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180 クソゲーとは

ここは西方都市の地下に広がる迷宮。

まっすぐ続く石張りで出来た3m幅の回廊を歩く音と、背後から吹いてくる風の音とが共存しているかのように心地よく聞こえてくる。

天井に等間隔で埋め込まれている照明が光を放っているものの、足元までは明かりが届いていない。

西方都市の地下に広がる通路を、分析班の3人が前を歩いている。

隣を歩く機械少女の周囲には光のスクリーンが何重にも浮かび出てきており、そこに羅列されている古代文字が滝から水が落ちるように凄まじい速度で流れていく。

何やら作業のようなものをしているようだ。

ろくでもないことをしているものと想像がつく。

私からの視線に気が付いた少女が、前を歩く3人に聞こえないくらいの声で、声をかけてきた。



「これが見えているのてすか。さすが三華月様です。このパネル達に書かれているものは、世界の迷宮を構成しておりますマスタープログラムなんですよ。」

「迷宮のマスタープログラムですか。」

「はい。私は現在世界に点在している迷宮の初期プログラムを作成した者なんです。」

「へぇ。機械少女は、何気に結構すごい機体だったわけですね。」

「それほどでもありません。迷宮の初期プログラムを組んだまでは良かったのですが、数千年もの間、迷宮を進化させるために試行錯誤を繰り返しているものの上手くいっていないのが現実なんです。」



機械少女は不本意そうに首を左右に振っている。

迷宮を進化させているというが、ここの迷宮に関していうと、感情のままに難易度を上げてしまい、比例して過疎化させてしまったのだろう。

ミミックの性能をみても分かるように、機械少女が優秀な製作者であることは疑いようがない。

だが、運営と言う点においてはどうしようなく才能がないようだ。

まぁそのことはどうでもいい。

問題は、今しがた何をしていたかである。

機械少女は私が抱いていた疑問を察したのだろうか、続きの話しをし始めてきた。



「はい。そうなんです。私はミミック達の行動プログラムを少しばかり書き換えていたのです。」



ミミックとは、宝箱の形をした魔物のこと。

先ほど入ったボス部屋みたいなところで、襲い掛かってきた奴のことだ。

その実力は、S級冒険者達が組んだパーティでも倒すことが出来ないくらい凶悪。

そういえばブッ壊れキャラがどうのこうのと言っていた。

もしかして運営側の立場として、ミミックのレベルを適正な能力に修正しているのかしら。



機械少女ルギアルプスアレクサンドラ。つまりあなたは、開催したイベントに不具合があったため、ミミックのレベル調整をされていたわけですね。」

「レベル調整ですか。ミミックの能力値についてはそのままにしておこうかと思っています。」

「つまり、能力値の修正は行うつもりがないということですか。」

「はい。ブッ壊れキャラを調整してしまうと、特定のユーザから強烈なクレームがくることがあるんですよ。せっかく多額の金を注ぎ込み、ブッ壊れキャラをGETしたにも関わらず、能力値を修正してしまうと、ブチギレられてしまうのです。」



機械少女は大きくため息をつきながら、不本意である演出を目一杯表現していた。

話しによると、つまりあの凶悪なミミックが、ガチャから排出され、イベントに参加しているユーザーがゲットしているとでもいうのか。

今後のことを考えると、もう少し詳しく情報を引き出しておく方が得策か。

早速といった感じで、機械少女に話しの続きについての質問を開始した。



機械少女ルギアルプスアレクサンドラ。あなたの話しによると、ブッ壊れキャラであるミミックがガチャから排出されており、すでに誰かが引き当ててしまったと言っているのですか。」

「そうなんですよ。確率0.01%ですよ。それも2名です。信じられません。」

「その引き当てたユーザーとはここの領主と新賢者・水明郷の2人のことですね。」

「そうです。もう奴等はガチャ廃人堕ちをしております。」

「つまり、ここのボスキャラを倒すことが出来るという特効キャラを、その2人は手に入れてしまったということですか。」

「三華月様。安心して下さい。あのミミック程度達では、ここのボスキャラを倒すことなど絶対にできませんよ。」



機械少女が口角を吊り上げ、邪悪な笑みを浮かべていた。

あれだけと性能をもつ機体を配下にしていても、ボス攻略が出来ないと言っているのか。

それほどまでに、ボスキャラが強力だとしたら、月の加護を受けることが出来ない迷宮内では、この私でも倒せないのではなかろうか。

ドラゴン級。それも上位相当か。

あきらかにバランスがおかしいだろ。



機械少女ルギアルプスアレクサンドラ。糞ゲーというものを知っていますか?」

「糞ゲーですか。もちろん知っています。スキップ操作が出来ないゲームのことであると認識しておりす。」

「確かに、美しいCGかもしれませんが、見たくもない物語を強制的にダラダラと見せられるよは苦痛でしかありません。」

「はい。プレイヤー側からすると時間の無駄。製作者側のエゴの押し付けです。その他にも移動速度が激遅なのもムカツキます。」

「イライラするという奴ですか。」

「はい。移動速度が激遅に限って、雑魚敵を高確率でエンカウントするんです。もうこれは製作者側の嫌がらせですよ。」

「もう一つ。クリア条件が異常に難しいものも糞ゲーに含まれるそうですよ。」

「分かります。心が折れちゃいますよね。」



そう。このイベントは難攻不落という次元を超えている。

機械少女は糞ゲーというものをよく理解しているようだが、自身が開催しているイベントがそれに該当するということを認識していないようだ。

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