街への外出
朝食時にレクスさんに今日の私たちの予定を聞くと今日は自由にしていいといわれた。
「自由に、ですか~。なら久しぶりに街へ出かけませんか~」
「いいね! レオン君に会いたいし」
街へ出かけると聞いた二人の顔が一瞬不安げになった。それが気になったが何も言わないなら言いたくないのだろうと思い、代わりにアンリに提案した。
「お姉ちゃん、一応武器は持って行こうよ」
「そうですね~。誘拐されたり絡まれたりするのは嫌ですしそうしましょ~」
「気を付けるんだよ?」
「もちろん!」
コレット家の庶子の屋敷は「ラフエル」というコレット侯爵領で二番目に大きい街にある。
領の端にある街が二番目に大きいのは隣のシルヴレン公爵家の「コルトン」という街との交流が盛んだからだ。
それもあってかこの街はコルトン産の石やレンガの建物に色とりどりのラフエル製の金属の看板が付いており、カラフルな街並みになっている。
公爵家の長男であるレオンと遊ぶことができたのは公爵家の別荘がこの街にあり、よく遊びに来ていたからだ。
今もこの街にいるらしく時間があったら一緒に遊ぼうという手紙が来ていた。
私たちは午前は二人で街を回り、午後はレオンにあうことに決め出かける準備を始めた。
玄関で集まった私たちだがアンリは私の格好が不満のようだ。アンリは黒いスカートと白いブラウス、薄茶色のキャペリンでシンプルながらも可愛い格好だ。
一方の私は薄茶色の長ズボンに白いシャツ、マリンキャップで動きやすさを重視したものだがファッションとしては悪くないのでは?と言うとアンリはスカートを穿いて欲しいらしい。
「うちの人たちなら慣れてるからいいけど他の人だとまだ恥ずかしくって……」
「どうせ学園に入った後は基本スカートなんですから今のうちに人に見られるのに慣れておいたほうがいいですよ~? そういうわけで着替えますよ~」
「え? ちょ、お姉ちゃん? なんか目が怖いよ?」
「気のせいですよ~。 さぁ行きましょ~」
結局私はそのまま一時間アンリの着せ替え人形にされた。なぜか途中から女中さんも参加していた気がする……
「まぁこんなものですかね~。機会があったらまたやりたいですね~」
「もう勘弁してお姉ちゃん……」
私たちは街の喫茶店でお茶を飲みながら話している。
私の格好は白いワンピースにポンチョという服装で慣れない沢山の人の目線に落ち着かないのでアンリが休憩しようと言ってくれたのだ。
「それでエルちゃんはどこか行きたいところはあるんですか~?」
「本屋さんに行きたいかな」
「ホントに本が好きですね~。もううちの蔵書の半分以上読んでしまっているでしょ~?」
「読むのも好きだけど書くのも好きなんだ。いつかは本を書いてみたいな~」
「なら魔導書を書くのに挑戦してみてはどうでしょ~」
「魔導書?」
「魔導書というのはですね、魔法を本に閉じ込めて普通の人に使えるようにしたり詠唱するより早く使えるようにするものです~。ただ作るには相当の魔法の腕が必要みたいよ? 帰ったらお母さまに聞いてみたら?」
「そうしてみます!」
「さあそろそろまた歩きますよ~」
「うん!」
喫茶店を後にした私たちが見たのは私服の騎士団の人たちが難しい顔をしている姿だった。
何かあったなと思い聞き耳を立てているとなんとレオンが誘拐ということらしい。
「レオン君が誘拐されたから私たちが街に行くのを不安に思ったわけか」
「みたいですね~。おや? あれは…」
人目を避けるように街角に消えていく人影を私たちは迷わず追った。
―――――――――――
見知らぬ部屋で僕は目覚めた。ここはいったいと思い部屋を見渡していると男が一人入ってきた。
後退ろうとするが腕を縛られていて上手くいかない。
「ようやく起きたみたいだね。さて、君に恨みはないけど私たちのために役に立ってもらうよ」
「い、嫌だっ!」
「嫌でも構わないよ。君は大人しく捕まってくれればそれでいい」
大人しく捕まっていれば? まさか!
「僕を人質に使うつもりか!」
「よくわかったね。君、意外と頭回るんだね。まぁそういうわけだから大人しく――――」
「失礼します、侵入者がいるようです」
「騎士団かい?」
「いえ、女が二人なのですが魔法を使うようで手こずっています」
「仕方ないなぁ、私が行くよ。君はこの子を見ていたまえ」
「わかりました」
女が二人? 一人はアンリだとしてもう一人は… 手紙に書いてあった妹かな?
だとしたら僕ものんびりはしていられないな。短剣しかないけど隙さえあれば一人くらいは何とかなるかな。
二人とも、よろしく頼むよ……
このお話で二人の服装が一番困ったところですね…
女の子の服装なんてわかんなーい!! って感じで変だなって思っても目をつぶってくださるとありがたいですが「いやいや! これはないでしょ」って思ったら指摘してください。