新しい襲撃
「詩歌! 詩歌!」
「うーん?」
グッスリ眠っていると、誰かが肩を揺すった。
目を開けてみると、目の前には優歌の顔がある。
そして、私を抱きしめてるように感じた。
私は自分の背中に温かい体温を感じる。
私は優歌を抱きしめてるわけじゃ無かった。
……抱きしめて寝ようかな?
「詩歌、ごめんね、仲良くしてるのに。
起そうかどうか悩んだんだけど
悪魔がでちゃってる状態だから
ちょっと心苦しいけど起したんだ」
「今日も?」
「うん、悪魔は本当に良く姿を見せるね」
「そうだね、でもどうしよう。
今、私は優歌に抱きしめられてるんだけど…」
「起さないようにして、ベットから出よう」
「それしか無いよね」
ちょっとだけ恐いけど、ゆっくりゆっくり
優歌を起さないようにゆっくりと慎重に。
よし、何とか優歌の手から抜け出せた。
「じゃあ、行こうか」
「うん、服はどうする?」
「きょ、今日は着替えられないね。
優歌が居るから、物音で起きちゃう」
「そ、そうだよね…」
「ま、まぁ、今日はそこまで
可愛い寝間着じゃ無いから」
一応、私もお姉ちゃんだからね。
優歌も一緒に寝るのに可愛い寝間着は
ちょっとだけ恥ずかしかったからね。
今日はシンプルな白の寝間着だからセーフだよ。
「じゃ、行こうか」
「うん」
そのまま優歌が起きないように部屋から出た。
そして、悪魔の気配がするという方に進む。
「そう言えば、
癒美ちゃんに話をした方が良いのかな?」
「普段は何処に居るの?」
「結構遠いんだよね、10Kmは離れてるよ。
癒美ちゃんはバスで登校してるから」
「でも、10Kmなら気付きそうだけど」
「そもそも……電話しても来れないか」
「変身してる状態なら多分すぐだろうけど…
とにかく、今は急ぐしか無いよね。
もしかしたら後から合流するかも知れないし」
「そうだね、電話は良くないし、急ごう」
そのまま、私は暗い街の中を走って、
悪魔の方へ向う。
そろそろ距離が近くなったタイミングで
私はニックと協力して変身した。
「よし、急ごう」
「うん」
「でも、最初から変身した方が良いのかな?」
「走って行ける距離なら良いと思う」
「そうなんだ、何かあるの?」
「ほんの少しだけど、消耗を抑えられるからね。
大した影響はないけど」
「じゃあ、一応は普通に移動した方が良いね」
「うん、近くならそれで良いと思うよ」
「分かった」
そのまま、周囲の建物を利用して
悪魔の方に近付く。
今度の悪魔は武者の様な格好をして居た。
悪魔というか、落ち武者って感じだよ。
「あれが新しい悪魔、落ち武者みたいだね。
悪魔と言うよりは幽霊みたい」
「人型は技量があるからその分強いと思う。
今回は遠距離武器の方が良いと思う」
「じゃあ、銃? それとも弓矢かな?」
「銃が良いかも、待っててね」
そう言って手元が光り輝くと拳銃が出て来た。
真ん中が回るようになってるから
リボルバーかな。
持ち手の部分には桜の花びらが書いてあるね。
銃の模様も変わってて、
木の枝みたいになってるね。
「本当に拳銃……それもリボルバーかな
FPSのゲームで使う事はあるけど
ほ、本物を触ったのは初めてかも…」
「本物とは違うけど、
本物と同じ位凶器だからね」
「わ、分かったよ。でも、拳銃なんだね。
こう、アサルトライフルとか、そう言うのは?
あ、ショットガンとかガトリングガンとか」
「あの相手と1対1なら拳銃の方が良いよ。
普通の拳銃はよく分からないけど
私が作る武器なら、
拳銃は一撃の攻撃力があるからね。
近付かれたときもすぐに距離を取れるし
片手がフリーになるから
接近武器もすぐに召喚出来るから」
「なる程、分かったよ」
こう言う、武器に関する事は
私よりもリックの方が詳しいしね。
リックがこの方が良いって言うなら
こっちの方が安定するのかも知れない。
「そう言えば、弓矢はどうなの?」
「弓矢は攻撃力がかなり高いんだけど
連射が拳銃よりも効かないから
近付かれたらちょっと不味いんだよね。
両手を使う必要があるし大きい分
動きも遅くなっちゃうからね
だから、1人だとあまり活躍できないの。
拳銃だと空いてる手に接近武器を出したり
機動力を維持して火力を上げたいときに
もう1挺拳銃を出せば、
火力も上げられるからね。
だから、1人で戦う状態なら
こっちの方が良いの」
「へぇ、分かってないことが多いね、私」
「大丈夫、それが普通だから」
武器について話をしている間だ
私はあの落ち武者を見ていた。
周囲を見渡してる状態だね。
まだこっちには気付いてない様子だった。
「……よし」
精神統一の意味も合わせ、小さく深呼吸をして
拳銃を構えて落ち武者の方を狙った。
銃の照準をどう合わせるかはゲームで知ってる。
そこまで得意じゃないけど、
流石に動かない相手なら!
「そこだ!」
意を決して、私は引き金を引いた。
落ち武者は私の銃声に気付いてこっちを向くけど
同時に頭に私の弾丸が当った。
「ど、どうかな……頭に当ったけど」
落ち武者は倒れたけど、平気な顔をしたまま
ゆっくりと起き上がった。
「まだ起きるんだ、でも!」
すぐにもう一度引き金を引く。
「え!?」
だけど、落ち武者は私が放った弾丸を斬る。
「ふ、防がれた」
「やっぱり、かなり強い悪魔だね!
あいつの得意な距離に近付かれたら不味いよ!
上手く逃げて、隙を突いて攻撃するんだ!
死角から攻撃をしていけば大丈夫!」
「わ、分かった!」
落ち武者は剣を構えながら起き上がる。
そして、私の方を向き、剣先を向けた。
正面からの攻撃は駄目だ。
背面、あるいは側面から攻撃する。
上手く動き回って、背後から奇襲。
接近武器は技量の差で不利かも知れない。
遠くから戦うのが、今の私に出来る事だ。