魔導書実験
実験を行うのはアンリだ。レオンとクロノもかなりの確率で身体強化を成功させていたが、まだ身体強化しながら別に魔力を扱うのが困難だったので今回は諦めてもらった。
「アンリ」
「なんですか~?」
「実は……」
初めて作った魔導書の実験に流石のアンリも緊張しているようだったが、クロノに何か耳打ちされてからは緊張が抜けたので安心したが、ちらちらとこちらを見てくるので別の意味で不安になる。
「ねぇクロノ、アンリに何言ったの?」
「ん? あぁ、これが終わったらエルが一つだけ言うことを聞くって」
「うん。何かそんな気はしてたよ……」
「それよりほら、始まるぞ」
話をそらされたと思ったが実験に集中しないといけないのも事実なので釈然としないが実験に目を向けると異変に気付いた。
「ねぇ…… これまた暴走してない?」
「みたいだな……じゃない! 確か今試してるのは火の魔導書だよな!?」
「もう水の魔法は準備してるからいつでも撃てるよ」
「それはそのままで待機していよう。学園長が対処してくれるとは思うけど警戒は必要だと思う」
「あぁ……」
そう話しながらも不安を隠せない私たちをよそに実験は続く。十分後、とうとう抑えきれなくなったのか
小さな火が目に見えて大きくなったと思った瞬間アンリと学園長が火に包まれた。
明らかに身体強化では耐えられない威力だと気づき私は身体を上手く支えられずへたり込んでしまった。
「ぁ……あぁ……」
「何やってるのエルちゃん! 早く火を抑えないと!」
「二人とも落ち着け。火をよく見てみろ、何か気づかないか?」
「え……?」
そう言われてよく見てみると炎の中にたくさんの水の妖精が集まっているのが見えた。
妖精たちが二人を守っているうちに魔導書を何とかしなきゃ!
「二人とも、学園長の魔法が効いてるうちに炎を消すよ! せーの!」
『ウォーター!』
三人で作り上げた水球は火を消し魔導書をバラバラにした。
消火した後の煙の中から出てきた二人の姿を見た私はアンリに駆け寄って抱きついた。
「エルちゃんがこんなに慌てるなんて珍しいですね〜」
「だって……だって! 私の実験でアンリが死んじゃうんじゃないかって!」
「学園長やみんなが守ってくれると思ったら心配なんて消えちゃいました〜。でも〜エルちゃん成分が不足しているので〜しばらくこのままでお願いしますね〜」
「信頼してもらって嬉しいが火を消すことができずにみんなを不安にさせてしまったね。すまない」
そう言って頭を下げる学園長に私たちはブンブンと首を振った。
「いえ……アンリを助けて下さりありがとうございます」
「今回の反省は後日行おう。君たちも落ち着くために時間が必要だろう」
「大丈夫です。今やってしまいましょう。今回使った魔導書ですが、私の魔力が大きすぎて暴発したのではなく、一度に使う魔力が大きすぎて魔法陣が壊れたのではないかと思いました」
私の仮説に学園長は頷きその対策をどうするのかと聞いてきた。
「小さな魔法陣で何度も使えるように描き直そうと思います」
「それで正解だと思う。今度は魔法陣の改良から私がつくことにしよう。君たちは意外と危なっかしい。誰かが見守っていないといつか大怪我しそうだ」
「それはありがたいのですが……学園長も忙しいのでは?」
「それくらい副学長が何とかするさ。私が何でもやってしまうから暇そうにしているんだ。仕事ができれば嬉しいだろう」
こうして学園長を交えた5人で魔法陣の改良をしていたが、流石の学園長でも一筋縄ではいかず、みんなで難しい顔をしていると、差し入れを持った会長がやってきた。
ちょうど良いし息抜きをしながら会長からも意見を聞いてみようと思い話してみると、会長はなんで悩んでいるんだと言わんばかりに首を傾げながら
「妖精たちに聞いてみれば良いのではないでしょうか?」
と言い、その言葉に全員がはっとした。
妖精たちを忘れていた訳ではなかったが議論に集中するうちに妖精たちにアドバイスを貰うことを忘れていた。
早速妖精たちに話を聞くと、最初の魔法陣の初めと終わりを繋げて、それに魔力を抑える機能を加えれば一度に使う魔力の量を抑え、余分な魔力は魔導書に戻るようになるらしい。
改良した魔導書を試したが今度は暴走せず、何度も使える事がわかり、ようやく私たちの魔導書が完成した。
「おめでとう。君たちは初めから終わりまで真剣に考え、そして目標を達成した。それは素晴らしい事で、君たちだからこそ出来たことだと私は思う」
「私たちだけでは不可能でした。私たちの目標を笑い飛ばさず協力して下さった担任のユリアン先生や魔導書店のドランさん、そして学園長のお陰です」
それを聞いた学園長は笑いながら私たち大人は子供の願いをできるだけ尊重し、それを手伝うのも役目なんだよと言った。
「それでも、一言お礼は言いたいです。ありがとうございます」
「どういたしまして。さて、これからドランを訪ねるのだが一緒に来るかい?」
「はい。よろしくお願いします」
ドランさんのお店へ向かう道中、気になっていた学園長とドランさんの関係を聞いてみるとなんとびっくり、二人は学生時代同級生で今でも時々お酒を飲む間柄らしい。
四十代後半でも若々しいというか好青年な学園長と、同じ年だがおじいさんのようなドランさんが友人だとは誰も思わないだろう。
二人の意外な関係を知った私たちだった。




