張りつめるのを感じる。
席の奥で、運転手の親父がゆっくりと立ち上がると、両手を広げ、まるで舞台に登場するかのようなポーズを取り始めた。するとバスガイドは、少し古びた装備品を手際よく運転手に取り付けていく。
見ていると、どこか子供がお母さんに服を着せてもらう光景を思い起こさせる。いや、しかし違うのだろうか。バスガイドはやらされているわけではなく、むしろ楽しそうにしているように見えるのだが、その微かな笑みが、不気味さ際立たせている。
外の視界に目を戻すと、地面を這う影がぞろぞろと姿を現してきていた。———体長は優に1mを超える、サソリ型の魔物である。数を数えようとしても、少なくとも100体、多ければ200体以上はいるだろうか。
あの魔物達の姿は見覚えがある。以前、機械兵の世界の迷宮で遭遇したやつらだ。あの時、天弓を使い、徹底的に殲滅したと思っていた。しかし……生き残りが、砂漠の地下にひっそりと潜んでいたということか。
単体で見ればC級程度の魔物だ。警戒は必要だが、個々に脅威となるほどではない。とはいうものの、知能が高く、集団で戦術的に攻めてくる点が非常に厄介だ。この規模の群れを単独で相手にするなど、A級以上の実力がなければ瞬く間に叩き潰されてしまうだろう。
その運転手は、妙に爽やかさのない笑顔を浮かべ、私の方へ親指を突き立ててきた。
――何だ、その自信満々な表情は。
この状況下で、中年の底辺住人めいた親父が余裕たっぷりにキメ顔をつくっている。まさか、あの「ゴミスキル」と笑っていたものが、実は最強だった、などとほざきながら、この場を無双するつもりなのだろうか。
念のため、実力を確認しておこうと考え、私は慎重に様子を窺った。
「お二人に、質問があるのですが……よろしいでしょうか?」
「なんでっか。見てのとおり、外の安全確認と装備の点検をしているところですが……まぁ、せっかくだし聞きましょうか?」
黄色い歯をカキーンと光らせる親父。質問する気力はジェットコースターのように下降していく——とはいえ、同族殺し扱いで信仰心に響くのは避けたい以上、無視はできない。
「バスのまわりに現れているサソリ型の魔物は見えておりますか? あれは単体にしてC級相当です。あれだけの数になると、A級相当以上でないと対応は困難となるでしょう。本当に外へ調査に行けるのでしょうか」
「美人さんから直接の質問やさかい、最後まで聞きましょう……でも、正直な話、大丈夫なわけがないでしょう!
わての実力はF級です! 勝手に殺さんといてください!!」
唾を飛ばしながら怒鳴る親父。その自信満々で爽やかさゼロの表情は、むしろ不気味さの増幅材だ。山茶花は装備を取り付け終えたようだが、どう見ても無駄な努力にしか見えない。F級——スライムレベル。そんな人間が規程通り外に出るなど無理に決まっている。では一体どうやって切り抜けるつもりなのか、瞬間、理解できない光景が目の前に広がる。
運転手は満面の笑みで山茶花に向けて誇らしげに敬礼する。そして、まるで舞台の寸劇のように言い放った。
「只今、周辺の確認を終えてバスに戻りました」
「運転手さん、お疲れ様です」
いやいやいや、今外にすら出てなかっただろう。虚偽報告にもほどがある。山茶花も自然に合わせているし……なんだ、この業務改ざん劇場は。私が呆れつつ眺めている間にも、二人はさらに続ける。
「バスの周りにはC級相当のサソリ型の魔物がワサワサと現れており、A級相当の実力が無いと対応は難しいと思われます。規定に従い、応援要請をお願いします」
「ここは地中のため、応援要請は届きません。どうしたらよいでしょう」
「「………」」
無意味な劇が静かに終幕した。
サソリ型はついにバスへ接触し、外殻をガサガサと掴む音を立て始める。
車体は大波に揺られる船のように上下左右へと大きく揺さぶられ、鉄が軋む悲鳴が続く。
外からは不快な金属質の声が響いてきた。
≪おい、こら、出てこんか!≫
≪何ビビっとんねん!≫
≪いてこましたるぞ!!≫
挑発混じりの濁声が響くたび、空気が針のように肌を刺す。
運転手はアクセルを踏み込んで逃げようとしているが、バスは魔物に持ち上げられ、車輪は虚しく空転するだけ。
山茶花が震える声で私へ説明する。
「三華月様。このバスは防御能力がS級です。絶対壊れないので、そこは安心してください!」
確かに防御はS級だろう。だが攻撃性能が皆無では包囲を突破できない。
さて、どう動くべきか——と考えた瞬間。
脳髄に強烈な光が落ちてきた。
神託だ。
――――――――――――このサービスエリアに放置されている、世界を滅ぼすことが出来る兵器を排除せよ。
YES_MY_GOD。
こんな場所に世界終焉級の兵器?
本来はバカップルの不倫現場でも見つけて軽く神託を降ろすつもりだったのに……これは嬉しい誤算というものか。
胸の内側で、じんわりと熱が上がり始める。
戦場の匂いが、確かに近づいていた。




