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187 異世界送りについて

世界から色が消えていた。

においもなく、音も聞こえない。

私以外の誰かが時間を止めたのだ。

静止した時間の中、大型レイドとの戦いが出来るほどの大きさが確保されている空間に、S級相当レベルのミミック達が天井から降下してきている姿が静止していた。

その数499個体。

宝箱箱の形状をした魔物は、防御型、攻撃型、特殊型の3種類がいりまじっている。

その奥。ミミック達をガチャで引き当て呼び出した青年・水明郷は、額に血管を浮かべ、目を血走らせていた。

私の隣で止まっている悪党属性の機械少女に煽られたため、怒り狂っていたのだ。

私の背後には分析班の3人が控えており、部屋の中央には西方都市の領主達がこちらの状況を見守っていた。

私にとってミミック全個体を破壊することは難しいことではないももの、このまま戦いが開始されてしまうと、奴等へ攻撃命令を出している水明郷を含め、この部屋に者達は戦闘の巻き添えとなり命を失ってしまうだろう。

時間が静止した世界の中、前触れなくメッセージ画面が浮かび上がってきていた。



◇◇◇メッセージを受信しました◇◇◇

Ultimate_Metal_Wing_Dragon(純白の翼竜)から三華月様に、眷属への加入申請がありました。

申請を受理されますか。

YES/NO?



純白の翼竜は、この部屋の中央に鎮座している。

現在開催されているというイベント『魔王の秘宝』のラスボスであり、機械少女が創り出した究極生命体だ。

姿が視認できるものの、断裂した空間に存在しており、こちらからの攻撃が決して届くことがない場所に静かに眠っていた。

能力値はそれほどではないものの、所持しているスキルが凶悪無比。月の加護が届かないこの迷宮内においては、私でさえも倒すことが出来ない存在だろう。



名前 : Ultimate_Metal_Wing_Dragon

通称 : 純白の翼龍

力 : D

速 : D

耐 : S++

Skill : 無限重力世界、次元刀



この存在こそが、時間を静止させたとみて間違いない。

さて、この申し出であるが、配下に加われば能力的にミミック達を一掃できる可能性が高く、更に言えば機械少女の配下であることを考慮すると申し出を断る理由はないか。

そもそもであるが、自己申告制のごとく勝手に眷属になっていたふざけた者達と違い、私の承諾を得ようとするとは。

一般常識を兼ね備えているまともな者であるに違いない。

承知しました。

純白の翼竜からの申し入れ。お受けすることに致しましょう。

私の思考が伝わったのだろうか、浮かび上がっていたメッセージ画面の『YES』の表示が緑色に輝くと、早速といった感じで挨拶となる機械音が聞こえてきた。



<私はUltimate_Metal_Wing_Dragon。純白の翼龍とお呼びください。三華月様のために力を注ぐことをお誓い致します。>



おおお。まともそうな者ではないですか。

初詣のおみくじにて大凶を連続で引き続けていたが、ようやくついに末吉を引き当てた時と同じような感動が湧き上がってくる。

気が付くと、セピア色に染まっていた世界へ色が戻り始めていた。

音が聞こえ、五感が復活していく。

―――――――――――静止していた時が動き始めていた。

中断されていたミミックとの戦闘が始まろうとしている。

降下してきているミミック達の目的は、水明郷からの号令により、機械少女を破壊すること。

悪党属性の機械少女をここで見放す手段もあるのだろうが、それをしてしまうと想定以上の大惨事を招いてしまうものと推測できる。

私の信仰心のことを考えると、少女を放置する選択肢は対象外。

ミミック達の先陣をきるように防御型の集団が、攻撃型と特殊型を囲むように陣形を敷きながら、こちらへ突進を開始していた。

その宝箱箱の姿をした魔物達へ発動済である『マルチロックオン』が一斉に照準をつけていく。

純白の翼竜が配下に加わったものの、特に状況に変化はないか。

予定通り、機械少女を連れて後退を開始し、追跡しくる機体がいるならば順次狙撃して差し上げましょう。

再び、純白の翼竜からの言葉が聞こえてきた。



<三華月様。ミミック達の対処については私にお任せ下さい。>



ミミック達の背後にあたる部屋の中央に鎮座していた純白の翼竜が、その翼を広げ、圧倒的なプレッシャーを発し始めた。

宝箱の形状をした魔物達を遥かに凌ぐ戦闘力であることを肌で感じる。

空気が重く震え始めていた。

もしかしてだが、スキル『無限重力世界』を発動させるつもりなのかしら。

その効果とはスキル名から推測するに、おそらく星の墓場と言われている暗黒空間を生成するもの。

そんなスキルを発動されてしまったら、この場の者達はおろか、地上世界の一部が消滅してしまい、かつてないほどの災害をもらしてしまうのではなかろうか。

再度、純白の翼竜からの声が聞こえてきた。



<三華月様。ミミック499個体は『次元刀』で異世界に送らせてもらいます。>



先ほどから考えていることに対し返事が返ってくるのであるが、私の思考を読み取っているのだろうか。

少し複雑な気持ちになるが、まぁその件についてはそれほど問題ではない。

純白の翼竜は『異世界に送る』と言っていたが、『次元刀』とは、空間断裂を引き起こす効果のこと。

その名のとおり斬り刻む効果なはずであるが、どうするつもりなのかしら。

認識している能力とは異なるということなのか。



<『次元刀』とは空間断裂を起こす効果で間違いありません。全てを斬り裂くスキルではありますが、回避をされる可能性があるため、より確実に無効化するための手段をとりたく思います。>



より確実な手段というのが、異世界送りだということか。

空間断裂を引き起こし、どうやって異世界送りにするのか今一つ分からないものの、まともそうな性格をしている純白の翼竜に任せておけば問題ないように思える。

そのタイミングで、一段と強力なプレッシャーが発せられた。

純白の翼竜がスキルを発動させたようだ。

あちこちからこの世界に存在していない擬音が鳴り始めてくる。



*+*-+o;**///



聞こえてくるその擬音は心に恐怖を刻みつけ、通常の人では精神的に耐えることが決して出来ないものである。

目の前には見たことがない景色が広がっていた。

―――――――――――あちこちで空間に亀裂が入っていたのだ。

景色が揺れている。

亀裂がブレるように動きながら開いていくと、その空間がパックリと割れていった。

割れた向こう。

異世界の景色が見えてきていた。

ミミック達が、その狭間に次々と飲み込まれていく。

その姿はまさに無抵抗。

圧倒的過ぎる力にあがらうことさえも許されない状態だ。

これが『次元刀』の効果。異世界送りなのか。

状況が呑み込めないでいる機械少女が、大声を上げていた。



「なんじゃこれは。あの向こうに見える景色は異世界なのか!」



さすがだな。機械少女は既に状況を把握し始めているのか。

他の者達については、純白の翼竜から発せられる圧に当てられ気絶している。

煽り耐性のない水明郷も床に倒れていた。

純白の翼竜が戦況を一変してくれたことは有難いのであるが、次元の狭間の向こうに見える異世界からするとS級相当のミミック達が送りこまれたことになる。

向こうの世界にいる冒険者達からすると、物凄く迷惑だと思うが、気にしても仕方がないことだろう。



◇◇◇◇◇



三条家からの依頼である西方都市の領主の救出クエストが完了し、私の配下となった純白の翼竜が、地下迷宮の主となった。

水明郷も含め、彼等の処遇については分析班達に任せ、私と機械少女は異世界に向かい歩いていた。

神託により純白の翼竜が異世界送りにしてしまったミミック達を処分するための神託が降りてきたためだ。



―――――――次から新章です。

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