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第一話:野心家の目覚め

 あれ……俺は……助かったのか?



 体を動かそうと試みるがうまく動かない。もしかして、体がマヒしているのだろうか。目は開けるようだが少しぼやけている。

 少しずつピントが合ってきた。

目の前には金髪碧眼の綺麗な女性がいて、俺は抱きかかえられているようだ。


 一体誰だろう、この女性は。それに俺は体重が八十キロくらいあるはずだ。幻覚だと思い女性に手を伸ばしてみると、赤子のような手が見える。


 えっ……もしかして俺、赤ちゃんになってる⁉

 信じられなくて自分の手を何回も見る。やはり幻覚ではないようだ。これは輪廻転生というやつなのかもしれない。


「あら? どうしたのジンちゃん。そんなにおてて見つめて」


 俺はジンって名前なのか。

 前世と同じで何か運命を感じる。


 ――ガチャ。


 扉が開く音がした。豪華な服を着た茶髪で青い瞳のイケメンが近づいてくる。


「ジンはもう寝たのかい、ユリア」

「いえ、まだ寝てないわアラン。……仕事は大丈夫なの?」

「ああ、今日の分は全部片づけた。だからここにいても問題ない」

「貴族のお仕事は大変ね。……ほら、ジンちゃんお父さんですよ~」


 なるほど、この二人が俺の両親というわけか。

 それと今、貴族と言ったな。豪華な服を着ているからお金持ちとは思っていたが予想外だ。

……ふむ、うまく立ち回れば、前世で欲しかった強い権力を得られるかもしれない。

 まずは情報収集が必要だな。



―――――



 転生してからすでに五年が経った。


 どうやらここは地球ではないようだ。母親が魔法を使っているところを何度も目撃している。俺自身、魔法は使えないが魔力というものを扱えている。

 ただ、地球ではないにもかかわらず、言語が日本語で数字もアラビア数字が使われていて、曜日すらも同じだった。この理由は未だに分かっていない。


 おかげで本を読んだりしていたら、両親や使用人が神童だと言い始めてしまった。はじめは気味悪がられないように必死で演技をしていたのだが、皆がとにかく喜んでくれるのでもうやめている。


 それと五歳になって、できることが増えた。

 使用人が一緒であれば、庭や訓練場、書斎に入ることが可能となっている。

 なので、今も書斎で情報収集をしている。

 前世のカメラアイを受け継いでいたので、パラパラとめくっては次の本を手に取り目を通していく。


「ふーん、歴史といい種族といい、とても興味深いな」


 我がアトラス家はガロア大陸における六大大国の一つ、ウルティア王国の辺境伯家だ。

 辺境伯は侯爵よりも下だが、権限の大きさから実質的に侯爵と同等の身分といっていい。辺境を守るために騎士団以外にも独自の軍隊を持つことが許されているほか、攻め取った外国の領土を領地に併合へいごうする権限も持っている。


 また、アトラス家はとても裕福だ。

 ダンジョン街エストーニャと呼ばれる街に四大ダンジョンの内の一つがあるらしい。この四大ダンジョンとは、世界に四つ存在する巨大なダンジョンのことを指す。ここから取れる資源がアトラス領を潤している。


「アトラス領は素晴らしいな。尽きない油田を保有しているようなものだ」


 ダンジョンの恩恵はまだある。冒険者として異種族がたくさん来ることだ。

 この世界には人族以外に獣人族やエルフ、ドワーフ、魔族といった種族が存在する。そんな彼らをダンジョンが集めているのだ。これほどの多様性を持った領地はそうそうない。


 そんな魅力的な領地をいずれ俺が引き継ぐことになる。

 しかし、これで満足できるとは思えない。

 前世では死ぬ直前に権力者になりたかったと気付いた。辺境伯は権力者ではあるが、その上に王族や侯爵がいる。

 これでは真の権力者とは言えない。


 やはり狙う必要があるな……『王座』を。

 覚悟を決めていると、足音が近づいてきた。


「ジン様、お夕食の時間です」


 まったく、時間が経つのは早いな。

 今日もまた剣術の訓練日だ。四歳から始めた訓練だが、うちの騎士団長に教わっている。辺境の領地なので魔物や人と戦う可能性が高いため俺も真剣だ。

 それに将来のためにも武力が必要だからな。頑張ろう。



―――――



 いつも通り、領都アトラスの北側にある訓練場で訓練が行われる。


「時間通りですなジン様。今日も訓練を始めましょう」


 そう言って近づいてくる、頬に特徴的な傷があるゴツイ男。彼はアトラス家の騎士団長、ハンク・ウォンだ。

 俺の剣術と体術の先生をしてくれている。見た目は怖いが、子供に怯えられることを気にする繊細な人だ。


「ジン様もかなり動けるようになりましたからな。そろそろ身体強化を始めても良いかもしれません」

「本当か⁉ なら、早速始めよう!」

「やる気があってよろしいですな。すでに魔力操作はできますね?」

「ああ、もちろんだ」


 魔力とは体の中を流れる不思議な物質だ。操作することで魔法や身体強化を発動することができる。

 魔力操作は重要な基礎技術で、俺はすでに会得している。


「ならば身体強化は簡単です。魔力を全身に流してみてください」


 言われた通りに魔力を流す。このくらいは簡単だ。


「できていますな。では次に、全身にまとってみてください」


 ふむ、まとう……こんな感じかな。

 成功したようで、体がとても軽く感じる。体を眺めると薄っすらと赤く光っている。


「赤い魔力? ……不思議ですな。しかし一発で成功とは、さすがジン様。今なら石くらい素手で壊せるでしょう。試しにこの石を握ってみてください」


 分かった、と頷いて受け取る。

 軽く握ってみると粉々に砕けてしまった。


「ほら、砕けてしまったでしょう? あとは制御さえ覚えれば完璧です」

「確かに……これでは安易に握手などできないな」


 人の頭なんか叩いたら一発で潰れてしまいそうだ。でも制御できたら強力な武器となってくれるだろう。


「本来は石を握ったりして慣れていくのですが……私がいるので実践で慣れましょう。その方が絶対に早いですからな」

「分かった。じゃあ胸を借りるつもりでやるぞ、ハンク」

「ええ、どんどん攻撃してきてください」


 それ以降は得意なサーベルを使って制御訓練に時間を費やした。



―――――



 八歳になった。


 ハンクの厳しい訓練で鍛え上げられたおかげで、身体強化も完璧に制御できるようになった。剣術は技術のみハンクを上回ることができている。

 前世では海外を旅することが多く、強盗が襲ってくることは普通にあったので、ナイフや体術を使った護身術を身に着けていた。そのおかげだ。


 今日は訓練がお休みの日なので、両親と昼食をのんびり食べている。


「ジンももう八歳か。あんなに小さくてかわいかったのに、ますますカッコよくなっていくな」

「そうね、ジンは凄まじい美貌だもの。これからどうなるのか怖いくらいね」

「ハハッ、将来は女泣かせになるのが確実だな」

「あなた! 変なこと言わないで頂戴!」

「いやー、すまんすまん」


 父上と母上の親バカが始まる。

自分の姿を初めて確認したのは五歳だ。つやのある茶髪で、凛とした青い瞳が特徴的な男の子だった。

 元ブサイクの俺からすれば信じられないほどのイケメンで、最初は自分の妄想かもしれないと疑ったほどだ。


「そういえばジン、来週から家庭教師をつけるからそのつもりでな」

「もしかして魔法の先生ですか⁉」

「そうだ。そろそろいい頃だと思ってな。」


 八年待って、遂にこの時が来た。ずっと使ってみたいと思っていた魔法だ。魔力操作は完璧にできるが、まだ自分の魔法適性を知らないため使えなかった。

 だが、魔法の先生が教えてくれるはずなので、ようやく知ることができる。


「来年には芸術の先生も来るからしっかりと学ぶんだぞ。貴族なら芸術は知っておいた方がいい」

「分かりました、父上」


 ああ、来週が楽しみだ。



10時頃も投稿します


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