表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
藍色のウサギ  作者: 神崎いのり
2/3

好きな人

「じゃあ、まずは職員室に行こう!」


「おー!」


希望はそう言って、幼稚園児のように右手を上に挙げた。あぁ、かわいい←

一応私たちは高一だけど、やっぱり夜の学校は怖い。しかも、まだ2月だからか、ものすごく寒い。はぁっ、と息をすると、白い息が出てくる。ぶるぶると震えながら歩いていると、いつの間にかもう職員室の近くだった。


「あれ?」


少し暗くて見えづらいけど、職員室の近くに誰かがいる、ということは分かった。あれは…


姫花(ひめか)~!」


隣にいた希望が職員室の前に立っている彼女の名前を叫んで走っていった。


「え、希望と藍奈…?2人もいたんだ」


…最悪だ。こいつも不登校組の1人なんだけど…そんなに仲良くないのに馴れ馴れしいからぶっちゃけすごく苦手である。


「…姫花もいたんだね。職員室に先生いた?」


「あ、やっぱ2人も同じこと考えてた?でもざぁ~んねん、先生はいませんでした!」


…お分かりいただけただろうか、私がこんなにも姫花を嫌ってた理由を。私だけじゃないよね…?そうだよね…?


「え、じゃあどうすればいいの…?」


希望は少し涙目になってそう言った。…私が守ってあげなきゃ(使命感)


「とりあえず校内を回ろうよ、誰かいるかもしれないし」


そう言って私たちは、再び暗い廊下を歩き始めた。








「ところでさぁ…前から気になってたんだけど」


私たちは今校舎内を回っていて、いろんな雑談をしながら歩いていると、姫花がこう話を切り出してきた。


「藍奈の好きな人って誰なの?」


「へ!?」


「あたしも気になってた~!」


…まさか聞かれるとは思わなかった。


「てか、なんで好きな人いるって知ってるの…?」


「え~?だっていかにも好きな人いますぅ~って顔してんじゃん」


…いや、どんな顔だよ。


「もうこの際だから言っちゃえっ!」


「ぜぇ~ったい(私の嫌いな姫花には)言わないからね!」


「えぇ~言ってくれたっていいじゃん。…なんか妙に間がなかった?」


えっ、私知らないよ~?←

別に姫花が嫌いとかウザいとか思ってないよ~?←


「それより、2人は好きな人いないの?」


「いないよ~」


…やったぜ


「いる!やっぱり藍斗先輩でしょっ!」


…そう、この通り姫花はお兄ちゃんのファンだ。お兄ちゃんは成績優秀で基本的に何でもできてイケメンだったから、この学校では伝説になっている。…でも勘違いしないでほしい。姫花は1度もお兄ちゃんと会ったこと無い。もちろん私もそんなお兄ちゃんのこと大好きだし(likeだからね…likeだからね!)尊敬してる。だけど私は…








兄 を 絶 対 に ユ ル サ ナ イ




「ねえ、やっぱり怖いから帰らない?」


「大丈夫だよ、まだ回ってない場所があるからそこに行こ?」


私はそう言って再び暗い廊下を歩き始め…


「待って」


姫花が私を呼び止めた。私はピタッ、と静止し後ろを向いた。


「なんでさ、藍奈はそんなに落ち着いてて冷静なの…?もしかして…藍奈が裏で糸を引いてるんじゃない…?」


「……は?」


こいつ、一体何を言って…


「だってさ、こういうものって小説では大体身近な人が犯人じゃん。こんなに冷静なのおかしいって!」


「ちょっと、姫花…」


…小説と現実は違うって分からないのかな。別に、確固たる証拠だってないはずだし、そんなのただのメタ推理に過ぎない。それに、私がこんなに冷静なのは…


「人が怖がるとこ見て楽しいの、最低!もう私たちから離れてよ、関わらないで!」





プツリ





私の中で、何かの糸が切れた。



…あーあ、だから人間が嫌いなんだ、こんなやつがいるから。何が信頼だ、何が友情だ、すぐ裏切るくせに。人間なんて、人間なンテ、ニんげンなンテ、ニンゲンナンテ…







「お前たち、何やってるんだ」


…コノコエハ。


「…むー先生…?」


振り返るとそこには、紺色の髪に綺麗な海を思い出させる青い目、私のクラスの担任の先生のむー先生が立っていた。


良かった、助かった。先生、と言って駆け寄ろうとした。…でも、なんだかいつもと様子が違う。でも、いつもと同じ服だし、いつもと同じ声だし、いつもと同じ表情だし。…何が違う?



そうだ、彼の光が満ち溢れる綺麗な目には光が灯っていなかった。恐る恐る彼の手元を見た。







…その手にはナイフが握られていた。






彼こそが…












私の好きな人。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ