領を離れて
第二章に入りました。 まぁ章を分けるほど話数ありませんけど一応一区切りということで。
二人は学園で何回やらかすのか!?
「はぁ、暇だなぁ……」
「そうですね~。何か面白いことがあるといいんですけど~」
「本当に二人とも大人しくしないね……」
「大人しくしてましたよ~、最初は」
「持ってきた本も読みおわちゃったし事前に配布された教科書も暗記しちゃったしやることがなくなっちゃったんだよ」
「えぇ!? 教科書を含めなくても十冊くらいあったよね!? もう読み終わったの!?」
「馬車が走り始めてからもう五時間だよ? それくらい読み終わるよ」
そう、今私たちは馬車で王都に向かっている。きっかけは私たちが10歳になったことに起因する…
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「二人とも忘れ物はないか?」
「大丈夫ですよ~」
「ならいいんだが…… 二人とも向こうでは大人しくしててくれよ?」
「わかってるよ」
「学園ですか~。懐かしいですね~。色々教えすぎた気がするので勉強に関しては心配してないけど~周りと馴染めるかは心配ですね~」
アンクレット魔術学園。貴族から平民まで幅広く門を開いているこの国で最も大きい学園だ。魔法や礼儀作法など学ぶ内容は多岐にわたる。
ここは貴族の子供たちにとっては顔合わせ、平民にとってはより良い成績で貴族に覚えてもらう、言わばコネを作るための場所でもあるのだ。
そんな学園に行く歳になった私たちは馬車で揺られているのだ。
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「王都が見えてきたよ」
出立する前のことを思い出していると王都に着いたらしい。
王都自体は何度も訪れているが何か月も滞在するのは初めてなので楽しみだ。
「学園かぁ…… どんな本があるかなぁ……」
「その前にまず入学式と学園の説明だね」
「眠くなりそうですね~」
そんな会話をしながら学園の近くで馬車を降りて校門へ向かっていく。
「そろそろ言葉遣いに気を付けたほうがいいですよ」
「わかりました」
「学園でも仲よくしてくださいね、レオン様」
「もちろんですアンリ様」
「レオンじゃないか! 久しぶりだな!」
目を向けると眩しいくらいに輝く金髪に青い目をした美少年が立っていた。
「元気そうだな! お前と会える日を楽しみに待っていたよ!
ところでそちらの二人は?」
「えっと……」
「コレット侯爵家庶子のアンリ·コレットと申します。以後お見知りおきを」
「同じくエルミリー·コレットと申します。以後お見知りおきを、クロノ·アンクレット第一王子」
そう言うとレオンとクロノが驚いた顔をした。
「どうして僕が第一王子だと思ったんだい?」
「公爵家の長男であるレオン様に人目のあるところでそのような言葉遣いが出来るのは同じ公爵家か王族の方々しかいませんから。そのなかでクロノ様のような容姿をしている方に一人しか心当たりが無かったので間違いないと思っただけです」
「なるほど。確かに僕はクロノ·アンクレットだ。コレットと言うことはレオンが手紙に書いた友人か。よろしく、二人とも」
「そろそろ講堂へ行きませんか?」
「それもそうだね、私も一緒で良いかな?」
「えぇ、構いませんよ」
こうして四人で講堂に向かうことにしたが第一王子と公爵家の長男、侯爵家庶子が二人というちぐはぐな四人に怪訝な目が集中するのは仕方のないことだと思い気にしないようにした。
こうして始まった学園生活だが私たちは早速目立つことになってしまった。
私は最初の魔法学の授業だ。 はじめの授業は魔法適正を調べるらしいのだが…
「次、エルミリー·コレット」
「先生…… 私は学園へ来る前にやった適正検査で水晶玉を割ってしまっているので水晶玉での検査は難しいと思います」
「これは学園用に調整された水晶玉だから強度は他のものより高いから平気だと思うぞ」
「では……」
恐る恐る水晶玉に触れるとパリンという音が聞こえ、水晶玉は粉々になった。
周りを見ると、いつも通りニコニコしているアンリとそんな馬鹿なといった表情で固まっているレオンたち生徒、何か考えている素振りを見せている先生が目に入った。
「エルミリー·コレット…… 君は魔力が異常なほど多いようだね。十年近く教師をしているがこんなことは初めてだよ」
エルミリー? 聞いたことないな。あの子入学式の時第一王子と歩いてた子じゃない? ホントだ。等の不躾な声が聞こえるが気にしないようにしてアンリのところへ向かった。
「早速目立ってますね~」
「お姉さまも目立っちゃうかもよ?」
何て言っていたらアンリも目立つことになってしまったのだった。
この世界の体育の授業では魔獣に対抗するために剣術等の武器の扱いも学ぶが他の人がペアで剣を当て合っているだけだが私たちはこの二年で覚えた身体強化の魔法を使った本格的な模擬戦をやったのだ。
決着がついて周りが静かだと思ったら皆剣を止めてこちらを見ていた。
二人には教えられることは無いかもなという先生の言葉は静かな運動場に響き渡った。
こうして私たちは一年生の間で強すぎる同級生として有名になってしまった。