武器選びと魔法適性
私が身体を持ってから早くも三年が経過した。
この三年間で礼儀作法や言葉遣いをみっちり叩き込まれ、女としての仕草や服装にも慣れてきた。
庶子とはいえ貴族の一員、学ぶことも多く毎日いろいろなジャンルの勉強をしていたが、今日はいつもと違うようだ。
いつもは呼ばれない演習場に動きやすい服を着て来るように言われたのだ。
「お姉ちゃん、今日は何をするのかな?」
「演習場に呼び出すくらいだから剣や魔法の練習でもするんじゃないですか~。」
「そっか、剣かぁ……」
「ふふっ、もうやる気満々ですね~?」
剣と魔法! 男の子は自分が剣と魔法を駆使して敵をばっさばっさとなぎ倒すのを一度は妄想するだろう。
ワクワクしながら演習場に向かう。
演習場は今日も騎士団の人たちが訓練をしており、熱気と殺気が入り混じった緊張感を感じ、私とお姉ちゃんは身震いをした。
演習場ではお父さまとお母さまが騎士団の人たちに剣や魔法を教えていたが、私たちが来たのに気づくと教官らしき人に何か話した後こちらに歩いてきた。
「よし、来たみたいだな。今日はお前たちには武器を選んでもらい、武器の使い方を学んでもらいたい」
「それと魔法適性も調べておきましょ~」
「武器選びはわかりますが、魔法適性、ですか?」
聞くとこの世界の魔法には属性それぞれに適性があって適性がないと上手く魔法を使えなかったり効能が弱かったりするらしい。
ちなみに現在分類されている属性は火、土、水、木、風の五つに光と闇を足した七属性のようだ。
ようだ、という表現で用いたのは分類がまだ曖昧だったりどこにも属さない魔法があるからだとか。
「どちらから始めるかは任せるよ」
「ならさっきエルちゃんが剣って聞いてワクワクしてたので武器選びからやりましょうか~」
「ワクワクしてたのは確かだけどみんなの前で言わなくてもいいじゃんお姉ちゃん!」
この世界で使われている武器は剣や槍はもちろん、銃まであった。魔法が見つかるまで使われていたものが改善されて今も重宝されているらしい。
私とアンリは用意された武器を試していきアンリはほとんどの武器を上手に扱い、その中で銃に決めたが私はなかなか決まらない。
ロングソードというのだろうか、反りのないまっすぐな剣とハンドガンが上手く扱えているが、どちらかを捨てるという選択ができないでいたおれの脳裏に黒い剣士の姿が浮かんだ。
FPSでありながら剣で銃弾をはじき相手を倒していく姿に憧れを抱いたのを思い出したのだ。
「お父さま、片手に剣を持ってもう片方に銃を持っても構いませんよね?」
「それは構わないが立ち回りが独特で私では教えることが出来ないから教えられる人が見つかるまでは独学になるがそれでもいいか?」
「はい! ありがとうございます!」
「じゃあ次は魔法ですよ~?」
「魔法適性は武器選びより楽ですよ~。水晶玉に触れるだけですから~」
「水晶玉で適性がわかるんですか?」
「この水晶玉は触れた人の魔力の量や属性を教えてくれるんですよ~。例えば私が触れると私の得意属性である火、水、風、光の四つが、レクスさんが触れると土、木、闇の三つがが、という感じです~」
「面白そうですね~、私から試してもいいですか~?」
「うん、お姉ちゃん」
アンリが水晶玉に触れると茶色と水色、黄緑色の煙が湧き始め、水晶玉が光り始めた。
「アンリは土と水、風が適性のようですね。 土と水に比べて風の適性は低いようですが努力すれば一通り使えるようになりますよ。」
「三属性ですか~。 多くの魔法が使えそうですね~」
「じゃあ次はエルちゃんですよ~」
私が触れると様々な煙が湧きだし光もどんどん強く…… 強く?
「あ、あれ!? 煙も光も止まらないよ!?」
パリンという音を立てて水晶玉は粉々になり、日の光を反射してキラキラと輝いた。
「しまった… 止めるのを忘れてた……」
頭を抱えているレクスさんによると私の身体に込められている歌は最上級のもので、その魔力は普通の人では一生たどり着けないほどに高いらしい。
なので水晶玉では適性を調べるのは難しく、後でちゃんとした検査をするとのことだ。そして血液検査を行った結果……
「全……属性ですね~………」
「しかもどの属性も高い適性だな。エルならお前より魔法が上手くなるんじゃないか?」
「ありえそうだから困っちゃいます~」
言葉とは裏腹に嬉しそうな表情のマニラさんに私も自然に笑顔が浮かんだ。
「全属性が適性ということはほぼすべての魔法が使えるということですよね! 私頑張ります!」
こうして私とアンリは武器と魔法の練習を始めた。頭を使うのと身体を使うのとでは全くの別物なので武器を振りながら魔法を使うのは難しく、練習が終わるころには二人ともフラフラでご飯とお風呂を済ませて就寝するのが日常になっていた。
そんな日々が一か月続いたある日……