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決闘

 こうして入学して直ぐに目立ってしまった私たちを気に食わない人はいるみたいで、特にクロノと仲良くしたいと思っている女の子から湿った視線を感じることが時々あったが、実害がないからと放っておこうと無視して過ごしていたある日のこと。


 昼食をいつもの四人で食べていると、六年生とおぼしき五人が声をかけてきた。



「エルミリー·コレットさんで間違いありませんか?」


「えぇ、間違いありませんよ。クリスタ生徒会長」



 クリスタ生徒会長はクリスタ伯爵家の長女で、卓越した魔法の腕とその美貌で生徒会長を勝ち取った人で入学してから先生以外には負けなしの成績を持つ開校以来最も優秀な生徒会長と有名だ。そんな生徒会長が私になんの用だろう?



「私は貴女に決闘を申し込みます」



 その言葉に周りがざわざわし始めた。決闘となると受けないわけにはいかない、仕方なく私は了承の意を伝えた。



「時間は明日の今ごろ、場所は校庭で行います。忘れたり逃げることのないようにお願いしますね」



 会長とその取り巻きが去った後に残っていたのはざわざわと騒がしい食堂と憂鬱な私の心、そして面白そうなのを隠す気もないアンリの笑顔だった。



「エル、大丈夫か?会長は将来が約束されている魔法剣士と呼ばれるくらい強いぞ。騎士団の新人では手も足も出ないと言われている」


「決闘に関しては心配してないんですけど、これをきっかけにこう言うことが増えそうなのが心配ですね」


「決闘で会長を完膚なきまでに叩きのめせば良いんじゃないですか~?そうすれば他の人は怖じ気付くと思いますよ~」


「その手があったか!流石お姉ちゃん!」



 それは要らぬ恨みを買うぞというレオンの呟きを聞き流しつつ私は明日に向けてゆっくり休むことにした。



そして翌日―――――――



「ギャラリー…… 多くない?」


「それはそうだろう。生徒会長と話題の新入生の決闘だ。こっそりと賭けまで行われるくらい注目されてるぞ?」



 そんなにみんな暇なのかと脱力しながらオッズを聞くと私が7、クリスタ会長が3でみんな会長に賭けているらしい。そう聞くと私が負けることを期待している人が多いのか。


 そう思うと余計に負ける気は無くなった。



「会長に賭けてたみんなは損するね♪」


「勝てるのか?」


「余裕余裕!特に魔法戦なら負ける気がしないね。それじゃ、行ってくるね」





 校庭の中央に歩いていくエルちゃんを見送っているとレオン君とクロノ様が賭けについてお話ししているみたい。


 そういえばレオンはどっちに賭けたんだい?というクロノ様の質問にレオン君はーが顔を赤くしながらエルちゃんに賭けたよという顔が可愛いくて思わず見つめちゃった。


 エルちゃんに惚れているのはわかっているのでアプローチはかけていないけどそうでなかったら迷わずアプローチしてたなぁ。


 だってとっても可愛いんだもん。和んでいるうちに決闘が始まっちゃうみたい。


 もう少しレオン君が恥ずかしがっているところを見たかったなぁ。





 私は校庭に佇んでいる会長に向かって歩いていく。会長は剣を地面に刺し、目をつぶって集中しているようだった。


 その様子はまるで祈っているヴァルキリーのようでギャラリーはすっかり見とれているようだった。


 会長まであと十メートルというところで会長は目を開けこちらを向いた。



「忘れずに来たようね」


「決闘は神聖なものですからそれを忘れることは出来ませんよ。さぁ会長、始めましょう?」


「えぇ、始めましょう。先生、審判お願いしますね」



 私たちが武器を構えたのを確認した先生が合図をした瞬間会長が真っ直ぐ突っ込んできた。


 それを見た私は焦らず引き金を引く。会長が銃弾を弾くために振り上げた剣が視界を遮っている間に強化魔法を使って素早く背後を取り、剣を首に添えた。



「会長、まだやります?」


「ま、参りました……」



 あまりにも早く決着がついてしまったからか、誰も反応できずポカンとしているだけだったがハッとなった先生が、「勝者、エルミリー·コレット」と宣言すると歓声が沸き上がった。


 私はしばらくその歓声を黙って聞いたいたが静まり始めた辺りで会長に質問した。


「会長、私に決闘を申し込んだ理由を聞いても良いですか?」


「私も……………たかったのよ」


「小さくて聞こえなかったのでもう一度良いですか?」


「だから! 私もクロノ様とお話ししたかったのよ!」



 なるほど、私やアンリがクロノ様を囲っていると思っているのか。


 確かにほとんど一緒に行動しているからそう思っても仕方ないな。


「ありがとうございました。では私の要求ですが……私の友人になって頂けませんか?私は年上の友人がいないのでなって頂けると嬉しいです」


「同情のつもりなら結構です!」


「そんなつもりありませんよ。先輩のような方なら仲良くなれると思っただけです」


「し、仕方ないわね。これから友人として宜しくね」


「はい! 宜しくお願いします!」


「っ!」



 あれ? 会長顔が赤いけどどうしたんだろう?



「会長どうしましたか?顔が赤いですよ?」


「な、なんでもないわよ。それじゃあまた今度会いましょう」



 こうして決闘は幕を閉じ、私に新しい友人ができた。


 因みに賭けに負けた人たちはお小遣いが減って悔し涙を流したそうな。


 そして私は……



「エルさんって本が好きなんですよね!物語を持ってきたんですががどうですか?」


「こっちの本は歴史書ですよ。読んでみませんか?」


「それよりこちらで紅茶を飲みながらの読書は如何?」



 私の周りには生徒、生徒、生徒の山…… 



「どうしてこうなった……」



 拝啓お父様、お母様、私たちはちゃんと学園に馴染んでいます。


 ですが……馴染みすぎて逆に馴染めていない気がします……




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― 新着の感想 ―
[気になる点] >レオン君はーが レオン君が? ですかね [一言] >美貌で生徒会長を勝ち取った 美貌で勝ち取れる…。そしていきなり決闘を挑むようなちょっとアレな人が生徒会長って、さてはここの生徒会、…
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