夢へ向けて
「えーっと、魔法関連の本はっと」
私は図書室で本を探している。この学園の図書室にはこの国の英知が集まっていると言っていいほど大量の蔵書がある。
ほぼ毎日入り浸っているせいで司書の先生にすっかり顔を覚えられ、物語や研究レポートの感想を言い合うほど仲良くなった。
高くそびえる本棚の間を歩いているとこれはという本を見つけたが悲しいかな、まだ十歳の身体では届かない高さにありどうしようか途方に暮れていると横合いから伸びた腕が欲しかった本を取ってくれた。
「あ、ありがとうございます」
見上げると紫色の目に黒い髪に人の良さそうな笑顔を浮かべた男の子が立って居た。
「いえいえ、お役に立てて何よりです。その本を読もうとする人は珍しいのでちょっとお節介をやきました。私はオリゲナ・ルキと言います」
「お節介じゃありません、とても助かりました。ところでこの本を読むのは珍しい、ですか?いったいなぜですか?」
「この本はこの学園にしかない本なのですがこの学園の生徒は大抵魔法が使えるのでわざわざ読もうとしないんですよ」
「なるほど、教えていただきありがとうございます」
「じゃあ私はそろそろ行きますね。また会いましょう、エルミリー・コレットさん」
(あの人私の名前を知っていた?決闘を見てたのかな?う~ん……まぁいいか!それよりこの本だ!)
オリゲナさんが取ってくれた本のタイトルは「魔導書について」。
私の目標、魔導書作りに必要な情報がこの本に…!逸る気持ちを抑えながら寮に戻り読み始めた私はがっかりしてしまった。
魔導書の作り方は秘匿技術でそれを知るには書士と魔法検定二級以上の資格が必要らしい。
そして書士の資格は16歳にならないと取ることが出来ない。
「あと五年も待つの~!?待てないよそんなに!」
そうして必死に考えた私が思いついたのは自分で魔導書の作り方を探すということだった。
ないなら作る、書かれていないなら書く、そういうことだ。
「じゃあまず魔導書を買わないと。どこで売ってるかなぁ…… 今度先生に聞いてみよう」
目標が決まった私は次の日の放課後先生のところへ向かった。
「先生、今お時間よろしいでしょうか?」
「あぁ、大丈夫だ。それでなんの話だ?」
「実は、魔導書が欲しいんです。どこで売っているかご存じですか?」
「わかるが…… お前に魔導書は要らないだろ? 何に使うんだ?」
「私は将来魔導書を書きたいと思っています。なので魔導書をじっくり観察して少しでも作り方が知れたらなと思いまして。教えて頂けますか?」
「そう言うことなら構わない。この学園に続く大通りに何軒かあったはずだ。それぞれ得意な魔法が違うから比べてみると面白いと思うぞ」
「ありがとうございます! 早速行ってきます!」
この学園の周辺には多くの店が軒を連ねている。これは生徒に充実した生活を送ってほしいという学園長の想いがあるようだ。
学園長は生徒を一番に考え、学園の不備はすぐさま直させたり購買の品物を増やしたりしてくれ、生徒からも先生からも信頼されている人だ。私は学園長に感謝しながら店に向かった。が……
「これ、営業してるの……?」
魔導書を売っている店は店と店の間にポツンとあり、教えられていなければ見落としそうだった。
外観も所々剥がれていたり板と釘で補修されていたりと営業しているのか心配になったがこういうのは勢いが大事と勇気を出して入ることにした。
「こ、こんにちは~……って凄い! 魔導書がたくさん!」
中に入ると外とは比べ物にならないくらい掃除が行き届き、綺麗に整頓された本棚がズラリと並べられていた。
それらを眺めながら奥へ進んでいくとカウンターで寝ているおじいさんを発見した。
「あ、あの……」
「んあ? あぁお客さんか。珍しいな、嬢ちゃん見たいな学生がここに来るとは。で、嬢ちゃんは魔法は使えるみてぇだが何か用かい?」
「私は将来魔導書を書きたいと思っていて魔導書を見てみたいと思って来たんですが、私が魔法を使えるって何故わかったんですか?」
「簡単な話だ。うちに来る奴はだいたい魔法に自信がねぇ奴らだ。その自信の無さが顔にも現れるんだが嬢ちゃんはそうじゃねぇ。なら魔法に自信がねぇんじゃなく別の理由があるって判断しただけだ。それよりも魔導書書きになりたいだぁ? 止めとけ。それじゃあ食っていけねぇ」
「勿論別に仕事もしますよ? ただ仕事の合間などの暇なときに趣味でやるなら何も問題ないですよね?」
私の言葉に固まっていたおじいさんは大きな声で笑い出した。
「ハハハッ! こりゃおもしれぇ! 魔導書を書くのを趣味だと言うやつがいるとはな! 良いぜ、魔導書を売ってやるよ。こいつぁ将来が楽しみだ!」
おじいさんから三冊の魔導書を買い、私は学園に帰った。おじいさんは魔導書書きの知り合いが多いらしく、今度別のやつが書いた魔導書を仕入れると約束してくれたのでルンルン気分で戻った私を待っていたのはアンリたちからのお説教だった。
おじいさんと話しているうちにだいぶ時間が過ぎたようで外が暗くなっていたのだ。
心配させた罰として私はおじいさんの店をみんなに紹介する事、何か一品奢ることを約束させられた結果、おじいさんの店が私たちのたまり場になったのだった。




