VSヘレナ
「小手調べにこちらをどうぞ」
ズルッと影から悪魔のような見た目のものやゾンビといった人型の魔物が何体も湧き出てきた。手には剣、槍、斧等それぞれ違った武器を持っている。
「その力……召喚術と使役術の同時行使ですか。それなら使役術だけを解けばあなたにも向かっていきますよね?」
難しい術式ではなかったので瞬時に解いて召喚した魔物がヘレナに向かうようにする。
召喚術はただ対象の生物を呼び出すだけなのでそのままでは呼び出した生物が魔物などの凶暴だった場合術者自身が襲われてしまう。
そこで使われるのが使役術だ。召喚される魔物は知能が低いのであっさりと使役術にかかるのでリスクなく使えることからこの二つの術式はセットで考える人は多い。
「私に歯向かうようなものは要りませんよ」
ゾンビや悪魔に襲われるヘレナだが戦っているとは思えないような声色で魔物を文字通り消滅させていく。あれは聖属性の中級魔法「シャイン」だ。
中級魔法とはいえ攻撃を避けながら魔法を使うことは難しいが危なげなく、確実に一体ずつ倒していく姿に彼女の腕がうかがえた。
「本当に小手調べにしかなりませんでしたね。瞬時に魔法を理解し適切な対処を取る。素晴らしい腕前です」
「そういうあなたも腕は確かなようですね~。それで、次はどうします? 魔法でもぶつけ合いますか?」
「そうしましょうか。ではいきますよ?」
それから半時程魔法をぶつけ合ったがお互い一度も当てることが出来ずにいた。妖精眼もエルちゃんの魔力も使っていないとはいえ恐ろしい腕前だ。
「やっぱり強いですね~あなた。ここまで私と戦えたのはエルちゃんくらいですよ~」
「ありがとうございます。ではもう少し踊っていただけませんか?」
「お断りします。ゴオウのあの身のこなしならすぐ追いつけると思って付き合いましたがそろそろ時間です。消えなさい」
妖精眼を使わず魔力だけ解放して上級火属性魔法を全力で放つ。範囲を執務室に限定したとはいえその威力は当たれば跡形もなくなるほどだ。
これを耐えるのは難しいだろうなと思っていたが驚いたことにヘレナはボロボロながらも耐えていた。だが立っているのもやっとという状態でかなりの魔力を使ったようだ。
「素晴らしい…… これほどの魔力、長く生きていますがそうそう見たことがないですよ?」
「そうですか。それで? まだやりますか?」
「いえ、この身体は限界のようですし諦めて退くことにします。ではまた会えるのを楽しみにしていますよ」
ヘレナの身体が崩れ落ちたかと思うとその身体が人形に変わっていく。どうやらヘレナは憑依術を使って人形を遠隔操作していたようだ。
「さて、追いかける前に軽く指示を出しておきましょう」
一階に降りてみるとみんなが一か所に集まっていたので駆け寄って現状の説明をした。
「ファミリア……ですか? そんな組織聞いたことがありませんね……」
「そんなことよりレクス様とマニラ様が!? どうしましょう!?」
「落ち着いてください。お父さまとお母さまの代わりに私が指示を出します。みなさんは屋敷の修繕と本家への連絡、それと簡単な執務を行っておいてください。できれば本家の方を一人ここに残して重要な案件をお願いしたいのですが……それはできたらでかまいません」
「お嬢様、それではレクス様とマニラ様を捜索することが出来ません!」
「そちらは私が行います。先程賊と対峙してわかりましたが賊はかなりの実力を持っているようです。みなさんでは被害を増やすだけになりそうです」
「でも私たちもじっとしていられません!!」
「……わかりました。けれど危険なことをするのは厳禁です。みなさんには情報収集をお願いします。私の名前を使ってもかまいません、というより貴族が誘拐された時点でどこの領も表面上は協力せざるを得ないでしょう」
「情報収集、ですか?」
「はい。まずはみなさんに三班に分かれていただいて一つの班は屋敷の修繕及び管理、もう一班は各領に潜んで情報収集を、最後の班は情報の伝達と整頓をお願いします」
「なるほど、それぞれの役割を分けることでもしばれても速やかにその情報がお嬢様に向かうということですね?」
「そういうこと。じゃあよろしくお願いします。私は奴らを追いますので」
『はい! 行ってらっしゃいませ、お嬢様!!』
―――――――待っていてくださいね、お父さま、お母さま。
自分で見直していて設定が急に生えてきたりキャラの個性がなかったりと直したいところが多かったので設定から作り直しました。
「魔導書に一目惚れして自分で作りたくなっちゃいました」です。
設定を練り直した結果最早別物だと思うかもしれませんが……




