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ブラックな聖女『終わっことは仕方がないという言葉を考えた者は天才ですね』  作者: ヨシムラ


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203/212

とりあえず生ビールみたいな感じで

ここは水深100mに築かれた海底都市。

その規模は10km四方──まるで海の底に沈んだ巨大な王都のような壮麗さである。


中央通りは幅20mほど。真っ直ぐ伸びるその道を、全身を甲冑で固めた屈強な騎士たちが、まるで壁のように立ち塞がっていた。


金属同士が擦れる“ギギギ…”という音が、水圧に押し潰されるように歪みながら響き渡る。

その数は100を優に超え、肌にまとわりつく圧迫感は、息を呑むほどだ。


剣聖として名高いランスロット卿を筆頭に、かの有名な円卓の騎士たちも揃っている。

S級相当が15名、残りも全員がA級相当。普通の人間なら、この布陣だけで戦慄するだろう。


というものの、彼らは全員死霊。痛覚など存在せず、完全に滅びるまで動き続ける──厄介で厳つい連中だ。


その軍勢の中心──

護られるように囲まれながら、死霊使い『魔剣』が地上3mの高さにふわりと浮かんでいた。

周囲の空間には、淡い光を“ボウッ…”と放つ魔法陣が重なり合うように展開され、静止している。


どうやら魔剣と死霊騎士団は、破壊されてもこの魔法陣から即座に召喚され、再び戦列に復帰する仕組みらしい。


その事実を誇示するかのように、魔剣の高笑いが水中を震わせるように響いた。


「我の軍勢は破壊されても何度でも蘇る。お前は無限の騎士たちと戦うことになるのだ。屈服するなら今のうちだぞ。ガハハハハ!」


先ほど“絶対に許さない”と宣言していたはずなのに、屈服すれば許してくれるというのかしら。

いや、悪党というものは、謝罪されても決して許さないものだ。気分次第で言葉がコロコロ変わるのは、彼らの常套手段だろう。


その言葉に反応したのは、私の背後でじりじりと下がる勇者と強斥候だった。


「おい、三華月。ここは和平交渉に応じるって選択肢もアリなんじゃないのか?」

「さすがに無限っていうのはヤバくないっすか?」

「誤解するなよ、俺は別に自分が助かりたいわけじゃないんだぜ?」

「そうっす。なんでも力で片付けようとするのは三華月様の悪いところっすよ」

「たまには聖女らしく、平和的な解決策を探るのも良いんじゃないのか?」

「忘れてるかもしれませんけど、三華月様は聖女なんすよ!」

「俺達は遠くからお前を見守ることにするぜ!」

「三華月様、マジで武運を祈ってるっす!」


……何とも心のこもっていない、上っ面だけの言葉だ。

2人は私を置き去りにするように、ズルズルと後退していく。

まー、いつも通りの安定した臆病ムーブだろう。


とはいえ、足手まといの連中が下がってくれるのはありがたい。

さて──眼前の死霊騎士団への対処だ。


アンデッドとは相剋の関係にある聖属性、しかも闇耐久を得ている私にとって、死霊騎士団は思ったほどの圧はない。

神の加護が降りている今、一般的なS級相当は雑魚扱い。アンデッドなら、さらにその下──つまりクソ雑魚に等しい。


危険が迫った際に発動するスキル『真眼』も沈黙中。

不安要素はないだろう。


問題は──無限に復活する魔剣と円卓の騎士たちを、どう仕留めるかだ。


100以上ある魔法陣ごと、魔剣と騎士たちを一斉に破壊すれば、全滅に持ち込める──はず。


その手段についてだが……どうしたものかしら。


まず思いつくのは、神々が使用していたという全体攻撃スキル『天空スキル』。

敵を手加減なしで殲滅する威力はあるものの、問題は“強すぎる”という点。

ここは海底都市。勇者や冒険者たちがいる状況で、都市の結界を壊すわけにはいかない。同族殺しになりかねない。論外だろう。


となれば、『無敵時間』を発動し、静止した時間の中で全個体を確実に破壊するしかない。

神託が降りている今、迷っている暇はない。


いいでしょう。

ここは『無敵時間』で軽く殲滅して差し上げましょう。


意識を集中させ、脳内処理速度を跳ね上げようとしたその時──

バベルの塔と融合した機械少女から声が届いた。


≪三華月様。純白の翼竜が、汚名返上をしたいと申し出ております≫


名前 : Ultimate_Metal_Wing_Dragon

通称 : 純白の翼龍

力 : D

速 : D

耐 : S++

Skill : 無限重力世界、次元刀


純白の翼竜とは――次元そのものをスパッと斬り裂き、ミミック達を異世界へ送り飛ばした張本人である。

その回収のため、機械少女と共に私はここへ降り立っていた。


その実力は折り紙つきであるものの……

召喚したとしても『次元刀』の使用は完全に禁止だろう。

そして、もうひとつのスキル『無限重力世界』――その名前だけで空気が重くなるような威圧感があり、とてつもない威力であることは疑いようがない。


魔剣および死霊騎士団に試し撃ちしてみるのも一つの手、なのだろうか。


仮に純白の翼竜が魔剣達の一掃に失敗したとしても、最悪、私が『無敵時間』で押し流してしまえば問題ないはずではあるのだが――。


とはいうものの……。

その一撃で二次災害が発生する可能性は無視できない。塔の階層ごと崩れる、なんてことになっては面倒である。

どうしたものかと考え込んでいると、機械少女がこちらの思考を読み取ったかのように口を開いてきた。


≪三華月様。人は失敗の経験を糧に成長すると言います。チャンスを与えるのが上司の務めなのではないでしょうか≫


言われてみれば、その通りである。

純白の翼竜は、気づけば私の眷属であり、部下のような立場にある存在だ。任務の責任は上司である私が負うべきなのだろう。

というものの、そう考えると、ここで申し出を退けるのも何か筋が通らない。


そんな折――ギシッ、と刃鳴りにも似た音が空気を裂き、魔剣がこちらを睨みつけてきた。


「聖女。お前、なにかを画策しようとしているな?」


「画策というほどのものではありません」


「何だ。何をしようとしているのだ。聞いてやる。言ってみろ!」


「人にお願いする時の態度とは思えませんが……まあいいでしょう。純白の翼竜という個体を召喚しようかと考えていたところです」


「純白の翼竜だと? なんだ、その純白の翼竜というのは?」


「はい。皆さんを軽く全滅させる戦力を持っている個体です」


「ガハハハッ! 我の軍隊が無限であることを理解していないようだな!」


「では、現在展開中の全魔法陣を含めて、全攻スキルで全滅させようかと考えています」


「今……なんと言った? 全攻スキルを使うだと?」


「はい。『無限重力世界』で、あなたを含めて一斉に仕留めてもらおうかと」


「無限重力世界だと……なんだ、その物騒な響きのスキルは?」


「正直いって、私もよく分かっていません」


「おい! スキル効果を把握しておらんのか! いざという時のために、何故事前に確認していない!」


「はい。なので、あなた達を試しに殲滅してみようかと思っています」


「おい待て! 我を殲滅するのに“試し撃ち”とはどういうことだ!」


「はい。効果を確認するための試し撃ちです」


「我を舐めるのも大概にしろよ!」


魔剣の怒声が塔内でビリビリと震え、石壁に響き返る。カンッ、と刃が小さく鳴った気すらする。

質問に素直に答えただけなのだが、何が気に障ったのだろうか。


“俺様キャラ”とは、煽り耐性が薄く、怒りの沸点がほぼ地表にあると聞く。

何を言っても、とりあえず生ビールの勢いで怒ってくる性質なのだろうか。というものの、やはり扱いづらい。


そんなことを考えていた矢先――魔剣が隠し持っていた切り札をここで切ってきた。


「我の真の力を見せてやろう! 我は円卓の騎士達を騎馬隊へ――『クラスアップ』させる!!」


ビキビキビキッ、と空気そのものが裂けるような音が響き、死霊騎士団の足元に黒紫の魔法陣が広がる。

次の瞬間――ボウッ!

亡霊の炎が立ち昇り、濃霧のような瘴気から死霊馬が姿を現した。


ドンッ!


騎士達は一斉にその背へ跨り、甲冑がガシャリと鳴る。

こうして、死霊騎士団は騎馬隊へと進化を遂げ――塔の空気は、先ほどより数段重い殺気で満ち始めていた。

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