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藍色のウサギ  作者: 神崎いのり
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人がいない…?

私には好きな人がいる。























でも彼は私の手の届かない場所にいる。






















だから私は、この気持ちを心の奥深くにしまうことにした―















たった今読み終えた小説の表紙を閉じる。閉め忘れた部屋の窓からは寒い風が吹き抜けている。まだ2月だからか、風は知らん顔をして、尚も冷たい風を流してくる。あまりにも寒い。私は、ブルッと身震いをして窓を閉めた。


私は如月藍奈(きさらぎあいな)。俗に言う不登校ってやつだ。しかし最近はかなり行けるようになっているため、このレッテルが消えつつある。今日は特に体調が悪いわけでもないが休んでいる。不登校になる原因は人それぞれだが、私の場合は人間不信だ。しかし、その人間不信もだんだん直りつつあるので、いまのところ特に深刻な問題はない。

続いて、私のいる学校の事の話。私の学校はかなり特殊で、全寮制。私は親をかなり嫌っているため、この寮に逃げてきた。もちろんのこと、家には1度も帰ってない。ちなみに、私と10歳離れている藍斗お兄ちゃんもこの寮に入ったが……行方不明になった。


「…暇」


まだみんなが帰ってきてないから、することがない。仕方がない、小説でも読むか。


私はお気に入りの推理小説を手に取り、物語の世界に飛び込んだ。






…でも、まだこの時は気づかなかったんだ。すでに私の人生を180度変えたあの事件の幕があがっていたことに―









時は過ぎ、現在の時刻は午後10時。私たちの寮の消灯時間は11時だからまだ騒がしいはずなのに、寮内は妙に静かだ。…おかしい。


ピロン


携帯がぶるりと震える。どうやらメールが来たみたいで相手は同じ不登校友達の希望(のぞみ)から。というか希望って書いて「のぞみ」って名前何回聞いてもすごいよね。


希望『何か静かすぎない?何かあったのかなぁ?』


希望も何も知らないみたいだ。私は指をせわしなく動かし、返信をうつ。


藍奈『とりあえず一旦外に出てみない?』


ガラッ


部屋のドアを開ける。いつも誰かがいるはずの廊下には人っ子一人いない。明らかにおかしい…




「あっ、いた~藍奈!」


しんと静まる廊下の中急に明るい声がして、びくっと体が跳ねた。振り返るとそこには、茶髪で髪が短く、目はピンク色の美少女、希望が立っていた。


「良かった、誰も居なかったから心配になってたんだ」


「あたしも、藍奈が居てくれて嬉しいよ。すっごく頼れるから!」


そう言って希望はにっこり笑った。そう、彼女こそが私の癒しであり、私の推しだ!←


「にしても、みんなどこに行ったのかなぁ……あ!ねえねえ、藍奈が推理してよ!よく当たるし」


希望はう~んと考えた後、急にパッと明るくなって私にそう言った。多分今までの私の行動で察してもらってるかもしれないが、私は大の推理オタク。自分でルミノール液を作って校内に吹きかけ回ってるくらい。(あれ、私かなりヤバい人じゃ…?)いやでも、本当に青白く光ってたから自分でもびっくりだ。


「いいよ」


だって推しの頼みを断れるわけないじゃないか←


どうして皆が忽然と姿を消したのか…さっき窓の外を覗いたが、学校に人の気配はなかった。かといって、何者かによって全員が殺されたって線もない。さすがに気づくだろう。ということは、皆が一斉に騒ぐことなく学校の敷地内から出たということになる。防災訓練…?いや、違う。これは…


「…噂の『秘密のお楽しみ会』…?」


「え?…あぁ、いつやるか分からないやつ!」←


この学校には「秘密のお楽しみ会」という噂がある。これの一番の特徴が、いつどのタイミングで行われるかどうか分からない、というところだ。どこで何をするかどうかも当日にならないと分からないらしい。先輩曰く、1泊2日でとても楽しいのだそう。内容は口外しないよう言われてて分からないけど、毎年違うらしい。こういうものを企画したことで、不登校者がほぼいなくなったそう。まぁ、それでも行かない人もここにいるからね←


「あたし、全然思いつかなかった!さっすが藍奈!」


そう言って希望はかわいくニコッと笑った。今日命日かなぁ←


「でも、まだ学校の方に先生が残ってるはず。一応学校に行ってみよ?」


「うん!そうと決まれば早く行こ!」


階段を下りて、靴に履き替えて玄関を出る。外には、外へ出るための通路と学校へ行くための通路があるから、すぐに行き来ができる。



…でも




学校へ向かう通路を通り終えた瞬間、気のせい、気のせいだと思うけど…







もう二度と戻ってこれなくなる、そんな感じがした。


「藍奈~?何してるの、早く行くよ~?」


「あ、うん!」


きっと気のせいだよね。だってここは現実、物語の中じゃないんだから…


私は急いで希望の後を追った。





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