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ブラックな聖女『終わっことは仕方がないという言葉を考えた者は天才ですね』  作者: ヨシムラ


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召喚リスト③

ざっと見渡すだけでも、そこに並ぶ死霊騎士団の数は100騎を軽く超えているだろうか。

静寂を切り裂くように、メインストリートの奥へ一直線に影が伸びている。

――彼らは突撃寸前の陣形を整え、こちらをまっすぐ睨み据えていた。只事ではない、重苦しい気配が辺りに満ちている。


対峙するのは、上から目線で語りかけてくるあの魔剣に召喚された“円卓の騎士たち”。歴史の深淵から無理やり引きずり出された英霊たちだ。


その中でも、S級相当の個体は15騎。他の者たちもA級相当という錚々たる布陣ではあるが、魔剣のクラスアップ効果により全員が騎馬隊として強化され、戦闘力はもはや手がつけられない領域に達していた。さらに全個体の頭上には魔法陣が常時展開されており、破壊されようとも魔剣もろとも自動召喚で復活する――まさしく“無限の軍勢”と呼ぶにふさわしい存在であった。


一方、こちら側は――勇者と強斥候があっさりと後退し、気配を消してどこかの建物の陰に潜み込んでいる。勇気ある撤退は時として賢明な選択なのだろうが、その勇気を微塵も持たない者には、まったく縁のない話となるのだろう。


さて、問題は魔剣と死霊騎士団をどう壊滅させるか――だ。


機械少女の声によると、純白の翼竜が“汚名返上”のため、自ら召喚を申し出てきていた。

実際に目の前には、いつもの召喚リストが淡く浮かび上がっている。


―――――召喚リスト――――

・ペンギン : 可

・四十九  : 安眠中

・月姫   : 可

・メタルS : やる気max

・土竜   : 呼ばないで下さい

・機械少女 : 可

・純白の翼竜: 可

――――――――――――――


この中で最も計算できるのは、やはりペンギンになってくるだろう。性格に難ありとはいえ、実力は折り紙つき。半神すら撃退した実績があるのだから、信頼度は絶大である。

次に頼れるのは月姫。戦闘力も高く、何より性格がまともであることが評価できる。

四十九は面倒な奴ではあるが、いざという時には頼りになる存在だ。


逆に、土竜とメタルスライムは自爆の危険が高く、味方に被害を及ぼす可能性があるため、呼ぶべきではない――それが私の判断であった。


そんな考えを察したかのように、機械少女の声が脳内に響く。


≪三華月様。純白の翼竜を召喚してもよろしいでしょうか?≫


『承知しました。召喚の件、よろしくお願いします』


ほとんど間を置かず、前方では死霊騎馬隊が突撃態勢を完成させつつあった。蹄が大地を叩く振動が全身に伝わり、海底都市の水面さえ揺れるかのようである。

その瞬間、私の右手側の地面が淡く光を帯び始め、巨大な魔法陣がゆっくりと浮かび上がった。円形の陣は次第に光を増し、海中とは思えぬ濃密な魔力の霧が周囲を覆い尽くす。


魔法陣の中心部から、潜水艦が海面へ浮上するかのように、圧倒的な存在感を持つ影がせり上がってきた。

全長はおよそ5m。折りたたまれた純白の翼がまず目に飛び込み、その背後には滑らかで光沢のある金属装甲が続く――純白の翼竜、その姿がついに現れてきたのである。


名前 : Ultimate_Metal_Wing_Dragon

通称 : 純白の翼竜

力 : D

速 : D

耐 : S++

Skill : 無限重力世界、次元刀


≪三華月様。先日の失態を挽回するチャンスをいただき有難うございます。ここは『無限重力世界』を発動し、敵を殲滅いたします。どうかお任せ下さい≫


金属の響きを帯びた声が直接頭に届く。頼もしい、実に頼もしい。

機械少女が造り上げた最高傑作であり、その戦力は地上最強クラス――ドラゴン級。存在感だけで周囲の空気がざわめき、S級を軽く超えているのが肌で感じられる。


翼竜が口にした“先日の失態”とは、次元を斬り裂きミミックたちを異世界送りにしてしまった事件のこと。過去は過去として、今は目の前の局面をどう切り抜けるかが問題である。


死霊騎馬隊はすでに突撃の体勢を整えている。悠長に構えている時間はないだろうが、念のため『無限重力世界』の効果くらいは確認しておくべきところか。


「純白の翼竜。あなたに質問があります」


≪はい、三華月様。何なりとお聞きください≫


「あなたのスキル『無限重力世界』。その効果について教えてもらえないでしょうか?」


≪文字通り、重力世界を創り出す能力でございます≫


「重力世界……なのかしら」


≪はい。物質だけでなく光さえも吸収する閉鎖空間です。内部からの脱出は不可能。一つの世界を丸ごと呑み込み、そのまま終焉へと導く――それが『無限重力世界』でございます≫


世界の終焉、なのか。

いきなり物騒にもほどがある言葉を突きつけられ、胸の奥がざわつく。

一般的に“ブラックホール”と呼ばれる現象と同義だろうと理解した瞬間、背筋に冷たいものが走った。やはり、そういう類の力であったか。これは絶対にoverkillするタイプのやつだろう。


とはいうものの、常識的に考えれば、無限重力世界を延々と発動し続けるわけではない……と思いたい。

きちんと敵を処理した後に消滅してくれるのなら、問題はないはずだ。

そう、処理さえきちんとしてくれれば――というものの、胸の奥に嫌な予感がこびりついて離れない。ここは念のため、確認しておくべきだろうという思いが湧いてきた。


「純白の翼竜へ再度質問です。その重力世界が、敵を殲滅する効果に優れていることは理解しました」


≪有難うございます≫


「発動後の処理について教えて下さい」


≪発動後の処理とは、どういうことでしょうか?≫


「敵を殲滅させた後、その無限重力世界はちゃんと消滅するのかを知りたいのです」


≪えっ。消滅なんかしませんよ!≫


「……重力場は、そのまま放置するということですか?」


≪はい。放置します。一度発動したら誰にも止めることが出来ません。なんせ最強ですから!≫


「純白の翼竜。あなたにも無限重力世界を止めることは出来ないのですか?」


≪もちろんです。何もかも吸収する重力場です。対応出来てしまう程度のものでしたら、それはもう最強と呼べるものではありません≫


「その話によると、『無限重力世界』を発動させると、この海底都市は消滅するのではないかと聞こえます。思い違いなら訂正を」


≪その通りです。それどころか、どんどん大きくなっていきます。つまり海底都市はおろか、最終的にはバベルと塔の全てをも飲み込むものと思います。なんせ、最強スキルですから。ガハハハハー≫


「…………」


≪三華月様。脱出ルートも確保しているので、ご安心下さい。この世界が消滅する前に、我々は次元刀にて別世界へ離脱します≫


そうか。この世界は消滅するのか――って、いや、放置はまずいだろう。

社会の懸案事項でよく聞く、“夫が料理を作るだけ作って片付けをしない問題”と同じではないか。

後処理ができないのに最強を名乗るとは、なんというか……この翼竜、全然駄目じゃんという思いが胸に浮かぶ。


汚名返上に来たはずが、さらに汚名を積み上げてどうするつもりなのか。

まー、安定といえば安定の返答だったのかもしれないか。能力だけは高いのか、それとも不完全なのか――最強戦力であることは疑いようがないというものの、用途が限定的すぎて使えないこともはっきりした。


召喚の扱いは、メタルドラゴンや土竜と同じ枠に分類しておこう。

この世界の管理人と融合した機械少女へ、召喚解除を依頼するしかないだろう。


≪機械少女。聞こえているなら返事をして下さい≫


≪はい、三華月様。御用件を伺います。もしかして、純白の翼竜の召喚を解除する命令についてでしょうか?≫


≪はい。事故が起きないうちに、そうして下さい≫


機械少女は、私と純白の翼竜の会話を聞いて不安になったのだろうか。

こちらの意図を察したかのように、迷うことなく作業に移る姿が目の前で小さく震えていた。

放置しておけば信仰心に影響するかもしれないという懸念が、機械少女の行動に拍車をかけたのだろう。


私は小さく頷き、少女は即座に召喚解除を開始した。


≪三華月様。純白の翼竜の召喚を解除させてもらいます≫


≪どうしてですか。何故、私が戻されるのでしょうかーー≫


純白の翼竜が断末魔のような声をあげた。

光の魔法陣が輝きを増し、翼竜の巨体がゆっくりと沈んでいく。

メタルスライムと同じ系列のにおいがする……おそらく、二度と召喚することはないだろう。


その一方で、目の前では死霊騎馬隊が整然と陣形を組み、こちらへ向けて突撃を開始していた。

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