オリゲネス・ルキフェル
「女共はこっちだ! さっさと捕らえグァ!」
「チッ、調子に乗rガッ」
「ああもうキリがない! 一人一人は強くないけど人数が多い!」
「まあ賊のアジトですからね~。手加減してたら終わらないので少し強めにいきましょうか~」
「りょ~かい!」
レオンが捕まっているであろうアジトに乗り込んでから五分ほど経っている。
今私たちはホールのようなところで賊を相手に戦っていた。
「じゃあいきますよ~? せーのっ」
『エアバレット!!』
風の中級魔法であるエアバレットは基本は対人戦で使う魔法だが広さがあまりないため面白いように巻き込まれてくれる。
「これで終わりみたいですね~? もう来ないみたいですし~」
「いや、まだみたいだよ。奥から一人来てる」
「そうですか~。 さっさと終わらせちゃいましょ~」
歩いてきた人物は細身ながら隙が無いのもあり、油断ならないなと思わせる体躯をしている。
優しそうな顔でにこやかに笑っているがそこが不気味で震えが私を襲った。
「おやおや、どんな娘が侵入者かと思えば侯爵家庶子の一人娘と…… そのお友達かな? 私はオリゲネス・ルキフェル以後よろしく、お嬢さんがた。君たちも捕まえれば侯爵家からもお金がもらえそうだね」
「も、ってことはビンゴみたいだね」
「みたいですけど気を付けないと私たちも捕まっちゃいそうですね~」
「だね。でも協力して戦えば勝てるかもね。お姉ちゃん援護よろしくね」
「もう雑談はいいかな? それじゃあいくよ?」
言うと同時にルキフェルの姿がぶれたかと思うと私の目の前に現れた。
「っ、速い!」
とっさに後退しながら剣を振るがあっさり避けられてしまう。
入れ替わるようにアンリが銃を撃つがそれも軽々と避けられ逆に手を蹴られて銃の片方が飛ばされてしまった。
「うーん、まだまだだね。こんなのにやられるなんて僕の部下は役に立たないなぁ」
「どうします~? このままだと不味いですよ~」
「今度は魔法で動きを止めてみよう。いくよ!!」
『ウォーターバインド!』
「!?」
よし! 成功した! これなら動きは鈍るはず!
「一気にいくよ!」
「わかりました~」
「フレア!」 「ストーンショット!」
私たちの魔法で作った水の枷で動けなかったルキフェルは壁を貫いて吹き取んでいく。
「あ~、ちょっとやりすぎたかな?」
「賊に容赦する必要はないですよ~。徹底的に叩くべきなんです~」
アンリの発言に寒気を感じた私がアンリから数歩離れたときガラッと音がしてルキフェルが瓦礫から出てきた。
服がボロボロになってはいるがさほどダメージを受けた様子がない。
「あれで駄目なのか……」
「でも効いてはいるみたいですよ~?」
「そうだね、確かにあそこまで魔法が操れるとは思わなかったよ。まぁこれ以上は騎士団も来ちゃうだろうし逃げることにしますよ」
「逃げる前にレオンはどこにいるか喋ってくれないかな?」
「それは自分で探してね。二度と会わないことを祈るよ。次は全力で殺さないと行かないからね」
「あ! 待て!」
追いかけようとしたが足元から黒い手が生えてきて足を掴まれてしまった。
「それは十分ほどで消えるから安心してね。部下たちを回収するための時間稼ぎだから君たちもレオン君も置いていくよ。流石にそんな余裕はないしね」
こうしてまんまと時間稼ぎされた私たちは魔法が解けてすぐレオンを探し始めた。
探し始めてすぐレオンを探すことが出来たがレオンも自力で脱出しようとしたらしく、そばには賊が何人も転がっていた。
「レオンさん無事だったようでなによりです~」
「ごめん、油断してたら裏路地に引き込まれてそのまま…… っていうか無茶しすぎだよ! 何かあったらどうするのさ!」
「それを首を突っ込むはめになった原因に言われたくないけどね」
「ゔ、それは…… って君は? 手紙にあったアンリの妹?」
「うん。初めまして、アンリお姉ちゃんの妹、エルミリーだよ。エルって呼んでね」
あれ? 反応がないなと思ってレオンを見るとこっちを向いたまま固まっている。よく見ると頬がうっすらと赤くなっており……ってまさかな、そんなわけないよな、うん。
「あれ~レオン君顔が赤いですよ~? もしかしてエルちゃんを好きになっちゃったんですか~?」
「そ、そんなわけな、ないよ!?」
(あっ、これ一目惚れされたな…)
こんな見た目だが中身は男だから男に好かれてもなと思ってしまうなと考えているとバタバタと走ってくる音がしたかと思うと扉がすごい勢いで開き騎士団のみんながなだれ込んできた。
「レオン様、ご無事で!? ってアンリ様にエル様も! ご無事でしたか!?」
「私たちは平気ですよ~。あの賊たち、人質の扱いはよかったみたいです~」
「みたいってお二人は捕まってここにいたのでは?」
捕まってたことにしたほうが怒られないかな~と思い誤魔化そうとしたがアンリが話すほうが早かった。
「いえ~私たちはここに殴り込んだだけでつかまってませんよ~」
「ちょ、そんなこと言ったら怒られちゃうよ!?」
「あ~そうでしたね~。まぁ大人しく怒られましょうよ~。どうせばれるのが早いか遅いかの違いですから~」
「そんなぁ……」
こうしてレオンを送り届けてうちに帰った私たちはお父さまとお母さまにこってり油を絞られたのであった。
エルちゃんが泣きそうになってて可愛かったです~とはアンリの後日談である。
お姉ちゃん、私の怒られてるときの顔が見たくて正直に言ったんじゃ……
そんなことがありつつも時は流れ二年後……