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最悪の事態

「エルちゃん!? あなた何をしたんですか!?」


 私の目には魔法陣の中で倒れて起き上がる気配のないエルちゃんと、楽しそうに笑うオリゲナと呼ばれていた男。


 その男はエルちゃんを抱えると何人も暴徒化した生徒を転移させながら口を開いた。


「眠ってもらっただけさ、()()ね。こいつの身体は歌を籠めた人形なんだろう? だからこれからエルミリー・コレットの魂を抜いて私の魂を入れるというわけさ」


「そんなことをしたらエルちゃんは!」


「死ぬだろうね。確実に」


「ッ! エルちゃん!」


 私は手加減するのを止め、全力でオリゲナを追ったが暴徒化した生徒の数が多く、その相手をしているうちに悠々とオリゲナは転移していった。


 その後全員を鎮圧したがそれが最後だったようで戦闘の音が消え、残ったのは静寂と半壊した校舎だった。


「何も言わずに追いかける訳にはいかないですし、一先ずみんなと合流しましょう」


 私はすぐさまオリゲナを追いかけたいという思いを抑えて先生と合流するために校門へ走った。


 校門にはすでにみんな集まっていて私の姿を見ると安堵したようだが、エルちゃんが連れて行かれたことを言うと驚愕の表情を浮かべた。


「エルが連れて行かれるとはな……」


「僕たちの中で魔力も技術も一番だったエルちゃんだけど優しさも一番だからそこを利用するなんて……」


「オリゲナだったか、そいつの行方は探っておく。お前たちはその時に備えて休め。かなり魔力を使っただろう?」


 そう言われて気付いたが身体がすごく重い。これまではなったことはありませんでしたがこれが魔力が枯渇した時の倦怠感ですか。


 よく見ればレオンもまだ息が整わないようで、小さくではあるが肩が上下している。


 私は学園長にオリゲナの追跡を任せて騎士団が手配してくれた宿へと歩いて行った。魔力枯渇の疲労とエルちゃんを守れなかったという悔しさで足が石になったみたいだ。


 次の日、日の出とともに起きてしまったが宿のベッドに倒れ込んでから記憶がないので、ベッドに入ってすぐに寝てしまったようだ。


 何故だか部屋にいたいと思わなかった私は表に出たが、そこにはレオンとクロノがいた。


「おはよう。二人とも何をしているんですか?」


「何故か部屋にいたくなかったから朝日でも見ながら何ができるか考えていたんだ」


「考えることは一緒ですね。 ……地面が揺れていませんか?」


「そうだね。って、うわ!?」


 ゴゴゴゴゴ……


 私が地面の揺れに気付くと同時に揺れは大きくなり、学園のあった場所に塔が地面を割りながら地上に出てくる。


「あれはいったい……」


「場所とタイミングを考えるとオリゲナの仕業だと思うが……」


「アンリ・コレット。オリゲナの居場所はわかった。と言っても説明するまでもないだろうが」


「あの塔にいるんですよね。ならできたばかりでオリゲナの準備ができていないと思うのですぐに行きましょう」


「まぁ待て。先生方を全員起こして騎士団と協力する方が良い。騎士団もあの塔には気付いているだろうからすぐ来れるだろう」


「……わかりました。私たちは騎士団のところへ向かった後塔へ向かうので先生を起こすのはよろしくお願いします」


「焦る気持ちはわからなくないが、くれぐれも突入することのないようにな」


 学園長の言葉に返事をしながら身体強化を使って騎士団と合流するために塔へ向けて走った。騎士団はちょうど塔へ向かう途中だったようですぐに合流することが出来た。


 騎士団の人たちに事情を話し、私たちと先生方も同行することを伝えると騎士団の人たちも人手は多い方が良いと動向を許可してくれた。


 そして塔のふもとに私とレオン、クロノの三人に先生方と騎士団の人たちが加わった百人程度の人数で塔に入ることになった。



―――――――――――――


 ……ここ…は…?


 そうだ、確かオリゲナさんを助けたらそこに書かれていた魔法陣で……


 寝起きのぼんやりとした頭でここまで思い出した時、聞き覚えのある声と足音が聞こえてきた。


「起きたようですね。おはよう、エルミリー・コレットさん」


「オリゲナさん……? ここは……?」


「ここかい? ここは学園の跡地に造った塔の頂上だよ。これから君の姉を含めた学校の人や騎士団がここへやってくる。だからその前に君の器をもらうよ」


「なんで……」


「こんなことをしたのか? 簡単な話さ。魂の器として完成品である君の身体が欲しいのと君と君の姉に私怨があるからだよ」


「私怨…… まさか!?」


「気づいたかい? でももう遅いよ。さぁ、お喋りはここまで。儀式を始めよう」


 オリゲナさんが儀式の開始を宣言すると、塔の頂上いっぱいに魔法陣が描かれ始める。その魔法陣完成と同時に私の意識は再び闇に包まれた。



―――――――――――――


「光が見えるということは頂上に着いたみたい…… 待っててね、エルちゃん」


 頂上へ向かって急いでいた私たちは、魔物どころか人にも会わないので抑える必要はないと思い身体強化を使って全力で塔を登っていた。


 急ぎすぎたのか付いて来ているのは騎士団の中でも強そうな二人と学園長、レオンとクロノだけになっている。


 頂上に到達したとき魔法陣らしき光が消え、私が見たのはゆっくりと倒れていくオリゲナと眠らされているのか意識のないエルちゃんだった。


「エルちゃん!!」


 倒れているエルちゃんに駆け寄ろうとしたが、クロノに止められる。


「待て、今エルの身体に宿っているのはオリゲナの魂だ」


「正解です。なかなかの推理力と観察眼ですよ、第一王子」


 ゆっくりとエルちゃん、いやオリゲナが起き上がる。見慣れたエルちゃんの顔のはずだがその表情はエルちゃんのものではなく、それが余計に儀式の成功を私に感じさせた。


 悲しみと絶望で身体の力が抜け、私はへたり込む。



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― 新着の感想 ―
[一言] 大人たちがなんとも情けないですね。実力自体はともかく、子供達の扱いが大人らしくないというか、頼りにしまくっている感がヒシヒシと伝わってきます。 自分だったら、こんな人たちが先生だと少し嫌です…
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